VOL.9 OMO by 星野リゾート 京都3施設総支配人 唐澤武彦さん

3施設一丸で、京都の新たな魅力をお届け!

Vol.9 唐澤武彦さん 1975年生まれ、46歳(OMO by 星野リゾート 京都3施設総支配人)

寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテルブランド「OMO(おも)」。2021年、京都に3施設がオープンしました。「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」「OMO5京都祇園」の3施設を束ねるのが総支配人の唐澤武彦さん。京都という厄介な街で奮闘しています。

―――入社21年目と伺いました。

軽井沢のハルニレテラス(星野エリア)の立ち上げや、「界 熱海」「ロテルド比叡」の総支配人などを経験しました。入社時は軽井沢しかなかった時代ですから、社内でも古参になってしまいました(笑)。星野リゾートの変遷を体感してきましたね。そして京都3施設の総支配人に。会社としても3施設合同の総支配人というのは初めてです。

ひとつの施設であれば、現場に入って様子を見て判断するということができますが、そうもいきません。これまでとは異なる総合的な見地に立つスタイルで、「戦略」を意識するマネジメントを考えています。もちろん、それぞれの施設の違いがありますが、3施設・約300室という強みもあると思っています。スタッフも連携するジョブローテーションも考えています。

―――具体的に3施設での取り組みを教えてください。

ご体験いただいた東寺での「京都やくよけOMO散歩」です。3施設のどこに泊まられても体験していただくことができます。OMO3京都東寺のOMOレンジャーが東寺の魅力をお伝えし、国宝のお堂で厄除け祈願、ご近所での抹茶体験も。東寺を知りたいけれど宿泊は祇園がいいという方もいらっしゃいますよね。

OMOの卒たび~京都べっぴん旅~」も3施設でのプランです。老舗ブランド「よーじや」との共同企画で、6月末までの期間で卒業旅行プランを組みました。昨年叶わなかった方に、ぜひ今年は卒業旅行をリベンジしていただきたいと思っています。メイクアップ体験や美の神社へのお詣りなど、卒たびを演出します。また、それぞれの施設の既存のアクティビティに参加したいというお声もいただくので、さらに展開していきたいと思っています。

―――京都という伝統ある街ならではのご苦労はありますか。

 京都では寺社が欠かせない存在ですので、信頼関係を築くことが大切だと思っています。例えば地方の場合、お互いにウインウインになる企画が作りやすいのですが、京都はそもそも観光客の方が多く、弊社のオリジナリティを発揮する、特別感のある企画をつくるのが難しい場所です。

なかでも祇園は、おもてなしを重視するために、一言さんお断りという風潮が今でも残り、紹介者がないと受け入れていただけないことから、アクティビティづくりも慎重に行いました。祇園祭に深く関わる氏子組織の宮本組、その組頭である、黒七味で有名な「原了郭」の原代表取締役はじめ、ご縁をいただき、皆さまを通していろいろとご紹介いただきました。それでめどが立ちましたね。まさに京都の中の京都を痛感しました。

―――同じ京都に3施設ですと、競合することはありませんか。

お部屋のタイプを分けることで、お客様のすみ分けをしています。OMO3京都東寺はシングルから2名のお客様が中心で、歴史好きなひとり旅の方や、東山界隈ではないマニアックな京都にふれたい、また近鉄東寺駅の近くですから奈良へ足を延ばされる方も多いですね。

OMO5京都三条はツインから4名までのお部屋が多く、バスの発着もよく場所柄使い勝手がいいことから、散策の拠点に便利で、リピートされる方がとても多いです。毎月のように京都にいらっしゃるという方が定宿にしてくださいます。

OMO5京都祇園は、4名から6名の客室が中心なので、グループ、家族の方が中心です。なかなか京都で6名が泊まることができるホテルというのも少ないですから、重宝されていると思います。三条と祇園は近いので、1泊目は祇園、2泊目は三条という方が増えています。

唐澤さんのお札

―――これからの夢はありますか。

そうですね、旧奈良監獄内のホテルのような今までにない施設の運営に携わってみたいとも思いますね。「界 長門」のような、行政機関が関わるものも興味があります。じつは私は、お祓いをしてもらうのが好きで(笑)。仕事柄、大きな変革やエネルギーが必要な事例に携わっていてストレスが溜まることがあり、お祓いをしていただくと、すっきり晴れやかな気持ちになります。それが癖になって寺社巡りをしています。

寺社が多い京都ですから、これからますます増えそうです。趣味と実益を兼ねてというか、公私の線引きがなく、生活の楽しさが仕事の充実につながると思うので、京都という場所は嬉しいですね。京都は奥が深い街なので、私が体験したことを仕事に生かして、お客様にお伝えできればと思っています。

 

関屋メモ

2児のお父さん。史学を勉強し、博物館の学芸員資格ももつということで、知識を披露しながら、ご家族と一緒に寺社巡りをしているのでしょうか。穏やかな語り口で、周りを説得するタイプのように感じました。様々な施設の開業に携わってきた唐澤さん、“開業の鬼”として、折れない心、気にしない心が大切と話します。開業=成功ということでプレッシャーも多く、翌日にひきずらないことを心掛けたと言います。チームワークを高めるための、その時々の心情を写したTシャツが唐澤さんの歴史を物語っています。でも”開業の鬼“が神頼みって、いいですよね。

入社時(第7期)は星野代表が会社説明会で直にプレゼンをされたとのこと、ほだされて入社しちゃったのね。人流の多い観光・旅館業界でひとつのところに長く居るということは、それだけ会社にとっても重要な人材。昔々の会社の黎明期のエピソードをほじくり出したくなりました。

開業の鬼の記念すべきTシャツの数々

 

取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)

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