マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第3回 バルセロナのシンボル、サグラダ・ファミリアは全部が世界遺産じゃないってホント?(スペイン)

スペイン・バルセロナの世界遺産といえば、多くの方が「サグラダ・ファミリア」を思い浮かべるのではないでしょうか。カタルーニャが生んだ天才建築家アントニ・ガウディが手掛けた大聖堂は、グエル公園やカサミラなどとともに「アントニ・ガウディの作品群」として文化遺産として登録されています。今となっては、サグラダ・ファミリアのないバルセロナの街を想像することさえ難しい気がします。

しかしながら、建築途中の建物が世界遺産に登録されているというのは極めて異例です。実は大聖堂全体が世界遺産というわけではありません。ガウディが手掛けた「生誕のファサード」と「地下礼拝堂」の2ヶ所のみが登録されているのです。

 東側にあり、1930年に完成した「生誕のファサード」。
2005年に世界遺産に追加登録されました

 


こちらは世界遺産ではない「受難のファサード」。
イエス・キリストの死をテーマに、ガウディ没後、
彫刻家ジョセップ・マリア・スビラックスが制作しました

サグラダ・ファミリアは、私たちが知っている教会とはかなり異なる印象を与えますが、これは19世紀末から20世紀初頭にかけてバルセロナを中心に開花したモデルニスモと呼ばれる建築様式です。当時ヨーロッパで広まっていたアール・ヌーヴォー(フランス語で「新しい芸術」の意味)に影響を受けました。花や植物などの有機的なモチーフを取り入れ、また曲線を組み合わせて装飾性を高めているのが特徴です。

 

ガウディが森をイメージしたという聖堂内部。
枝分かれした樹木が伸びるように建物を支えています

 

天井には殉教者のシンボルであるシュロの葉がモチーフとして使われています

 

エレベーターで塔に上ったら、下りは螺旋階段を利用します。
アンモナイトをモチーフにしたといわれる美しい造り

サグラダ・ファミリアは、当初完成までに300年以上かかるなんて言われてきました。しかしIT技術の発達で、工期が大幅に短縮。ガウディ没後100年になる2026年に完成予定と発表されていました。


地下にある工房には3Dプリンターが設置され、設計のための模型が造られています

ところが、今回の新型コロナウイルス感染症によって2026年の完成が難しくなってしまったようです。理由のひとつは、バルセロナのロックダウン(都市封鎖)によって工事が中断。そして、もうひとつは資金不足です。キリスト教徒からの献金や観光客の入場料の収益で建築資金が賄われていたものの、現在はどちらも減少しています。こんなところにもコロナの影響があったのです。

コロナ収束の暁には、サグラダ・ファミリア観光にも出かけたいものです。私たちが支払う入場料が、サグラダ・ファミリア完成のわずかながらも一助になるというのは、ロマンが感じられるではありませんか。現時点でいつ頃完成するのは定かではありませんが、早くクレーンのそびえていない、完成した姿の大聖堂に出合いたいものですね。

 

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