「やさしい温泉」人、動物、地球にも! by 西村理恵

第4回 40年後の温泉を守るために、今できることを実行する。高峰温泉(長野県小諸市)

標高2000メートルにある雲上の野天風呂。大パノラマを楽しめる絶景のお風呂です

雨が降って大地にしみ込み、地球の熱であたためられて再び地上に湧き出してくる温泉水。どのぐらいのサイクルで湧き出してくるのかは、場所によって異なります。20年ほど前、専門的な調査を行ったところ、高峰の温泉水は40年前の雨水が湧き出していると判明しました。高峰温泉四代目の後藤英男さんは、「今の環境が40年後の温泉水に影響を与える」ということに責任を感じるようになります。

 お話をうかがった後藤さんは知的な山男

「温泉宿を営んでいると、洗剤を使ったり消毒をしたりと、環境へ多くの負荷をかけてしまいます。それを少しでも減らしたい」と考えていた折、かかりつけの獣医さんが取り入れている「創生水」を知ります。匂いに敏感な動物たちが、この水ならば嫌がらず体を洗わせてくれ、毛並もキレイになる、と話を聞き、まずは幼かった自分の子どもたちで試してみることにしました。

創生水は平たく言うと、水の粒子を限りなく小さくすることで汚れを落とすというやり方。自分や子どもたちで何度か試してみて、「これならば大丈夫」と本格導入を決めます。現在、高峰温泉では洗剤や石鹸、シャンプーなどは一切、置いていません。体も髪の毛も食器もお風呂もすべて水だけで洗うのです。実際に体験するまでは本当に汚れが落ちるのか疑心暗鬼でした。ですがシャワーから出てくるしゅわっとした温水で髪の毛を流していると、毛穴に水が染みこみ、すっきりと汚れが落ちていくような感覚がありました。何より、ずっと温水洗いだけを続けている後藤さんの肌つやの良さが、効果のほどをあらわしているように思います。「5年ほど経ったころでしょうか、高峰の下流にある田んぼに、ドジョウが再び現れるようになりました。これも洗剤などを使わなくなったからかもしれません」。

こうした話を書くと、「胡散くさいな」と思う人もいるかもしれません。けれども自然のバランスが崩れかけているのではないかと、薄々感じている人も多いのではないでしょうか。上信越国立公園の中で暮らす後藤さんは、湯を守り自然と共に生きる中で、敏感に、愛情深く、自然と向き合っているのだろうと思われます。

 内風呂は男女それぞれ二ヵ所ずつ。こちらは「ランプの湯」。
源泉のままのぬるいお湯と加温湯の2浴槽があり交互に入るのがおすすめです

さらに温泉好きにとって嬉しいのは、シャンプーや石鹸の匂いが浴室にこもらないこと。硫黄の香る高峰の名湯を心ゆくまで楽しめます。

  星空観察会や自然散策など、ほぼ無料で様々な自然体験を行っています

高峰温泉 TEL:0267-25-2000 住所:長野県小諸市高峰高原 https://www.takamine.co.jp

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