マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第12回 一度見たら忘れられない造形美! キリスト教への篤い信仰を表現した「ラリベラの岩窟教会群」(エチオピア)

今月は私がいつか行ってみたい世界遺産のひとつ、エチオピアにある「ラリベラの岩窟教会群」をご紹介したいと思います。この文化遺産は、1978年、エクアドルのガラパゴス諸島や、アメリカのイエローストーンなどと共に誕生した初めての世界遺産のひとつとしても知られています。

十字型の外観が特徴の聖ギョルギス教会(Photo by Pixabay)

エチオピア北部、標高約2,500mの山岳地帯に位置するラリベラ。この地にある11の教会が世界遺産として登録されています。岩窟という名称の通り、岩を削って造られたものですが、巨大な一枚岩を地表から掘り下げて建造しているのが大きな特徴となっています。つまり地表が建物の屋根に当たります。なかでも最大の見どころが、独創的な造形をした聖ギョルギス教会。上から見ると大きな十字架の箱のような姿をしています。写真で見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人で、ぜひいつか実物をこの目で見てみたいと思っています。

教会群は12~13世紀、ザグウェ朝の第7代国王ラリベラの命により建てられたそうです。当時、聖地エルサレムはイスラム教徒の支配下にあり、巡礼に行くことができなくなっていました。そこで、王はこの地を「第二のエルサレム」にしようと考えました。キリストが生まれたベツレヘムなど町には聖書にある地名を付け、町を流れる川もエルサレムのヨルダン川に倣って改名。そしてわずか20数年の間に11の教会を造営しました。ヨルダン川を挟んで南北に5つずつ、最後に少し離れた場所に聖ギョルギス教会を完成させました。今も聖地として多くの巡礼者が訪れています。

高さ約12mもある聖ギョルギス教会(Photo by Photo by mulugeta wolde on Unsplash

エチオピアにおけるキリスト教は、エチオピア正教会です。333年頃、エチオピア北部で繁栄したアクスム王国の時代にキリスト教が公認されました。ローマ帝国のコンスタンティヌス帝がミラノ勅令を出してキリスト教を公認した313年の少し後。かなり早い時期だと思われます。エチオピア正教会は、コプト教(エジプトのキリスト教)やユダヤ教などの影響を強く受けて独自に発展しました。断食が義務付けられていたり、豚肉を食べなかったりと今も原始キリスト教の文化を色濃く残しています。欧米などで普段触れるカトリックやプロテスタントと異なるキリスト教の姿も興味深く、ぜひエチオピアで体験してみたいものです。

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