薪が積み上げられた元湯の玄関。カフェも温泉も遅めの午後から営業。
午前中はまったりとした時間が流れていてお寝坊さんにもオススメ
岡山県最北東に位置する西粟倉村は、面積の95%が森林。昔から檜や杉を生産する村でした。この地元資源を活かして村独自のエネルギー政策を進めています。「あわくら温泉元湯」(以下、元湯)でも、14度の温泉を地元材の薪を使って加温しています。
のどかな農村風景の中に立つ元湯の建物は、50年ほど前、老人施設「元湯いこいの家」として開業しました。5年間の休業後、2015年、温泉ゲストハウスとしてリニューアルオープン。昭和の匂いのする建物に、移住組の都会的なセンスが加わって、ほどよくオシャレな居心地の良さを醸し出しています。
まず目に付くのは玄関前に積まれた薪とほのかに漂う木の香り。中に入ると、木目を活かしたカフェになっていて、お米を炊く甘い香りが鼻をくすぐります。「地元のお米を薪で炊いているんですよ」と元湯代表の半田さんが教えてくれました。
誰でも利用できる元湯カフェ。宿泊者も地元の人と一緒にここで夕食をいただきます
半田さんは京都のご出身。3年半前に西粟倉村へ移住し、自然エネルギー事業にかかわった後、今春より元湯の運営を受け継ぎました。1日5回、ボイラーに薪を入れるのは半田さんの仕事。何気なくほうりこんでいるようですが、「煙の色や出具合を見ながらこれぐらいで大丈夫」と加減をはかっているのだそうです。
元湯代表の半田さん。1日5回、国産ボイラーに薪を入れて温泉を沸かしています
半田さんが沸かしてくれるラジウム泉は、ほんわりとした柔らかい肌感触。これはじんわりと熱が入る“薪の湯”ならではなのかもしれません。循環・消毒をしているので、お湯本来の持ち味が分かりにくくはありますが、弱アルカリのスベスベとした感覚は楽しめます。
客室は畳の個室とカーテン仕切りになったドミトリーの2タイプ。夕食は気まぐれピザやカレーなどのほか、地元鹿肉を使ったジビエ料理も提供しています。増えすぎてしまった鹿を、駆除するだけでなく、ありがたくいただくことで、山の環境保全にも一役買えるのです。
低温調理した鹿肉のタリアータや、鹿のパテを加えたサラダ、
ゴハンに合う味付けのすき焼きなど全5品の鹿肉料理
中でもすき鍋ディナー(2名以上の要予約で1名3500円)は、鹿肉5品と盛りだくさん。脂身が少なく鉄分とタンパク質の多い鹿肉は、女性にはピッタリの食材です。味付けや調理にも工夫があり、食後は体に活力が戻ってくるよう。おいしい山の恵みに感謝です。
ヒノキ酵母を使ったオリジナルビールやヒノキパンもぜひ。地元の自然資源の活用、すすんでいます
元湯は集落の共同湯的な温泉でもあります。こうした施設はどこも中高年の利用が多いのですが、こちらは小さな子どもやクリエーター的な人の姿も多く、明るいムード。老若男女が元湯で出会い、アイデアを出し合って、新しい何かが生まれていきそうな活気があります。その土地の自然エネルギーを通して「地元が元気になる温泉」、大久保さんが話していた「地エネの湯」は、こういう温泉だったんだなぁと実感! 温泉のある村の暮らし、何だか幸せそうです。
塩谷川に面している元湯。元湯のロゴは地元デザイナーさんが
入浴1年分無料のかわりに作ってくれたのだそうです
地エネの湯 https://local-energy.sakura.ne.jp
あわくら温泉元湯 電話:0868-79-2129 住所:岡山県英田郡西粟倉村影石2050
「あわくら温泉元湯」前編はこちら