2024年3月16日、ついに北陸新幹線が金沢を越えて、加賀温泉、芦原温泉などの新しい駅を通過して、福井から更に嶺南の入口である敦賀まで延伸しました。
これまで関東近県からのアクセスが困難だった福井県嶺南地域。今回は嶺南の中でも西に位置する若狭エリアの知られざる魅力をご紹介します。
前編では、若狭エリアの最西の高浜町についてご紹介しました。後編では少し東に移動しておおい町、そして小浜市のスポットをご紹介します。
陰陽道のふるさと「暦会館」
訪れた際には思いがけず雪景色
高浜町の東の隣町、福井県大飯郡おおい町。京都と小浜を結ぶ鯖街道の中間にあたるこの町の山間部に、かつては名田庄(なたしょう)という村がありました。
この土地に室町時代の応仁の乱の戦火を逃れた天文暦学の祖、安倍晴明の子孫にあたる土御門家が移り住み、天文暦学の道場を開いたことをきっかけに、名田庄村は暦道・天文道・陰陽道と深いかかわりを持つようになりました。
現在は近隣の村と合併されたおおい町の「暦会館」は、1992年に建てられた校倉作りの美しい木造建築で、暦と占いの密接な関係や安倍家の歴史などについて知ることができる町営の資料館です。館内には昔の天文器具や古い暦など興味深い展示物が1000点も並び、見ごたえたっぷり。つい時間を忘れてしまいそうです。
古い天文器具やかつての暦が並ぶ館内
入口には五芒星の照明が立つ
〒917-0375 福井県大飯郡おおい町名田庄納田終111-7
おおい町の新しいコミュニティスペース「SEE SEA PARK」
おおい町の海側エリアに2022年7月にオープンしたばかりの商業施設「SEE SEA PARK」。
このエリアは広大な敷地を持ち、観光船のターミナルやヨットが停泊するマリーナ、公園に、ホテルやレストランが既存し、「うみんぴあ」と呼ばれています。
環境共生型の施設として建てられた「SEE SEA PARK」は地熱や自然風を利用して、夏はひんやりと、冬は温かみが感じられる古き日本家屋のような内部空間。2棟の建物はEASTとWESTに分かれており、一方はおおい町の観光協会や商工会のオフィスエリア、もう一方は町で新しくお店をオープンしたい人を応援するチャレンジエリアとシェアオフィスエリア。
光が燦々と降り注ぐ館内の中央部にはイベントスペースが広がり、その周りにカフェやショップが並んでいて、町の人が集まり、観光客が立ち寄る新しいコミュニケーションの場として日々賑わっています。
町の人がいつでも訪れてくつろげる空間
〒919-2107 福井県大飯郡おおい町成海1-8-5
若狭ふぐにブランド魚マハタをたっぷり堪能できる漁師宿「下亟」
おおい町から海沿いを更に東、オバマ氏がアメリカ大統領に就任した際に脚光を浴びた小浜市に場所を移しましょう。この町は京都と若狭を結ぶ「鯖街道」の起点。若狭の塩や豊富な海産物を京都に運ぶ流通の路は鯖街道と呼ばれ、若狭は長年に渡って京都の食文化を支えてきました。
「鯖街道」という通称は、「市場仲買文書」という記録に残っている「生鯖塩して担い京に行き仕る」という一文に由来するといわれていて、「一塩」された若狭の海産物は、京都に運ばれ「若狭もの」「若狭一汐」として現在も大切にされています。
若狭では鯖はもちろんのことですが、若狭ふぐや、最近ではブランド化されているマハタも有名。ということで、舌鼓を打った漁師が営む民宿「下亟(しもじょう)」でのお料理をご紹介しましょう。
若狭ふぐと若狭マハタ料理(2名分)
マハタは豪華な舟盛りにまるまる1匹の煮付けで、二晩寝かせたふぐのテッサはねっとりと甘味も強く、一番人気の炭火焼きは肉厚な身を新鮮なまま、その場で七輪で焼き上げていただきます。唐揚げに湯引きに〆は雑炊....テーブルいっぱいに並ぶ料理の数々....飲み口の良い若狭の地酒とよく合うので、ついついお酒も進んでしまいます。
若狭の地酒と焼きふぐ
〒917-0105 福井県小浜市阿納10-15
0770-54-3313
古民家再生で町の社交場に「護松園」
小浜市の下竹原というエリアは細い路地が走り、古い街並みが印象的です。その一角に一際立派な松がそびえる木造の建物。門を潜れば、暖簾がかかった立派な玄関口。
護松園は、江戸時代に現在の福井県小浜市を拠点に活躍した北前船の商人「古河屋」の五代目 古河屋嘉太夫が、小浜藩のお殿様など賓客をもてなすために文化12年(1815年)に建てた福井県の有形文化財に指定されている建物。
実はこの場所、県の有形文化財にもかかわらず、長い間地元の人さえも入ることができなかったそうです。ところが2022年、地元の産業として有名な若狭塗りの箸を扱う老舗企業がこの建物を譲り受けてリノベーションし、創業100周年を機に『GOSHOEN』としてスタート、地元への恩返しとして小浜市の100年先を見通して、さまざまな活動を始めました。
広い和室から中庭を眺めて一服
古い木造建築の柔らかく優しい床の触感を足裏に感じながら、館内を歩けば、二階も合わせるとなかなかの広さ。中庭を眺める和室にはくつろげる椅子が並び、それぞれ思い思いの時間が過ごせそう。
渡り廊下で繋がった蔵をリノベーションした部屋は、古河屋や若狭塗りの歴史資料室となっていて、若狭塗りを扱うショップやコーヒースタンドが併設、館内はコーヒーを飲みながらの見学もできます。
誰でも入ることができるオープンな空間にしたことで、地元の子供たちが学校帰りに立ち寄ったり、庭を眺めたりコーヒーを飲みに来る人々が訪れるように。地場産業にも触れることができて、住民や観光客の垣根を超えたサスティナブルな場所として注目が集まっています。
若狭塗の箸もずらりと並ぶ。奥にはカフェも
〒917-0002 福井県小浜市北塩屋17-4-1
0770-64-5403
そして最後にご紹介するのは私の若狭のおすすめお土産2品。いずれもリニューアルオープンしたばかりの「若狭おばま道の駅」で手に入れることができます。
若狭おばま道の駅。館内にはさまざまな仕掛けも
まずご紹介するのは「サバネーズ」。
名物焼き鯖とマヨネーズを和えた新感覚のマヨネーズはポテトフライや野菜スティックに付けたりする他、おにぎりの具材にも。ちなみに私は食パンにサバネーズを塗って上からとろけるチーズと黒胡椒をたっぷりかけてトーストするのがおすすめ。食べ応え抜群です。
オリジナル、バジル、明太子の3種類の味が楽しめますよ。
「サバネーズ」明太子味(810円)
続いてはボトルのでっち羊かん。
関西では冬に板状の水羊羹を食べる習慣があるのですが、これを「でっちようかん」と読んでいます。このおひとり様食べきりサイズが人気のお土産品。
寒天を使った水羊羹は、優しい甘さの喉ごしのいいデザートです。
ボトルでっち羊かん(450円)
いかがでしたか?
まだまだ魅力は語り尽くせぬほどの若狭路。
東京駅から敦賀駅まで、北陸新幹線で3時間。乗り換えもなくアクセスもしやすくなりました。知られざる福井嶺南の魅力を是非味わってみてくださいね。
写真・文/yOU(河崎夕子)