エシカルトラベルオキナワ~地域とすごす旅~ No.3

「エシカルトラベルオキナワ」をご紹介する第3回は、紅型・星空・コーヒー・アクセサリー作りをご紹介します。

 1回はこちら 第2回はこちら 

「エシカルトラベル」とは?

マリンブルーの海に白砂のビーチ、紅型(びんがた)をはじめとした伝統工芸、琉球グルメほか、沖縄の魅力は尽きませんよね。「エシカルトラベルオキナワ」は、この沖縄の自然、伝統、産業を守り、未来につなげていこうとする取り組み。旅行者に沖縄を身近に感じてほしいと、ネイチャーツアーや郷土料理教室、エコ活動など地域の営みや思いを肌で感じられる様々な情報を発信しています。

琉球びんがた染めのトートバッグづくり

紅型(びんがた)をご存じでしょうか? 独特の美しさや華やかさがある沖縄の染物の総称で、正式には琉球びんがたといいます。琉球王朝の1415世紀頃に東南アジアなどの諸外国との交易でもたらされた染色技術が取り入れられ、王族の日常着、礼服、舞台衣装などとして発展しました。モチーフは動植物、風景、鶴や亀などの吉祥文も用いられます。

首里織の工房と様々な文様

この伝統ある工芸品を体験できるのが、首里にある「首里染織館suikara」です。伝統産業を学び、つなぐ場として20224月にオープン。首里織と呼ばれる琉球文化から生まれた織物と、琉球びんがたのショップ、工房を備えています。

体験はトートバッグづくり。琉球びんがたの工程は、18を超えるのですが、色差しと隈取りの工程を体験します。図柄を選び、防染糊が施された布面に、見本を見ながら色を差していきます。刷り込むように色を差し、塗った後はこまめにドライヤーで乾かし、さらに2度塗りします。

図柄を選び、布面にしっかり色を塗る(青い部分は糊)

次に隈取りです。文様の部分にぼかし染めをすることで、これが琉球びんがたの特徴。色差しの色によって隈取りの色にも決まりがあり、色差し筆と隈取り筆の2本を使い、文様に立体感や遠近感を出していきます。体験はここまでで、帰宅後に糊をぬるま湯で落とし、日陰干しをして完成となります。

完成品!

どんな産業も需要と供給で成り立ちます。使い手がいなければ、伝統工芸も成り立ちません。体験することでより身近になる地域の伝統工芸、私たちはもっと知って、目を向けていくことが必要なのではと思いました。

世界遺産の入り口!漆黒の森で星空ツアー

本島北部に位置する国頭村(くにがみそん)は、村の84%が森林で世界自然遺産「やんばるの森」の入り口にあたります。「国頭村森林公園」の森の中には多種多様な生き物が生息し、ヤンバルクイナに出会えたらラッキー!な森林公園ツアーなどを行っています。今回は星空ナビゲーターとともに楽しむ星空観察ツアーを体験します。

 あたりは漆黒の世界、足元を灯りで照らし展望台へ。リクライニングシートに寝そべりながら空を見上げます。見渡す限り満天の星・星・星! 肉眼で確認できる限界である6等星まで観測できるのです。星空ナビゲーターが次々と星の名前を教えてくれます。その合間には流れ星が! さらに耳を澄ますと、生き物たちの声も聞こえます。明るさに慣れた私たちにとって、夜の闇は怖いもの、でもそれが本来の自然の姿なのだとあらためて気づかせてくれます。

次に天文台へ移動し、星の姿を確認します。コンピューターで制御された本格的な天体望遠鏡を覗き、あの、子どもの頃に味わったわくわく感も体験!

 

国頭村は2024年度上半期にも「ダークスカイ・インターナショナル」(本部・米国アリゾナ州)が認定する「星空保護区」の申請を目指しています。いつまでも星空が見られる環境を守る取り組みが進められています。

コーヒー一杯が生まれる背景を知る

普段何気なく飲んでいるコーヒーが一杯2000円と言われたら、あなたはどうしますか? その理由を教えてくれるのが、希少な国産コーヒーの生産をしている「又吉コーヒー園」。12000円のコーヒーを提供しています。

もともとバラ園だった農園を整地し、2016年からコーヒー園に。生産のきっかけは農薬を使わない作物をつくりたかったから。2017年からコーヒー豆の収穫体験を行なっています。

オーナーの又吉さん。沖縄からエシカルなコーヒーを

沖縄はコーヒー生産に適したエリアであるコーヒーベルト(赤道付近の熱帯地帯)の北限に位置、今は70ほどの農家があるそうですがまだまだ発展途中。収穫は11月~4月、雨の翌日の収穫と、晴天続きの後の収穫では豆の質が異なるといいます。

収穫体験ではコーヒー園のコーヒーノキから熟した果実をひとつひとつ選別し収穫します。赤い実はレッドブルボン、黄色い実はイエローブルボン。口に含むと果皮は甘くフルーティです。

カップ一杯の果実を収穫

収穫後、果実から種を取り出します。これも手作業です。取り出した種を洗い、乾燥させて殻を飛ばし、生豆にします。

果実から種を取り出す

洗った種を火力で乾燥、扇風機で殻を飛ばす

そしてやっと生豆を焙煎します。中火で1520分、焼きムラを防ぐためにしっかり振っていくと、あのコーヒーの香りが立ち上ります。この焙煎加減で、深煎り、浅煎りが決まります。なんとか26gのコーヒー豆が完成。ゆっくりコーヒーを淹れて味わいます。うーん、格別な味です。

一杯のコーヒーが出来上がるまで約2時間30分。コーヒーは豆が輸出入の対象なので、世界中の産地で、同様の作業がされています。山深い地では機械化できませんから収穫は手作業、そして欠点豆を取り除く選別も手作業です。時間と労力をかけて美味しいコーヒーが出来上がるのです。これがコーヒー一杯2000円の理由です。

原材料の生産から流通・販売までのすべてのルートが追跡可能な、トレーサビリティを考えるきっかけも与えてくれた体験でした。

海のゴミが美しい宝物に

絶景ドライブポイントとして知られる古宇利(こうり)大橋。橋で結ばれた先にある古宇利島の海岸沿いに立つのが、海洋プラスチックで作るアート工房の「TRUE BLUE OKINAWA」です。遠浅の海は透き通るような青さで、沖縄のビーチに来た!と感慨深くなりますが、じつは沖縄は日本で常に上位にくるほど海のゴミが多い地域。なかでも海洋プラスチックが多いのです。観光的に有名なビーチは綺麗に整備されますが、名もない小さなビーチは、冬はペットボトルなどのゴミだらけとか。

左:粉砕した海洋プラスチック 右:店内の素敵なシャンデリアもプラゴミでできている

ワークショップの前に、沖縄の海の実情を学びます。海のゴミは、街中に落ちていたものが川を伝い、流れ着いたものがあること、ゴミは漁具や網なども多く、海亀が絡まってしまったり、鯨などがプラスチックゴミをお腹にため込み、餌を取らなくなりそのまま餓死してしまったり、人間にも悪影響のあるマイクロプラスチックが珊瑚の死滅の一因にもなっていること……。すべての悪循環は私たちの生活に密接しているのです。

TRUE BLUE OKINAWA」では、地球にいいことを、楽しみながら取り組む体験として海洋プラスチックからアクセサリーをアップサイクルします。

共同代表の玉村さん。ピースボートとのコラボで世界中のビーチクリーンも行なう

集められたゴミは色別に分けて粉砕します。これがアクセサリーの材料になります。次に水に入れる作業(比重分離)です。浮いたプラスチックは熱を加えても、220℃以下であれば有害物質を発生しないので、熱を加えて作るワークショップで使用できますが、沈んだプラスチックは220℃以下であっても有害物質を発生するので、熱を加えて作るワークショップでは使用しません。

左:ゴミを色分け 右:粉砕したプラスチックごみ

今回はリングを作ります。リングの型を決め、1層目に好みの粉砕ゴミを入れていきます。きれいに色分けされた破片は、とてもゴミとは思えぬ美しさ! レジン液を入れ、UVライトで固めます。2層目は琉球ガラスの粉砕などの細かいキラキラでデコレート。再度固めて完成です。

 集中して作業

完成品(美しい手モデルさんにご協力いただきました)

様々な警鐘が鳴らされる2050年問題。海では魚よりも海洋プラスチックが多くなるといわれています。アクセサリー作りという楽しい体験から、環境問題を自分事に感じられるようになるって、素敵ですよね。

 エシカルトラベルオキナワ、いかがでしたでしょうか。沖縄の観光客は9割以上がリピーター。また行きたいと思える観光地を支えるのは訪れる人と支える人。SNSにアップする写真を撮って帰るのではなく、地域の自然や伝統、産業に触れて共感することで、旅先が変わり、観光地が変わり、さらに日々の暮らしが変わります。ほら、今日はペットボトル買わないでおこうかな、って思えたら楽しくなりませんか?

 

ソラシドエアによるエシカルトラベル記事もチェックしてみてくださいね。

 

取材協力:沖縄県/(一財)沖縄観光コンベンションビューロー、ソラシドエア

 

 取材・文:関屋淳子

 

 

 

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ