ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第12回 日本で唯一収蔵される炎の画家ゴッホの《ひまわり》!リニューアルオープンしたSOMPO美術館で鑑賞(東京都・西新宿)

ゴッホが描いた《ひまわり》を知らない方はいらっしゃらないと思います。でも、ゴッホが、生涯の中で7点も花瓶に入れた《ひまわり》を描いたことを知っている方は多くないかもしれません。

 フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》1889 オランダ ゴッホ美術館蔵
Sunflowers Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)January 1889

オランダ出身の画家・フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)。父親が牧師であったことから同じ道を勧められましたが、学校に馴染めずに退学。一時期画商をしていましたが、度重なる失恋が原因で仕事に身が入らず解雇。学校職員、書店員などを経て、聖職に就くための勉強をしましたが、それも挫折。いつしかゴッホに残された(と思い込んだ)道は画家だけでした。33歳でベルギーのアントワープの美術学校に入学しますが、長続きせずに落第。そして、パリで画商をしていた弟・テオのアパートに転がり込みます。

その後、アパートを出てからも、絵具やキャンバス代、絵のモデル代、家賃や生活費など、ゴッホは生涯に渡って弟から金銭的援助を受け続けます。生前、数枚しか(1枚という説も)絵が売れなかったゴッホをテオは献身的に支えました。

いつしかゴッホは、芸術家たちの生活共同アトリエを造ることを夢見て南仏アルルへ移ります。35歳の時です。多くの芸術家たちが集うことを首を長くして待っていたゴッホですが、やってきたのは画家のポール・ゴーギャン(1848~1903 ※ゴーガンとも読まれることも)だけ。でもゴーギャンを歓迎するため、ゴッホは《ひまわり》シリーズを描いたとされます。

 ポール・ゴーギャン《ひまわりを描くゴッホ》1888 オランダ ゴッホ美術館蔵
Vincent van Gogh Painting Sunflowers  Paul Gauguin 1888 
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

ゴッホが描いた7点の《ひまわり》は、本物のヒマワリを見て描いたのが4点(この内1点は、日本の実業家が手に入れましたが、空襲により神戸で焼失してしまいました)、ヒマワリの開花時期が過ぎてしまったために自分が描いた《ひまわり》を見て描いたのが3点です。現存する6点はロンドン・ナショナル・ギャラリーやオランダのゴッホ美術館など海外にありますが、1点がなんと東京・新宿のSOMPO美術館に収蔵されているのです!

SOMPO美術館前にある陶板画の《ひまわり》。本物はぜひ会場へ

ゴッホの絵は色の美しさはもちろんのこと、厚く塗り重ねられた荒々しいタッチが特徴です。まるで嵐のごとく激しいゴッホの人生そのものです。これは印刷物やネットの画像などではなかなか伝わってきません。実物にこそゴッホの激しさが込められています。現在SOMPO美術館では、「ランス美術館 風景画のはじまり コローから印象派へ」展を開催中ですが、《ひまわり》も会場で見られますので、ぜひ本物に会いに行ってください!

ところで、SOMPO美術館は、1976年に日本初の高層階美術館として損保ジャパン本社ビル42階に開館した「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」が前身です。昨年7月に同じ敷地内に地下1階、地上6階建てのSOMPO美術館として新たに開館しました。外観は、コレクションの中心となる東郷青児の作品からインスピレーションを得たというやわらかな曲線を描いています。

手前が美術館、右の高い建物が東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館があった本社ビル

2階にはミュージアムショップとカフェがあります。カフェは残念ながら当面の間休業中ですが、孤を描く窓際の席は企画展を見た後、購入した図録を眺めるのにぴったりの場所。まるみを帯びたひじ掛けのデザインが光るイスもとってもステキです。

居心地のいいスペース。いつかカフェが再開することを祈ります!

ちなみに、個性あふれるゴッホとゴーギャン2人の生活が長続きするわけもなく、精神状態が常に不安定で幻覚症状もあったゴッホは、突発的に自らの耳(耳たぶ)を切り落とし、たった2ヶ月で共同生活は終わりを遂げます。この時、鏡を見ながら《耳のない自画像(正確には包帯を巻いた自画像)を2枚描いたというのも、すさまじいエピソードです。

そして37歳でピストル自殺未遂の後、2日後に亡くなります。病床のゴッホを看取った弟テオも精神状態が同じく不安定になり、ゴッホの死後わずか半年で病死してしまいます。享年33歳でした。ただ、ゴッホとテオの死後、ゴッホの書簡集を出版したり回顧展を開くなどしてゴッホの作品を世に知らしめるきっかけになったのが、テオの奥さまだというのが強い縁を感じます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦わら帽子をかぶった自画像》1887メトロポリタン美術館蔵
MET Self-Portrait with a Straw Hat (obverse The Potato Peeler) 
Bequest of Miss Adelaide Milton de Groot (1876-1967), 1967

 

SOMPO美術館 https://www.sompo-museum.org/

ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」開催中~9月12日(日)
「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」10月2日(土)~12月26日(日)開催予定

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