あなたも「近代化遺産」萌え! by 関屋淳子

第30回 開業120年!かつては特急も停まった無人の木造駅舎・嘉例川駅 (鹿児島県・霧島市)

2022年は鉄道開業150年ということで、鉄道ファンにはたまらない年でした。汽笛一斉新橋を♪と鉄道の歴史が始まり、明治36年(1903)に開業したのが鹿児島県にあるJR肥薩線・嘉例川(かれいがわ)駅です。当時は、湯治場として栄えた妙見温泉の入り口で、湯治客やその荷物などを運んだようです。昭和40年頃までは肥料の積み下ろしの拠点として栄えましたが、昭和59年(1984)に無人化となります。

建設当時のままの姿である木造のレトロな駅舎に光が当たるようになったのは、平成15年(2003)、元駅員らによる広報活動でした。こんな山峡に築100年の駅舎が!と、無人駅にもかかわらず特急はやとの風の停車駅となり、鉄道ファン以外にも注目されるようになりました。

さらに知名度を上げたのが、このタイミングで生まれた駅弁です。地元の弁当屋、森の弁当やまだ屋による「百年の旅物語かれい川」は、JR九州駅弁ランキングで3年連続グランプリになる快挙。椎茸と筍を炊き込んだご飯の上に鹿児島の郷土料理がちりばめられています。はやとの風は残念ながら2022321日で運行を終えてしまいましたが、この駅弁は嘉例川駅で土曜・日曜・祝日に販売されています。

駅といえば、商業施設が入る近代的な建物ばかりから、高尾山口駅や日立駅など有名建築家が手掛ける個性的な駅が増えてきました。凝ったデザインの印象的でシンボリックな駅もいいですが、120年前の素朴でぬくもりのある駅舎も素敵です。待合室の木のベンチに座っていると、誰か懐かしい人に逢えるような気持ちになってきます。

ところでこの駅は無人駅ながら、駅長さんがいます。猫のさんちゃんです。初代のにゃん太郎の後を継いで、2代目嘉例川観光大使に任命。まだまだお客様をおもてなしする技は持っていないようで、現在修業中とのこと。地元のボランティアの方がお世話をしています。木造駅舎に猫、ほっと心が和みますよね。

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