あなたも「近代化遺産」萌え! by 関屋淳子

第27回 見ごたえ十分!今も存在価値を示す近代化の息吹 後編 (山形県・山形市)

文翔館

前編では山形の明治を拓いた三島通庸の功績のひとつ、旧済生館本館を紹介しました。後編ではさらに訪ねてみたい施設を紹介します。

大正ロマンの古き良き時代を思い起こさせるのが、山形県旧県庁舎及び県会議事堂です。山形大火で焼失してしまった県庁舎と県会議事堂。復興計画により大正5年(1916)に完成したのが現在の建物です。いずれも往時の姿を伝えるために復原工事が施され、旧県庁舎は山形県郷土館(愛称・文翔館)として無料公開されています。

旧県庁舎はイギリス・ルネサンス様式を基調とし、中央に時計塔があり羽を広げるように建物が広がります。煉瓦造りの3階建てで、外壁は花崗岩の石貼りで重厚なイメージ。内部は壁や天井などの漆喰装飾が煌びやかな雰囲気で、各部屋を豪華に彩ります。山形県の歴史と暮らしに関する展示が充実し、建物内部を巡りながらちょっとしたお勉強も。

左:文翔館館内 右:旧県会議事堂に続く渡り廊下

また、中庭に出てみるとこの建物が煉瓦造りであることがよくわかり、威厳を表わす表の貌とは異なる温かみを感じます。また屋根は約15万枚の雄勝スレートが使われています。これは宮城県の雄勝石の天然スレート(硬質の粘板岩)で、東京駅丸の内駅舎にも使われているものです。

渡り廊下で結ばれる旧県会議事堂は当時は来賓客や議員控室などに使われていたそうです。かまぼこ型のヴォールト天井の議場ホールがあり、こちらはイベントやコンサートなどに利用されています。

旧県会議事堂

明治の始まりとともに県庁を中心に主要な近代的な官署や施設が次々と造られた山形市ですが、明治44年(1911)の大火でそのほとんどが焼失してしまいました。現在残っているのは前編でご紹介した旧済生館本館と、旧山形師範学校本館のみです。建物は移築保存され重要文化財に指定、修復工事を経て山形県立博物館教育資料館として開館しています。

教育資料館

ルネサンス様式の木造桟瓦葺きの2階建てで、車寄せやかつての旧校舎にあった時計台の名残の塔屋が瀟洒な印象を与えています。館内では教育に関する資料展示がされています。文翔館からは歩いて78分ですので、足を延ばしてみてください。

山形県は近代化遺産を残し、活かし、伝えることに力を注いでいる県だと思います。市内を歩くだけで巡り合える遺産の数々。新しい時代の幕開けを感じた先人たちの想いが伝わるようです。

文翔館

県立博物館教育資料館

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