ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

マンモスは復活するのか!? 「マンモス展」で永久凍土から発掘された世界初公開の冷凍標本を目撃(東京都・お台場)

2019年3月、「マンモス復活へ前進!? 2万8千年前のマンモスの細胞核の動きを確認」という驚きのニュースが日本中を走ったことを覚えていますか? いったいこれはどういうことなのか? マンモス復活にはどのような意義があるのか?果たして本当にマンモスは蘇るのか?

マンモスの貴重な冷凍標本の展示や、マンモスと同時代に生きた古生物の骨格標本、さらに最先端の生命科学の未来について考える企画展「マンモス展」がお台場の日本科学未来館で6月7日から始まりました。会期前日に行われたプレス内覧会の様子とともに今展をご紹介します。

 

インパクトあるポスターから、マンモス復活への道のりまで

「マンモス展」のポスターを東京都心のどこかで目にした方も多いのでは? 企画展のイメージキャラクターはマツコ・デラックスさん。蘇ろうとするマンモスと、マンモスに扮したマツコさんが時空を超えて会話するイメージになっている2種のポスターです。インパクトたっぷりの美しいイメージのポスターが印象に残ります。

 

日本科学未来館事業部の内田まほろ氏はプレス内覧会での会見で「今回の企画展では、今まで開催されてきた恐竜展とは異なる点があります。それは化石の展示だけではないこと。冷凍標本をはじめ、食べ物、血液、皮膚の展示があり、それらを通して古生物と先端科学を結び付けた最大規模の展示となっています。いままでにないまったく新しいスケールです」と今回の企画展に自信をみなぎらせます。

また、実は世界で発見されているマンモスの内、約80%はロシア連邦のサハ共和国で発見されているとのこと。監修者のひとりであり、サハ共和国「マンモスミュージアム」館長のセミヨン・グレゴリエフ氏は、「大人のケナガマンモスの骨格、皮膚の一部、毛など、貴重な標本を、今回世界で初公開できることはとても光栄なことです」と話してくださいました。

監修者の皆さん。左から近畿大学大学院部長/生物理工学部教授 松本和也氏、作家クリエーターいとうせいこう氏、
セミヨン・グレゴリエフ氏、野尻湖ナウマンゾウ博物館館長 近藤洋一氏

 

また、展示構成監修のいとうせいこう氏は「技術開発が進化したおかげで先端技術がつまった冷凍展示室が生まれ、何万年も前に死んだものが、まるで1週間前まで生きていたような状態で見られる。過去のものがまるで今生きているかのような保存状態で見られる展示となっています。ただその反面、地球温暖化が原因で永久凍土が解けてしまったことで貴重な発掘が可能となったという面もあります」

「また、マンモス復活プロジェクトも、人類が生命をどう扱っていくか?という重要な問題にもつながっていきます」と私たちにも強く問いかけるように語ってくださいました。

 

永久凍土から発掘された世界初公開の展示の数々は圧巻

2005年開催の「愛・地球博」で700万人が来場したという冷凍マンモス「ユカギルマンモス」の頭部冷凍標本が今回再来日。私自身は今回初めて「ユカギルマンモス」を目にしたのですが、皺のよった分厚そうな肌、大胆に曲がった大きな牙、牙と対照的にちょこんと存在する小さな耳。象とは異なるその神々しいまでの美しさに魅了され、冷凍展示室の前でしばし立ちすくんでしまいました。

世界初公開の冷凍標本が多いのも今展の目玉のひとつ。というのもこれらの標本は、いつもはサハ共和国の「マンモスミュージアム」の冷凍所蔵庫におり、一般の人は通常見られないから。一般公開するためには、風のない状態でマイナス20度(!)をキープし、且つ暑くても涼しくてもガラス窓が曇らないようにする必要があります。今回の冷凍展示室は、日本の高い特別な技術があってこそ、初めて実現した展示なのです。

上)ケナガマンモスの皮膚 下)仔ウマ<フジ>なんてリアル!

そして、これらの冷凍展示室では、世界初公開となる3万年以上前の「ケナガマンモスの皮膚」、4万年以上前の「仔ウマ<フジ>」の冷凍標本のほか、ライチョウやユカギルバイソンの冷凍標本なども見られます。

 

重要ポイントを逃さない!楽しく学べる展示構成

 

展示構成もなんてわかりやすい!と感動しきりでした。私のようにマンモスに興味はあっても、知識はほぼゼロのような来場者にとっても、すべての展示に興味がわくような仕掛けと工夫が組まれているのです。骨ではなく肉体も残る完全な状態で発見された発掘当時の様子を大きなモニターに流したり、実際にマンモスの毛をさわれたり(!)、45万部の大ヒットとなった本『わけあって絶滅しました。』(ダイヤモンド社刊)とコラボしたミニ知識の展示があったり。

そして、専門家以外は難解と思われるマンモス復活プロジェクトについての展示は、大きなマンガのパネルや、マンモス復活プロジェクトの研究室の再現などを通してわかりやすく解説してくれます。

また、世界初公開となる「仔ウマ<フジ>」や、3万2千年以上前の「ケナガマンモスの鼻」など、貴重な冷凍標本の展示室の前には「ココに注目」や「ここがすごい!」と題して、写真とともに解説パネルを展示。このパネルを読めば、実際に標本展示を見た際に、注目すべきポイントを見逃す心配はないでしょう。

 

監修者の生の話を聞ける音声ガイドと充実のマンモスグッズ

音声ガイドも充実しています。通常版の音声ガイドのナビゲーターは声優の梶祐貴さんと、いとうせいこう氏や野尻湖ナウマンゾウ博物館の近藤洋一館長ほか本展監修者がスペシャル解説してくれます。また、お子さんにもわかりやすいようにと、声優の東山奈央さんが担当し、いとうせいこう氏がゲストとなったジュニア版も用意されています。

もちろんミュージアムグッズも盛りだくさん。プレス内覧会の会見で監修者の皆さんが手に持っていたマンモスのぬいぐるみをはじめ、てぬぐいやマンモス柿ピー、Tシャツ、そしてロシアの人気キャラクター「チェブラーシカ」とのコラボグッズなどもそろっています。制作者の気合いが詰まった写真やイラスト満載の「マンモス展」オフィシャルプログラムは、企画展の余韻にひたれる上に、知識も増え、読むと再訪したくなりそうな絶対おすすめのグッズですよ。

 

原寸大写真やイラストもたっぷりで
読み応えあるカラフルなオフィシャルプログラム

 

マンモス復活に関しては倫理面でさまざまな課題があると思いますが、マンモス骨格標本の大きさに驚いたり、冷凍標本のリアルさに目をみはったりと、シンプルに楽しい!と思える、大人も子どもも楽しみながら学べるゾクゾクできる企画展です。

 

企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか- 

日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン(お台場)
2019年6月7日(金)~11月4日(月・休日)
https://www.mammothten.jp/

 

取材・文:塩見有紀子

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