トコトコ東北 by 川崎久子

第18回 小さな城下町・黒石の街なかは、とってもフォトジェニック!(青森県・黒石市)

「こみせ」の下を歩く。冬の雪はもちろん、夏は日差しを遮ってくれて快適! 

江戸時代後期に石高一万石を誇った小さな城下町・黒石。その中心地である中町は、古い商家が軒を連ね、どこを切り取ってもフォトジェニック!メインストリートに面して木造のアーケード「こみせ」が続くのも、雪国ならではの風景です。通りで最も古い、約300年前の建物「高橋家住宅」にも「こみせ」があることから、その当時からこのような街並みだったのではないかと想像できます。

城下町に欠かせない酒蔵も、この大通り沿いに。文化3(1806)年創業の鳴海醸造店は、南八甲田系の伏流水が湧き出す井戸水や県内産の米など、青森県の素材にこだわった日本酒を醸しています。創業以前に建てられたという母屋は、近江職人によって建てられたもの。どっしりとした佇まいの外観に老舗の風格が漂います。


鳴海醸造店の母屋。中に入ると、天井が高く黒々とした梁がめぐっています。

現在は蔵見学を休止していますが、店内からも長い土間の先の酒蔵の様子がチラッと見えます。

数年前に販売されていた津軽こけし型の酒瓶。再販して欲しい!

古い街を歩く際、気になるものの一つが、昔の火の見櫓。現代の消防の建物は実用一辺倒ですが、昔の物は味わいたっぷりで、ついつい注目してしまいます。松の湯交流館の裏手辺り、横丁に立つ第三消防部屯所も、実にいい雰囲気。大正13(1924)年建造、木造2階建の三角屋根の上にちょこんと望楼がのっています。なかに入ることはできませんが、ガラス越しに見える消防車「FS780型消防ポンプ車」は、地元の寄付で1971年に購入されたものだそう。現役配備車としては日本最古となるそうで、大事に使用されているのが見て取れます。

赤い屋根に水色の壁面が映える第三消防部屯所。

 入り口の掛け金もサビの出方がいい塩梅

ここ中町に残る古い街並みにも、かつて危機がありました。平成元年に商家のひとつが存続できなくなり、マンションへと建て替えられることになったのです。その際、市民が協力して土地の購入資金を用意し、売却予定日の前日(!)に土地と建物を取得しました。中町こみせ通りの景観には、市民の地元愛も宿っているようです。

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