▲Central オーナーシェフ・Virgilio Martinezさん。
2023年のThe World’s 50 Best Restaurantsで
Centralを世界一(現在は殿堂入り)に導く
ついに機が熟したー。
この連載をいつも愛読してくださっているみなさんは私にとって特別な存在。だからこそずっとお伝えしたかったんです。世界で唯一無二のかけがえのない場所「Central」を。
▲ペルーの生態系を”高度”で切り取ったプレゼンテーションで世界を驚かせたCentral。
ペルーを旅すると”高度”は気を衒ったものではなく、
ごく自然な視点から生まれたメニューだとすんなり腑に落ちる
何かに導かれるように実現した三度目のペルーへの旅。それはそのまま三度目の「Central」訪問となりました。「Central」はこの春、新しいエクスペリエンス「Central Immersion」をスタート。日本のメディアとして最初に体験させてもらいましたので、満を持してご紹介します。
▲masi(インカ帝国の流れを汲む山岳民族ケチュアの人の言語で”友達”の意味)の
キッチンでは、Virgilioさんの脳内を旅するように、
クリエイティブな発想が料理に落とし込まれるまでのステップを
知ることができる
これまでこちらでレポートしたように、ニュージーランドの「Amisfield」やインドの「NAAR」など、いま躍進する世界のシェフに多大なる影響を与えてきた「Central」。その本家はさらに進化を遂げていました。
「Central Immersion」は、①ガーデンツアー ②「Mater」という固有植物と伝統文化の保存・伝承するラボ ③「Masi」というクリエイティビティの中枢 ④リキッド部門での体験 ⑤12品(32のパーツ)の料理とペアリング ⑥テオブロマ部門での体験 という6つのエクスペリエンスで構成されたプロジェクト。1回1グループ(最大6名まで)のプライベートなプログラムで、所要時間は公式で6時間(私は食材や地名などわからないことが多く7時間弱かかりました)という壮大なプロジェクトです。
▲アンデス山脈の固有種など多様な生態系が集められたThe Experimental Garden。
植物学者のガイドで、摘んだばかりのハーブティーを飲んだり、
植物由来の自然な色を体験したり、新しい発見が溢れる
このエクスペリエンスを経ることで、外国人である私たちにも、ペルーの地形や気候と生態系、歴史や文化、そして何よりペルーの豊穣さと美しさが伝わってきます。これはもはや「レストラン」という概念を凌駕している。ガストロノミーはここまで気高く拡張できるのですね…。
▲masiで見たものが次々と登場するテイスティングメニュー(高度メニュー)の一部。
時間の経過とともにかたちを変えるなど、ひとつひとつの味わいが洗練されていて、
圧倒的に儚くも美しい独自の世界観
マチュピチュやナスカの地上絵を有するペルーは、日本でもとても人気があり、”一生に一度は行きたいデスティネーション”と言われます。けれどもガストロノミーに深い関心を持つみなさまには、マチュピチュよりナスカより「Central Immersion」を推したい。これを体験するかしないかで、その後のペルー、南米、ひいては世界の食文化の見え方が変わります。
ペルーへの旅を計画するなら、まず「Central Immersion」、続いてマチュピチュ、その後にエア&アコモデーションの手配をするのが正解かと。無限の才能を持つVirgilioさんは、すでに次のプロジェクトに取り組んでいるので、こちらの発表にもアンテナを貼っておきたい。
▲テオブロマ属の可能性を追求したデザートは、
現在の「Central」を象徴するメニューのひとつ。
この時は専門家で構成されたグループにより、
間引きしたカカオの未成熟な実や葉の活用法も考え出されていた
それにしても。「Central」の海外で唯一の姉妹店「MAZ」が日本にあるなんて、ほんとうにありがたいこと。身体は日本にいても、「MAZ」を窓口に心は遥か遠いペルーといつでも繋がれる。そんな気がしています。
Central
*公式サイトから予約できます(英語・スペイン語)
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます。