▲保存食や発酵食品を使った”ごはんのお供”が楽しい「NAAR」のヒマラヤ版TKG
こちら( https://www.tabikoi.com/shunneta/2025asiabestrestaurant50/)でお伝えしたように、アジアのガストロノミーシーンでいま存在を強めつつあるインド。
なかでも私のイチ推しは、66位に飛び込んできた「NAAR(ナー)」。大都市ムンバイで名店「Masque(マスク)」(19位)を立ち上げたスターシェフ・Prateek Saduh(プラテーク・サドゥ)さんがヒマラヤに開いたデスティネーション・レストランです。
▲「品質が均一の食材が毎日手に入るわけではない」と、
食材からインスピレーションを得てその場で突然料理に落とし込むことも
ニューデリーで国内線に乗り換え、チャンディーガル空港までおよそ1時間。そこからヒマラヤ山脈を目指して車で2時間ほど走った山奥に、自然に溶け込むようにたたずむ3軒の小さな家。それが「NAAR」です。
▲右からラウンジ&バー、メインダイニング&オープンキッチン、水回りを整えた洗い場
インドのトップシェフとして海外の一流シェフと交流するうちに、ペルー「Central(セントラル)」のVirgilio Martinez(ヴィルヒリオ・マルティネス)さんの活動に感銘を受け、各地に旅をして食文化を学びました。そこで出会ったのが過疎化しかけたヒマラヤ地方の村です。
「人が住まなくなると食文化も消滅してしまう」とチームで住まいを移し、村人の協力を取り付けました。また、地域の経済的な発展を目標に、ゲストが数日間滞在して地域の文化を体験できるためのリゾートホテルを整え、レストランとホテルの間の送迎も行っています。
▲プラテーク・サドゥさん(右上)。土地のことは土地の人が一番知っていると、
畑は地元の人と協力して運営し、地元に雇用を生み出している
ここでプラテークさんが料理するのは、ヒマラヤ山脈で独自の生態系を育んでいるという標高1000mあたりの食材。森に自生する多彩な植物やジビエ、斜面にそって開いた自家菜園で採れる野菜やハーブ、川から揚がる天然のトラウト(海のものは使いません)、村人が育てた豚や鳥、ヒツジ、ヤギ。
「外からは何もないように見えるこの土地は、実は自然の恵みに満ちた豊かな土地でした」。
▲夕暮れ時のテラスでアペリティフ、ダイニングで食事をして食後酒は火を囲んで。
距離が近く感じられる星空とたき火、天国
「インドの大都市では大気汚染や水質管理などの問題もありますが、ここなら厨房の中でも屋外でも薪火料理をすることができます」
ヒマラヤの天然水と山の木材。「水」と「火」という料理に欠かせない最上のふたつがここなら叶うとか。
▲厨房とつながるようにデザインされたダイニング。キッチンのライブ感がそのまま伝わる
知っての通り、北と南では料理がまったく違うなど、地方ごとに多様な食文化を持つインド。そのなかでヒマラヤにたどり着いたのは「山に呼ばれたから」と感じているそう。
「料理人の中には、山に呼び寄せられる運命を持った人がいると思います」
気軽に行ける場所ではないけれど、だからこそ記憶に刻まれる一食の体験になる。料理人が山に呼ばれたように、食べ手である私たち旅人も山に呼ばれるーーー。そんな運命的なご縁がみなさまに訪れますように。
NAAR https://restaurantnaar.com
*公式サイトからWhatsAppを経由して予約できます(英語)
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます。