世界のファインダイニング by 江藤詩文

第21回 応援したいニューフェイス・その2 イノベーティブなノルディックフレンチが6ハンズでパワーアップ「Sublime(スブリム)」(東京・麻布十番)

今月のテーマは「がんばれニューフェイス」。第2回は麻布十番の「Sublime(スブリム)」を紹介します。Sublimeといえば、2017年から3年連続してミシュランの一ツ星を維持しているガストロノミー界の人気店。マッシュルームを発酵させることで別次元のうま味を生み出した「発酵マッシュルームのスープ」(トップ写真)は、食材を余すところなく使い切るサステナブルな調理法と、均一にスライスしたマッシュルームを一面に敷き詰めた北欧らしいミニマルなプレゼンテーションで、Sublimeの名を一躍有名にしました。

(甘海老 賀茂なす バタフライピーのソース すだちオイル)

そんなSublimeの顔といえば加藤順一さんだったわけですが、その彼が巣立ったいま、Sublimeはどうなったのだろうと気になっているフーディーズも多いはず。ここに登場したのがニューフェイス。平均年齢27歳の若いチームがタッグを組み、6ハンズで新しいノルディックフレンチを生み出しています。

(左から、中野葵さん、齋藤宏伸さん、古賀泉帆さん)

シェフとしてチームを率いるのは、3人のうち最年長の齋藤宏伸さん。「タテルヨシノ」を経て1年間フランスに滞在し、パリの「ピルグリム」などで経験を積みました。肉・魚のメインディッシュやスープを担当しています。

地産地消の食材を使い、Sublimeらしいサステナブルなアミューズや前菜を手がけるのは中野葵さん。南イタリア、フレンチバスク、デンマークの3ヵ国で学び、なかでもコペンハーゲンの「ゲラニウム」でノルディックキュイジーヌの本質を習得しました。

デザートを担当するパティシエールは古賀泉帆さん。「タテルヨシノ」、ボルドー時代の「ジョエル・ロブション」、恵比寿の「ジョエル・ロブション」、オーストラリアと豊富な経験の持ち主です。

(メニュー名は「ボール」。和牛サーロインやブッラータのカダイフ包み)

 3人のグローバルなバックグラウンドのかけ合わせによって、ジャンルを超えたユニークな料理が創り出されます。一方で、イノベーティブな料理ばかりではなく、たとえばブルターニュ産仔牛の炭火焼きにソース・ペリグーを合わせるなど、オーセンティックなフレンチもちゃんとしているのは、名店できちんと修業を積んだ経験があるからです。

(最後のミニャルディーズも美しい。誕生日など記念日プレートもおすすめ)

何より若い3人が、肩のちからを抜いてお互いにサポートし合いながら、できることを楽しげにやっている感じがとってもいまっぽい。アフターコロナの時代には、ゲストも肩のちからを抜いてゆるっと楽しむ、こういうスタイルのレストランが増えるのかもしれません。

ちなみに、よりパワーアップすべく現在はレストランを改装中。10月にリニューアルオープンするそうで、楽しみです。

(データ)

Sublime(スブリム)

https://sublime-japan.jp 公式サイトから食べログへリンクしてオンライン予約できます

*料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ