ニホンノカタチ by yOU(河崎夕子)

第6回 薄く、軽く、しなやか。世界一の”妖精の羽“は、長閑な里の絹織物工場で生まれた(福島県・伊達郡川俣町)

6年前、BSの番組のナビゲーターを務めさせていただいたことがありました。
今回はその番組を通じて訪れた福島の絹織物工場にフォーカスします。

JR福島駅から車で30分、福島県の中通りに位置する長閑な里の風景が広がる伊達郡川俣町は、江戸時代の前から生糸や絹織物の市が並ぶようになり、江戸城御用の川俣シルクを生産し、明治、大正、昭和に至るまで国内で有数の絹織物産地に発展していきました。

ところが、最盛期に250ほどあった織物会社は、1970年代には40ほどまでに減ってしまい、このままでは川俣シルクの存続自体が危ぶまれた頃、1952年創業の齋栄織物が、他に真似できない極細の絹(髪の毛の太さの約6分の1)で機械織りできる独自の方法を編み出し、世界一薄いと言われる先染絹織物「フェアリーフェザー」の生産に成功しました。
この技術はあっという間に注目され、2012年にドレスデザイナー桂由美が発表した世界一軽くて薄いウェディングドレスは、このシルクを使っています。

川俣シルクを救った齋栄織物の工場は、創業当時から変わらぬ木造の建物。
機織りの音が聞こえてくるその建物は趣があって、内部は少し薄暗くひんやりとしていて、独特なエイジングを醸す雰囲気が私の写欲を掻き立てたのでした。
糸繰返機がずらりと並ぶ作業室、ここではかせ糸が大枠にクルクルと巻かれ、さらに別室ではたくさんのボビンに巻かれて経糸(たていと)が準備されていきます。何本もの糸がボビンに向かって真っ直ぐ伸びていき、天窓から入る光に照らされてキラキラする様子は、まるで蜘蛛の巣に迷い込んだようでした。

そして建物に入る前から聞こえてきた機織りのリズミカルな音のする方へ。
木枠の引き戸のガラス越しに覗けば、織り機がずらりと60台ほど。
経糸と緯糸を紡ぐシャトルが行き来するトンカントンカンという音がリズムよく鳴り響く中、社員の方々はこの機織り機の間を歩いてチェックし、糸のテンションを自分の手で確認していきます。これこそが職人技。慣れた手つきで絡まった糸を解す所作の美しさには目が釘付けになりました。

齋栄織物の社員数は当時17名。
お昼時になると工場は一旦電源が落とされ、全員休憩室に移動するというのでご一緒させていただくと、畳の部屋にそれぞれ腰を下ろしてご自宅から持参した手作り弁当を膝の上に広げました。
「今日はなんのお弁当ですか?」と覗くとちょっと恥ずかしそうに、でも笑顔で、お弁当箱の中を見せてくれました。

丁寧で愛情たっぷりなモノづくりを目の当たりにして、これからも大切に継承されることを願っています。コロナ禍で現在シルクのマスクもオンラインで販売中だそうです。是非チェックしてみてくださいね。


糸のテンションを確認したり、絡まりをほぐしたり。正に職人技。

【齋栄織物 株式会社】
住所:福島県伊達郡川俣町鶴沢馬場6-1 (JR福島駅東口より車で約30分)
電話:024-565-2331
http://saiei-orimono.com/

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