ニホンノカタチ 旅恋ver. by yOU(河崎夕子)

第43回 江戸時代、甲斐国の名産はうなぎだった!? 新スタイルの鰻屋をご紹介(山梨県・北杜市)

ここ数年、公私共に旅の頻度がますます上がっていますが、その目的はさまざま。個人的な旅においては、もっぱら「旬の食材」と「サウナ」がメインコンテンツ。今回は両コンテンツを網羅する、私の旅先おすすめスポット山梨県の八ヶ岳付近から。

が、その前に唐突ですが。そもそも鰻っていつから食べられてると思いますか?

日本での鰻の歴史はなんと約5000年前に遡るとか。縄文時代の貝塚で、鰻を食べた後の骨が発掘されたことからそのように言われているそうです。もちろん当時の食べ方は、蒲焼でも白焼でもなかったことは明らかですが、じゃあ蒲焼っていつから食べられてるの?といえば、どうやら室町時代から。当時鰻を筒切りにしたものを串に刺して焼いた様子が、「蒲(ガマ)の穂」に似ていたことから「蒲焼」と言われるようになったそうです。

蒲(ガマ)の穂。室町時代の蒲焼はこんな筒状だった

海のない山梨県の名産といえば、ブドウや桃など畑で採れるものをイメージしますが、江戸時代、甲斐国(かいのくに)で獲れる「地前」と呼ばれた鰻は、「肉厚でおいしい」と江戸に匹敵するほど評判だったと伝えられています。そこで今回は山梨で訪れた鰻屋さんを2軒ご紹介します。

まずは、うなぎ専門店「井筒屋」。JR小淵沢駅から徒歩3分、風情あるどっしりとした木造建屋の店構え。昭和2年までは和菓子屋だったそうですが戦争で廃業、70年の時を経て内装も進化し、1996年に鰻屋として復活。畳の上にモダンな椅子やテーブルを並べた店内、中庭の緑を眺めながらいただく鰻は「熟成かめ塩のうなぎ」。

鰻を熟成させて白焼にして、水と米と出汁にこだわったうなぎ丼は、山椒塩と搾ったレモン汁でいただきます。一般的に言う白焼と違うのは熟成させているからこそ。シンプルにいただくことで鰻の味をしっかりと味わえました。合わせていただいた鰻巻きも絶品!

井筒屋の趣ある外観と椅子とテーブルが並ぶモダンな内装

「熟成かめ塩のうなぎ」は香の物、吸い物、小鉢がついて税込5,060

そしてもう一軒は、清里の旧村の樫山地区に、2年前オープンしたばかりの「Blowin' in the Wind(ブローウィン・ザ・ウィンド)」。こちらは鰻と喫茶とレコードの店。元々お蕎麦屋さんだった建物を改装したそうですが、鰻を出す店とは思えない雰囲気。暖簾をくぐって、天高の広い空間に足を踏み入れると、燦々と差し込む光とまろやかなレコードの音に包まれ、窓の外には豊かな緑が風にゆらゆらと揺れていました。

「なんだここは...」と最初から興奮気味。

真空管とレコードプレイヤーに大きなスピーカー、店内の細部に店主のこだわりが感じられました。「ここで食べる鰻やいかに?」と思っていたのですが、出てきた様子は意外と正統派。

やわらかい物腰の店主が丁寧に仕上げたことが伺えて、ふっくらと肉厚の鰻は優しい味に仕上がっていました。またお重や箸置きなどは、同じ北杜市内のサントリー白州蒸留所のウイスキーの古樽を譲り受けて再利用したものだそうで、暖かみがある木の風合いがまた素敵でした。

そして店名の「Blowin' in the Wind(ブローウィン・ザ・ウィンド)」は音楽が大好きな店主が、ボブ・ディランの曲のタイトルから取ったものでした。

 正統派の鰻重「樫山の鰻ご飯」は肝吸い・香物付きで5,445円(税込)

午後の喫茶タイムは手作りの甘味やハーブティーも楽しめる

山梨県にお出かけの際は、甲斐国の名産「鰻」を旅の目的にしてはいかがでしょう?

「小淵沢 井筒屋」
 〒408-0044 山梨県北杜市小淵沢町1035  0551-36-5990
https://www.itutuya.com/

Blowin'in the Wind
407-0301 山梨県北杜市高根町清里28901 0551-45-6778
https://blowin-in-the-wind.jp/

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