ニホンノカタチ 旅恋ver. by yOU(河崎夕子)

第22回  落花生は実は二宮町から始まった⁈ 150年続く落花生の「渡邉商店」(神奈川県・二宮町)

このところご縁があって、二宮町に足を運ぶことが増えています。

「二宮ってどこ?」と聞かれることも結構多いのですが、神奈川県の湘南エリア、駅でいうと東海道線で大磯と小田原の間といったらわかるでしょうか?気候は極めて温暖で相模湾に面した立地ながら、藤沢や茅ヶ崎などとは全く趣の異なる長閑な町。同じ神奈川県に育った私も、それまでに1〜2度しか足を踏み入れたことのなかったこの町では、実は明治時代から続く落花生が名産品であることはあまり知られていません。

今回は、仲良くさせていただいている二宮在住の素敵な女性のご紹介で訪れた、老舗の落花生屋「渡邉商店」からのニホンノカタチ。

店頭で普通に買い物をしていたはずが、社長が自ら工場を案内くださるという大人の社会科見学をさせていただいたのが今年2月。古くからの作業場に西日が差し込む様子に、すっかり写欲を刺激されてシャッターを切り「改めて取材させてください!」という話に。「それならば桜が満開の頃が圧巻ですよ」と伺って、その時を待って4月の再訪でした。

工場の中の作業は全て手作業。品質を落としたくないからと渡邉さん

二宮町の落花生は「相州落花生」と呼ばれ、明治5年に二見庄兵衛が外国人からラッカセイ種子を入手して試作したことが、実は日本の落花生の始まり。篤農家による熱心な栽培が進み、二宮を中心に隣の大磯や平塚、秦野辺りに落花生屋がいくつも出来て、かつて運行していた二宮と秦野を結ぶ蒸気機関の湘南軽便鉄が、落花生も運んでいたそう。現在は鉄道は走っていませんが、道路になっている今、その道は「落花生街道」とも呼ばれています。

現在は生産量は減ったものの、大切に大切に手作業で作られる落花生は、遠方からわざわざ買いにくるファンも多いのだとか。私も、渡邉商店の落花生と落花生ペーストを実際に口にして、他とは違う味と食感にすっかり魅了されてしまいました。

今回お話を伺ったのは、27才でこの店を継いだ4代目の渡邉廣(ひろし)さんとお嬢さんの阿部正美さん。廣さんは70代を超えて今もなお現役。家族とパートさんと共に契約農家から届いた豆を洗い、干して選別、殻剥き、焙煎、さらに選別して加工する工程をこの敷地内で行っています。長年に渡り稼働している工場の中には、先代から受け継がれ、改良された機械や道具が並びますが、どれも今も現役の重みと独特な美しさがありました。

言葉を失うほどの美しい眺め!(2022年4月7日ごろ)

工場を抜けた裏庭に出て思わずため息が出ました。 葛川沿いに広がる裏庭には立派なソメイヨシノが5本。 その時期を狙って伺った甲斐あって、この時(2022年4月7日頃)見事な満開の桜を拝むことが出来ました。 これらの桜の木はいずれも今年で50歳と伺いましたが、なんと植えたのは20代の頃の廣さん。 弟さんのビジネスの成功を祈願して買った桜の木の苗はこの場所でスクスクと育ち、今では二宮散策の観光客にとっても桜鑑賞の人気スポットのようです。

 古い工場の川向かいには、バターピーナッツやペーストなどの加工品を作る新しい工場。 そこから眺めると、葛川沿いの5本の桜と家屋を一気に鑑賞することができて、まさに圧巻の眺め。「贅沢!」の一言でした。

4代目の渡邉廣さん(右端)とご家族の皆さん

現在もご家族中心に営む店舗と工場ですが、パートタイマーとしてお手伝いに入っている方々は皆長いお付き合い。お話を伺えば「もう家族のようです。アットホームで楽しく仕事ができるんですよ」と一言。

二宮の温かい空気とご家族の穏やかな雰囲気に包まれて仕上がる落花生。手作業ゆえに数に限りはありますが、その優しい味に作り手の愛情がぎゅっと凝縮しているようでした。

 

落花生 渡邉商店

〒259-0123 神奈川県中郡二宮町二宮1347

TEL:0463-71-0018

10:00-18:00

http://www.rakkasei.net

 

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