ニホンノカタチ by yOU(河崎夕子)

第2回 じわじわと味わいが醸される美浜のへしこ作り(福井県・美浜町)

秋も深まる頃、福井県嶺南地方の名勝三方五湖の一つ、日向湖のほとり。5人の女性達がゴム長を履いて大きな樽の前に座り、にぎやかにおしゃべりする光景が。

「旦那たちは漁に出てるからねー、私たちはこうやって集まってね」

山と積まれた鯖のお腹から内臓を取っては洗い、塩を擦り込んで丁寧に樽に並べていました。時折手を止めておしゃべりに夢中になりながら大笑いして、また手を動かすお母さん達。

早朝から漁に出ているお父さんの代わりに、湖のほとりの民宿を切り盛りするお母さんが集まって始まった美浜町日向の鯖へしこ作りは、新米の糠が出回る秋から冬にかけての年に1度の作業。まずは鯖を塩漬けして1〜2週間置いた後で、調味料とたっぷりの糠を擦り込んで、再び樽の中に1枚1枚重ねて本漬けに。本漬けにしてから1年もするとようやく食べごろを迎えます。

厳しい冬に備えた保存食として始まったへしこは、福井県の若狭地方の郷土料理としても有名で、今や美浜町は「へしこの町」としても広く知られています。

私の父方のルーツがまさにこのエリア。

子供の頃から祖父母の家に遊びに行くと、大人達はこれを肴に日本酒をチビチビやっていたことを思い出します。当時、子供だった私にはちょっと癖があって食べられなかったけれど、今ではアンチョビ代わりにパスタに使ったり、大根の薄切りでサンドしてお酒と合わせたり。冷凍保存する大切な常備食です。

ちなみに「へしこ」の名称の由来は、大きな樽に鯖やいわしをギュギュッと敷き詰め込むことを「へ仕込む」と言ったことからとか。

お母さん達の笑い声と共に大きな樽に並べられて、静かな湖のほとりでゆっくりじっくりと熟成されていくへしこ。このへしこ作りの風景に、醸された味わいが如くじわじわと、ノスタルジーと写欲を掻き立てられました。

美浜町日向「女将の会」へしこ購入・お問い合わせ

〒919-1123 福井県三方郡美浜町久々子72-1「五湖の駅」TEL : 0770-32-3339

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