マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第14回 世界遺産としては異例尽くし!20世紀を代表する近代建築物「シドニー・オペラハウス」(オーストラリア)

オーストラリアのシンボル「シドニー・オペラハウス」は、2007年に登録された世界文化遺産です。実際に訪れたことがなくても、白い貝殻を重ねたような優美な姿を誰もが思い浮かべることができるのではないでしょうか。

白い貝殻のようにも、船の帆のようにも見えるシドニー湾のシンボル(Photo by Pixabay)

私がこの地を訪れたのは世界遺産に登録される前でしたが、実際に見てみると白く輝いているイメージでいたのに、思いのほかクリーム色だったことがたいへん印象に残っています。実は、屋根には白とクリーム色の2種類のスウェーデン製タイルが使われており、そのため天候や時間帯によって見え方が変わってくるそうです。

光沢のある白色と光沢のないクリーム色の105万6000枚ものタイルが、
光の加減でさまざまな色合いを演出(Photo by Pixabay)

オペラハウス建設は、第2次世界大戦後、シドニーに大型のコンサートホールをという構想から始まりました。1956年には国際デザインコンペが行われ、翌年233件の応募の中から選ばれたのが、当時無名だったデンマークの建築家ヨーン・ウッツォンでした。今までにない創造性と革新性に満ちたデザインでしたが、1959年に建設が始まると、そのデザインの複雑さから工事は難航。その後、政府と意見が対立したウッツォンは辞職し、オーストラリアを去ってしまいます。オペラハウスはオーストラリア人の建築家チームによって引き継がれ、最終的に14年の歳月をかけて1973年に完成しました。建築費は当初の予定より14倍にも膨れ上がったそうです。

シドニー湾の風景に溶け込んだ美しいオペラハウス(Photo by Pixabay)

話題に事欠かないオペラハウスですが、世界遺産としても珍しい特徴がいくつかあります。

世界遺産に登録される物件は、時代を超えて受け継がれ、その価値が認められたものが圧倒的に多いのですが、オペラハウスは建物の完成からわずか34年で世界遺産に登録されました。建築様式と構造設計の両面において高く評価され、さらにシドニー湾の海辺の風景に溶け込んだ美しい姿も認められています。

世界遺産の登録基準が「()人間の創造的才能を表す傑作である」の1つだけというのも珍しく、千件を超える世界遺産の中で現在3件しかありません。ちなみに残り2つはタージ・マハル(インド)とプレア・ヴィヘア寺院(カンボジア)です。また建築家が存命中に世界遺産に登録されたのもオペラハウスとブラジリア(ブラジル)の2件のみとなっています。

コンサートホールのほか、レストランやカフェもあり、また館内の見学ガイドツアーも実施されています。コロナ収束後にぜひ一度訪れて、シドニー湾の美しい景色や建物の素晴らしさなどを肌で感じてみてはいかがでしょうか。

 夜には屋根を使ったプロジェクションマッピングのイベントも開催(Photo by Pixabay)

 

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