マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第1回 新型コロナウイルスで奄美・琉球諸島の世界遺産誕生は持ち越しに(鹿児島・沖縄県)

ご存じの通り、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっており、多方面に影響が及んでいます。世界遺産という一見関係のないような分野も例外ではありません。

毎年1年に1度、世界遺産委員会が開催され、新規物件登録の可否や、既存の遺産の保全状況などについて話し合われてきたのですが、今年は中止となりました。本来なら629日から中国の福州市で行われるはずでしたが、次回の開催時期や開催地も未定のままです(20208月現在)。

日本からは「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が自然遺産として推薦されていました。もし登録されていたら日本で24件目、自然遺産としては5件目の世界遺産誕生となっていたのに残念でした。

沖縄北部に広がるやんばる国立公園(写真:Adobe Stock

世界遺産登録にあたっては、顕著な普遍的価値の評価基準として10の登録基準が定められています。2018年の推薦時には10のうち、(ⅸ)生態系と、(ⅹ)生物多様性の2項目で推薦されました。ところが、世界遺産委員会の諮問機関であるIUCN(国際自然保護連合)の事前調査で「登録延期」の勧告を受けたのです。琉球列島のうちの4島の一部だけでこの地域の生物の進化や発展など生態系を完全に証明するのは難しいと判断されたようです。また、絶滅危惧種や固有種の種類や割合においては一定の評価はされました。その後、沖縄の北部訓練場返還地をやんばる国立公園へ編入して、推薦地の分断を解消するなど、課題をクリア。

今回は、(ⅹ)生物多様性のみに登録基準を絞り、再推薦されたのです。同じ自然遺産としての推薦でも、1度目と2度目ではその推薦内容は異なっていたのです。興味深いですね。

次回の世界遺産委員会がいつになるかわかりませんが、アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナなど、数多くの絶滅危惧種が見られるこの地域が自然遺産として登録され、保全されることを願いたいと思います。

飛べない鳥・ヤンバルクイナは、やんばる地域の固有種(写真:Adobe Stock

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