古都・飛騨&高山エリアをアクティブに楽しもう! 後編(岐阜県・飛騨・高山エリア)

岐阜県の最北端に位置する飛騨&高山エリアには、自然をはじめ、歴史、アクティビティ、グルメ、温泉ほか、バラエティに富んだ旅スポットが充実しています。前編では旅の1日目として、かつて神岡鉱山で栄えた飛騨市神岡町から奥飛騨温泉郷平湯温泉にかけての楽しみ方をご案内しました。後編は旅の2日目。平湯温泉を出発し、歴史ある町並みが続く飛騨市古川町をめざします。

 

絶景の奥飛騨温泉郷!

奥飛騨温泉郷は高山市の東端にあり、長野県と県境をともにするエリア。1日目に宿泊した平湯温泉をはじめ、福地・新平湯・栃尾・新穂高の5つの温泉地の総称です。東側が北アルプスの山々に面し、その大自然を見渡す絶景は観光の目玉。そこで2日目は「新穂高ロープウェイ」での空中散歩からスタートし、日本屈指のマウンテンビューを満喫しました。

北アルプスを一望する新穂高ロープウェイ

「新穂高ロープウェイ」は、北アルプスの千石尾根伝いに敷設されたロープウェイ。山麓と山頂を2線に分けて結んでおり、第1ロープウェイは山麓にある新穂高温泉駅から標高1305mの地点にある鍋平高原駅まで。傾斜長573m、高低差188mの道のりを約4分で走ります。第2ロープウェイは鍋平高原駅から徒歩ですぐの場所にある、しらかば平駅から山頂にある西穂高口駅まで。乗車時間は約7分で、傾斜長2598m、高低差848mの道のりを秒速7mで移動します。このうち第2ロープウェイには、202310月現在、日本で唯一となる2階建てゴンドラを採用しています。

第2ロープウェイ

※メンテンナンスのため、2023119日(木)までの間は第2ロープウェイが、1129日(水)・30日(木)は第12ロープウェイがともに運行休止しています。

私が訪れた時期は初秋に差しかかった頃。車窓からは青味がかった松葉のような色、鮮やかなグリーン、ほんのり黄味が入った萌黄色など、多彩な緑色に染まる北アルプスの山並みを楽しめました。薄っすらと赤みを帯びた部分もありましたが、例年、紅葉の季節は10月上旬頃からの約1ヵ月間。山頂付近から色づきが始まり、裾野に向けて徐々に彩りのヴェールを広げていくそうです。また、一面の銀世界が広がる冬の姿も新穂高を象徴する景観。春には高山植物をはじめとした花々が咲き誇ります。

中部山岳国立公園内にあるロープウェイ

このロープウェイの最大の見どころは、終点の西穂高口駅にある屋上展望台からの眺め。標高2150mの高さから360度の大パノラマで北アルプスの山並みを一望でき、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』では二ツ星を獲得しています。“日本のマッターホルン”の異名をもつ槍ヶ岳、日本百名山のひとつに選ばれている焼岳など、数々の名峰が見渡す限り続く光景は本当に見ごと。あふれ出す自然のパワーを感じずにはいられません。

緑のグラデーションが美しい!

「山びこポスト」。通年集荷型ポストでは日本最高所ある

西穂高口駅の売店限定の「頂」グッズやグルメ

西穂高口駅の周辺には、展望スペースや原生林に囲まれたテラスなどを設けた「頂の森」も整備されています。そのひとつの「槍の回廊」はネット張りの通路を設置した展望デッキです。歩いてみると、足元がぐらついて、まるで雲の上を歩くような感覚。しかも、空中にせり出した構造になっているので真下には山の斜面が丸見えで、楽しさ半分、スリル半分です(汗)。このほか、2024年度には新たに散策路などもオープンする予定だそう。また、新穂高ロープウェイでは期間限定で、屋上展望台で星空を観賞できる「星空観賞便」を運行しています。

回廊式展望デッキ「槍の回廊」と「森のテラス」

帰りは中間駅のしらかば平駅でひと休みするのもおすすめです。駅構内にある無料のビューラウンジでは、映画のスクリーンを見るような迫力で窓いっぱいに映る山の景色を楽しめます。そして、駅の向かいには源泉かけ流しの天然温泉露天風呂や足湯もあります。おみやげには、駅に併設したベーカリーで販売しているゴンドラをモチーフにした食パンが人気ですよ。

ビューラウンジのカウンター席

レトロとモダンが共存!飛騨市古川町

続いて飛騨市古川町を訪ね、のんびりと散策を満喫しました。かつて、増島城の城下町として栄えた古川の町。碁盤のような町割りや古い町屋が今もなお残り、瀬戸川には約500mにわたって白壁土蔵街が続いています。町中には老舗の酒蔵や伝統工芸の店が軒を連ねている一方、近年では趣ある建物を再利用して飛騨の魅力を発信するモダンなカフェやショップも現れています。また、古川町のある飛騨市は総面積の93%を森林が占め、その約7割が広葉樹。これらの木材を使った家具作りも盛んです。散策の途中で見つけた素敵なスポットをご紹介します。

地元の魅力を発信する FabCafe Hida

地元の食材を使ったメニューが味わえるほか、飛騨の広葉樹を使ったモノづくり体験や宿泊もできるカフェを訪れました。この日はランチでの利用。いただいた「チリコンカンライス」には、飛騨市の農家サノライスさんが栽培した在来の青大豆「はところし豆」や「飛騨スパイスカレー研究所」の「旨チリパウダー」が使われています。はところし豆は大粒で滋味深く、旨辛のスパイスはほどよい辛みで具材のおいしさをよく引き立てています。フード類は、ほかに地元産のトマトで作ったハヤシライスや、高山市にある人気店のベーグルを使ったベーグルサンドなどもありました。このほか、定期的に地域や森の食材を使ったメニューに変わるそうです。

築100年以上の古民家を利用。中庭に面した和室もある

チリコンカンライス950円(8・9月限定)

ドリンクは、スタッフみずから飛騨の森で摘んだというクロモジを使ったコーヒーをオーダー。つま楊枝の材料としてお馴染みのクロモジですが、枝の部分に香りをもつ香木でもあり、このお店では中挽きにしたコーヒーに細かくカットした枝を混ぜてドリップしています。クロモジは英名をSpicebushといい、飲んでみると、スパイシーな風味で清涼感のある後味。香りにはリラックス効果があるといわれ、食後にピッタリです。葉を使ったクラフトコーラやハーブティーも提供しているそうですよ。

クロモジコーヒーはドリップパックの販売も。1個380円、3個入りパック1000円

薬草を身近に感じられる ひだ森のめぐみ

飛騨の森には245種類以上もの薬草が自生しています。特に古川は飛騨の薬草を使ったグルメを食べられるお店が集まっているほか、薬草を使ったワークショップやイベントも活発に行っており、“薬草の町”として注目されています。

なかでも「ひだ森のめぐみ」では、薬草を使ったワークショップを体験できます。薬草茶づくり(要予約)や入浴剤づくりなど9種類の内容があり、私は七味づくりを体験してみました。この体験では15種類の薬草や野菜のパウダーから好みのものを選び、ロートを使って順に小瓶に詰めていきます。

表情が真剣。きれいな層をつくるのが意外と難しい

薬草といってもトウガラシがあるほか、香りに特徴のある当帰や陳皮があったり、大昔、野菜が薬草として扱われていたことからトマト、紫芋、パプリカといった野菜もあったりします。味のバランスも大切なうえ、配色にはセンスが出ます。それが楽しいのですが、なかには迷った挙句、七味なのに15種類全部を詰め込みたくなってしまう私のような人も少なくないそうです()

体験でつくった薬草七味。結局、九味に

店内では古くから伝わるとされるカキドオシ茶や、クッツキムシの名前でおなじみのメナモミ茶など自家製の珍しい薬草茶も販売しています。

薬草茶は量り売りも可能

老舗の味を気軽に 二十四

続いて、地元・古川の老舗料理旅館「八ツ三館(やつさんかん)」が開いたチーズスイーツのお店へ。この店では同館のデザートとして好評を博してきた品々を提供しており、おすすめは「チーズテリーヌ」1種類、「チーズバターサンド」2種類を味わえる食べ比べセットです。滑らかな口あたりのテリーヌは、隠し味にした古川の地酒がほんのり香ります。一方、サンドは軽い口溶けのクリームとサクサクのクッキーが絶妙のバランス。添えられたピンクペッパー、岩塩、粗挽き胡椒を付けながら味わうと、クリームの風味がグッと引き立ち至福の味わいです♪ この日のフレーバーはサンドがプレーンと抹茶、テリーヌがプレーンでしたが、時期により桜、イチゴ、ヨモギなど季節のフレーバーが登場することもあるそうですよ。また、おみやげ用の販売も行っています。

「テリーヌとサンド食べ比べ」750円

お店の名は八ツ三館(8×324)にちなんでいることに加え、二十四節気を大切にする気持ちや、人が心地よいと感じる温度が24度といわれていることなど、さまざまな意味を含んでいるそうです。

 店内は飛騨の伝統工芸・山中和紙を使った行燈をはじめ、飛騨の老舗家具メーカーが手がけたイス、飛騨の土を使った壁など、飛騨ゆかりの素材や職人技で満たされています。8つのテーブルにも栗、ブナ、楡などすべて異なる飛騨の広葉樹を使い、窓側から店の奥にある中庭に向けて段々と標高の高い場所に育つ木になるように並べてあります。一見シンプルですが、インテリアにも注目してほしいお店です。

八ツ三館館主の娘でスタッフの池田茉生さん。「24」歳!

 

伝統文化を体感 飛騨古川まつり会館

古川町を語るうえで欠かせないのが飛騨古川祭です。この祭りは毎年419日・20日に行われる気多若宮神社の例祭で、江戸時代から300年以上にわたって続く古川の一大行事。神輿の渡御に合わせて行う絢爛豪華な屋台巡行と、数100人のさらし姿の男たちが直径80cmの大太鼓を威勢よく打ち鳴らしながら巡行する「起し太鼓」で知られ、国指定重要無形民俗文化財のほか、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。この伝統ある祭りを、一年を通して体感できるのが「飛騨古川まつり会館」です。

9台ある屋台を入れ替えながら常時3台を展示

館内では実物の屋台を展示しており、その大きさと精緻な造りに圧倒されます。さらに起し太鼓の試し打ち、祭りの際にからくり奉納で使用する人形の操作体験も可能。また、祭りの見どころのひとつ「とんぼ」にも挑戦できます。とんぼは棒にお腹をあて、そこを支点にしながら空中でトンボのように手足を広げる曲芸で、私の怠けた体で挑戦するには至難の業(汗)。挑戦してみて、改めてそのすごさを実感しました。グループで行くと盛り上がるので、ぜひトライしてみてくださいね。このほか、ハイビジョン4Kのダイナミックな映像で見る祭りの様子をおさめた動画も必見です。

曲芸「とんぼ」にトライ。実際の祭りでは3.5mの高さで行う

 

伝統と和の風情 瀬戸川と白壁土蔵街

瀬戸川沿いに続く白壁土蔵街は人気の散策スポットです。瀬戸川には約1000匹もの鯉が泳いでおり、錦に輝く姿を優雅に揺らす様子は古都の情緒たっぷり。川の脇の販売ポストでエサを購入すれば、エサやりも楽しめます。また、川から1本脇にある道は古川のメイン通り。老舗の酒蔵や和ロウソクの店など歴史深い店が並ぶなか、祭りの屋台を保存する屋台蔵などもあり、町に息づく伝統や文化を感じながらそぞろ歩きを楽しめます。

白壁土蔵街

古川は「匠の町」としても知られています。はじまりは、大和朝廷時代、飛騨の人々が税金を納める代わりに神社仏閣の造営を行う木工作業員として都に出向いたことにあるとされています。その技術は今も受け継がれており、古川の町家の軒先には大工の紋章として「雲」という彫刻が見られます。町中には約170種類の雲があるといわれているので、散策の際に覗いてみるとおもしろいですよ。

「飛騨の匠文化館」の軒下にある雲

飛騨・高山エリアには、伝統を守る古都の顔に加え、豊かな自然やその恵みを体感できるアクティブなスポットが充実しています。近年では飛騨古川が映画『君の名は。』のモデルになったことで幅広い層で人気が高まっています。今後の新たな旅のアイディアにも注目していきたいスポットです。

 

  • 参考サイト

新穂高ロープウェイ

※メンテンナンスのため、2023119日(木)までの間は第2ロープウェイが、1129日(水)・30日(木)は第12ロープウェイがともに運行休止しています。

https://shinhotaka-ropeway.jp/

FabCafe Hida

https://fabcafe.com/jp/hida/food/

二十四

https://24-nijushi.com/

ひだ森のめぐみ

https://www.city-hida.jp/yakusou/event/post_6.html

飛騨古川まつり会館

https://okosidaiko.com/

瀬戸川と白壁土蔵街

https://www.hida-kankou.jp/spot/278

岐阜県では1229日までの平日の宿泊を対象にした、ぎふ旅コイン付き宿泊プランを実施中。

「おトクな平日★ぎふとりっぷ」キャンペーン

https://www.kankou-gifu.jp/article/detail_210.html

 

取材協力:奥飛騨観光開発、高山市観光課、飛騨市役所まちづくり観光課、岐阜県観光誘客推進課

 

取材・文 田喜知 久美

 

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