ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第7回「庭園もまた一幅の絵画」。日本一と称される日本庭園は足立美術館にあり!(島根県・安来市)

首都圏在住者は、足立区にある美術館!?と思ってしまうかもしれませんが、足立美術館は出雲大社のある神々の国・島根県にある美術館です。JR安来駅(やすぎ)から無料シャトルバスで約20分、アメリカの日本庭園専門誌『数寄屋リビングマガジン/ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニングで』において、京都の桂離宮らをおさえて18年連続日本一に選出された5万坪におよぶ日本庭園を有する美術館なのです。また、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』でも三つ星として掲載されています。

館内に入ってまず目にするのが、杉苔を主体とした「苔庭」。白砂の海、海に架かる橋のような石太鼓橋、海を望む岬灯篭。そして緑色の苔がやわらかさを与えています。また、自然に近いかたちになるよう、赤松一本一本の幹が重ならないように配置されているそう。

苔庭に続くのが、足立美術館の主庭である「枯山水庭」。中央の立石は険しい山を表し、ここから滝が流れ落ち、渓流となり、そして白砂の大河へと続くさまが水を用いずに表現されています。そしてここ足立美術館の庭園が特に素晴らしいのは、遠くに見える勝山(かつやま)などの自然の山々との調和です。借景の山々がよりスケールの広さを感じさせてくれます。

 枯山水庭

日本庭園は鑑賞する側の視点を意識して作庭されますが、まさにこれを感じさせてくれるのが、館内の窓枠がそのまま額縁になった「生の額絵」です。窓の向こうの枯山水庭には、大小の植栽や石がバランスよく配置され、築山や芝生が美しい曲線を描き、そして手前のクスノキが遠近感を一層高めています。まるで、桃山時代後期に興った「琳派」を思わせます。私自身は、この光景を見て、昨年東京国立博物館の『桃山-天下人の100年』展へ行った時に見た、狩野永徳の《檜図屏風》や長谷川等伯の《楓図壁貼付》を思い出しました。


四季折々で表情が異なる生の額絵
(中央・下:画像提供:足立美術館 ※画像の転載・コピー禁止

足立美術館の創設者・足立全康(あだちぜんこう)は「庭園もまた一幅の絵画である」という言葉を遺したそうですが、まさにその言葉が目の前に体現されています。四季折々に表情が変わる生きた日本画のようです。美しい・・・。

ほかにも、床の間の壁をくり抜いてその先に見える庭を山水画のように見立てた「生の掛軸」、5月から6月にかけてツツジやサツキが彩りを添える「白砂青松庭」、喫茶室『大観』からも望むことができる「池庭」など、高い美意識のもとに整えられた庭園が続きます。

ツツジやサツキで彩られた白砂青松庭 画像提供:足立美術館 ※画像の転載・コピー禁止

そうそう驚いたのが、美術館は365日年中無休。常に落葉ひとつないように毎朝開館1時間前から、専属の庭師をはじめ職員総出でこの広大な庭の掃除がされるそう。雨の日も雪の日も必ず行われます。また、背後の自然を保つために借景の山々の一部を購入したり、年1回白砂を補充してこの白さを保ったり、別の敷地でスペアとして大小様々な赤松などの植栽を管理し、周りの木々と調和がとれなくなった際は植え替える作業を行っているそう。とてつもない手間をかけた徹底ぶりだからこそ、この美しさが保たれているのですね。庭園についての知識がなくとも、素直に美しいと思えます。庭師さん職員さんに感謝です。

 

さて、同館の近代日本画コレクションは主に本館2階で見られます。特に明治元年に茨城県水戸市に生まれた横山大観のコレクションは質量ともに充実しています。大観は、生涯の師として仰ぐ岡倉天心らと、新しい日本画の創造を目指して日本美術院を設立。そこで“空気”を描く工夫として生み出した無線描法は、当時の美術界からは日本画の伝統を破壊するものとして受け入れられず、「朦朧体(もうろうたい)」と呼ばれたり、またこの悪名などが影響して苦難の道をたどります。ですが、大正2年の天心の死を機に美術院を再興するなどし、日本画の大家として名声を得ました。

 横山大観「乾坤輝く」(昭和15年)足立美術館蔵 2021年3月1日~5月31日展示予定 
画像提供:足立美術館 ※画像の転載・コピー禁止

本館の横山大観特別展示室では、約120点を誇る横山大観のコレクションから四季のうつろいに合わせて年4回展示替えが行われ、常時約20点を展示。また、大観以外にも竹内栖鳳や上村松園、橋本関雪などの近代から現代の日本画のほか、2020年4月開館の「魯山人館」では、常時約120点の北大路魯山人の作品も鑑賞できます。喫茶室や茶室もあるので、庭園を見る時間以外も確保しておきましょう!

足立美術館 https://www.adachi-museum.or.jp/

春季特別展「没後50年 榊原紫峰 花鳥の美に魅せられた日本画家」開催 2021年3月1日~5月31日

「春の横山大観コレクション選」「京都の日本画家たち」併催

榊原紫峰「牡丹大和鵲」(昭和28年頃)足立美術館蔵 2021年3月1日~5月31日展示予定 
画像提供:足立美術館 ※画像の転載・コピー禁止

 

足立美術館と同じ島根県の玉造温泉にある「星野リゾート 界 出雲」の紹介記事はコチラ

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