あなたも「近代化遺産」萌え! by 関屋淳子

第25回 学び舎の記憶を継承するラグジュアリーホテル「ザ・ホテル青龍 京都清水」(京都市)

江戸から明治へ時代が移ると、国の近代化に重要な人材を育てるために、寺小屋から学校へと教育の場も変わりました。以前ご紹介した「明倫小学校」(https://www.tabikoi.com/sekiya20/)もそうですが、京都では64の小学校が開校し、番組小学校と呼ばれました。番組(町組)とは京都の町衆による自治組織で、番組に学校建設や運営がゆだねられたのです。まさにおらが学校、愛着のほどは計り知れませんね。

 

京都の町並みを一望する高台に昭和8年(1933)に移転新築された京都市立清水小学校も番組小学校のひとつ。背後に山が迫る高低差のある敷地を活かし、コの字形の校舎や中庭を有するスパニッシュスタイルの建築デザインです。モダンで気品ある地域のシンボル的小学校は平成22年度に閉校となりました。そしてこの学び舎の往時の佇まいや意匠の細部まで残し、一部を増築した形で生まれたのが「ザ・ホテル青龍 京都清水」です。コンセプトは記憶を刻み、未来へつなぐ。クラシカルな雰囲気と懐かしさ、温かさが調和するラグジュアリーホテルです。

まず明るく華やかなレセプションでチェックイン。ここはかつて管理作業員室だったといいます。館内を案内いただきながら客室へ。館内の階段の手すりには昔のいたずら書きがそのまま残され、客室を繋ぐ廊下は、子どもの頃に見慣れた風景がスタイリッシュに変貌。昭和初期の近代建築のエッセンスがそのまま落とし込まれ、今昔のデザインが融合しています。まさに歴史を継承するという意味がよくわかります。

 

客室は教室部分をコンバージョンした既存改修部客室と増築部客室があり、それぞれに魅力的です。増築部客室の「プレミアムツイン パゴダビュー」は、法観寺(八坂の塔)が目の前に! 驚きのロケーションです。

さらに宿泊客専用のゲストラウンジでは、デイタイム&カクテルタイムで軽食やドリンクが楽しめるという素敵な提供も。私は夕食前に立ち寄り、スパークリングワインとオードブルのアペリティフを楽しみました。

 

 夕食後ホテルに戻ると、あたりは静寂のただなか。光に浮かび上がる外観の美しいこと。80余年を経てもなお大切に愛される建築の姿は、心を揺さぶります。スクラップ&ビルドではない貴重な建物を残す、あるべき形を体現したホテルなのです。

 

ザ・ホテル青龍 京都清水 https://www.princehotels.co.jp/seiryu-kiyomizu/

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