「やさしい温泉」人、動物、地球にも! by 西村理恵

第6回 温泉パワーを惜しみなく使う「御宿ゑびす屋」で美食も湯心地も!(大分県・別府明礬温泉)

同経営「湯屋えびす」の露天風呂。別府市街や別府湾が望める眺めのいい高台にある

 大分の名湯、別府には主に8つの温泉地が点在しています。別府湾を見下ろす高台に位置しているのが明礬(みょうばん)温泉。ここでは300年以上前から温泉蒸気を利用して明礬を採取してきました。この手法は、現在、湯の花づくりに受け継がれており、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

明礬温泉は、昔から温泉発の自然エネルギーを活用してきた先進的な温泉地です。今回紹介する「御宿ゑびす屋」でも、温泉蒸気を上手に活用して宿を運営しています。ゑびす屋は明礬で約150年続いてきた老舗宿ですが、2016年の熊本地震で本館建物が傾き、2019年1月に本館を新築リニューアルしました。その際、女将の本田麻也さんは、「自然で健康的な食を提供したい」と、地獄釜を設置。地獄釜とは温泉蒸気を利用した別府の伝統的な調理場です。ゑびす屋の敷地は自然エネルギーに満ちた場所で、数カ所から湯けむりがあがっています。そうした温泉蒸気を引き入れ、ウッドテラスの一角に8基の地獄釜が新設されました。

女将の本田麻也さんと看板ねこのライムちゃん。地獄釜が設置されたウッドテラスにて

夕食は地獄釜を使って調理します。大きなセイロの中に、女将が直接仕入れてくる近郊野菜を中心に、シュウマイやはんぺん、手羽先、真鯛、ちまきなど35種類ほどの食材が色合いも美しく並べられています。スタッフさんが、「これから釜に入れますね」と地獄釜のフタをあけると、一気に湯気が噴き出します。待つこと10分、地獄蒸し料理の完成です。まずはカボチャからひと口。ほっくりとしていて味が深く、驚くほどおいしい! 朝から地獄釜で煮込んでいた鶏のスープも、臭みのない澄んだ味わい。シンプルながら素材ひとつひとつの美味しさがしっかりと感じらます。「夕食はすべて地獄釜で作っているので、ガスは一切使ってないんですよ」と女将さん。あらかじめ希望しておけば、お肉は少なめとか魚は苦手とか食材の調整もしてくれます。

 

取材時の地獄蒸し料理。菊芋や赤カブ、レンコンにインゲン、長時間別途で調理した手羽肉などなど。スタッフさんが調理をしてくれるのでタイミングもバッチリ

 

食事をいただくダイニングの床も温泉床暖房でポカポカ。本館客室にも温風機と呼ばれる温泉暖房器具が取り付けられていて、暖房のほとんどは温泉パワーでまかなわれています。とてもエコロジカルですが、こだわってそうしたワケではなく、昔から行われてきたやり方の中から、「これはイイな」と思うものを取り入れたら、結果的にエコロジカルになったという感じです。だからでしょうか、無理がなく自然体。ゑびす屋は温泉地が持つナチュラルなエネルギーの心地よさを感じられる場所です。

 温風機が設置された本館客室

 

看板ねこのライムちゃんも温泉パワーで充電中

 

温泉蒸気に自家源泉の単純温泉をあてた箱蒸しも体験できる。
サウナが苦手な人にもオススメ。あたたまります

 

御宿ゑびす屋 電話:0977-66-0338 住所:大分県別府市明礬4組

https://www.e-ebisu.biz

 

 

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