「やさしい温泉」人、動物、地球にも! by 西村理恵

第30回 普通の宿とはちょっと違う、「海癒(かいゆ)」での滞在 前編(高知県・土佐清水市)

大岐の浜。左手奥の白い建物が海癒

海癒は、ひとことでは言いあらわせない宿です。高知県の西端近く、土佐くろしお鉄道中村駅から足摺岬へと向かう途中、右手側の高台に、白い7階建てのマンション風の建物と、温泉のある2階建ての建物が並ぶように立っています。近くには、大岐の浜という白砂ビーチが広がっていて、冬でもサーフィンを楽しむ人たちがやって来ます。

電話番号を公開していないため、予約はすべてメールで。返信は最初からファーストネーム。親戚や友達からメールを受け取っているような感覚です。料金もだいたい決まっていますが、長期滞在したり、自分ができる仕事を手伝うことでおそらく変わってくるのだろうと思われます。客室もすべて異なり、余裕があればいくつかの部屋を見てまわり「ここにします!」と決める感じです。なので初めての人は、できるだけ15時までに到着し、できるだけ2泊以上して欲しいとのこと。ですが、これも絶対ではなく、メールでやりとりしながら決めていきます。(状況によっては、ここしか空いてない、1泊でということもあるそうです)

光が降り注ぐマンション棟の客室一例。全室ミニキッチン、ユニットバス&トイレ付き

 温泉棟二階の部屋。値段的にはマンション棟よりお高い客室になります

関東からそう近くもないこの宿に、どうしても行きたい!と思った理由は2つ。高知ではかなり貴重な循環なし・塩素投入なしの温泉に入れること。そして掃除や洗濯をする時の洗剤類を重曹や純石けんにしており、「化学物質過敏症の人でも泊まれる」というクチコミを見たことです。

あらかじめメールで届いた内容を見ると、タオルや歯ブラシ、寝間着は持参、と書かれています。東北の震災以来「勝手にエコ泊」と名付けてこれらを持参して宿泊してきたので、私にとってはまったくの無問題。逆にふんわりとした厚手のバスタオルを1泊で何枚も使っている様子を見る方がちょっと辛かったりします。

そのほか他の宿とは異なるところがいくつかあります。泊まったあとは簡単な清掃を自分で行うことや、3階以上の客室はカーテンがなく、朝日が目覚まし時計がわりになること。客室にゴミ箱はなく、廊下の電気はソーラーパネルの感知式。そして何より、オーナーご家族との距離が近くて、色んなお喋りが楽しめること。

オーナーは英語が堪能な、みつ&たえさんご夫婦。現在は娘のまりえちゃん&かずくんご夫婦も加わり、ご家族+保護犬1匹+猫2匹で切り盛りしています。春にはヨーロッパからのお遍路さんが多く、夏は長期滞在する常連さんが多いのだそうです。ペットと泊まれる部屋もあれば、年間30泊×20年間、優先的に泊まれる準村民という泊まり方も設けています。長期滞在にも対応できるよう、各部屋広々としていてミニキッチンやバス&トイレが付いています。

地元や自家栽培野菜、地魚を使った大皿料理の数々

 マンション棟一階で食事。今回は薪ストーブを囲んでの夕食に。
人が多い時には奥の広いスペースでいただきます

そしてこの宿の一番の特徴とも言えるのがファミリーディナー。基本は素泊まりですが、できれば1泊目は夕食を頼むのがオススメです(ただし混雑具合などにより食べられないこともあり)。ご家族やほかのゲストと同じテーブルを囲んでワイワイと喋りながら食事をします。取材時のメニューは、地野菜のサラダ、鶏肉のクリーム煮、カツオなど朝どれのお魚2種類、おいしいパンに雑穀ゴハン、黒豆、野菜炒めやサツマイモを練り込んだお餅などなど。大皿から自分で取り分けるビュッフェスタイルです。ご家族が毎日食べているお料理なので、食べやすくておいしい! 家族の食卓に招かれたような気分になってきます。

食事をしながら、自分のこと、あるいはご夫婦の馴れそめなど、個人的な話もたくさん喋り、たくさん聞かせていただきました。そして締めくくりに、「今日のお題は〜?」ということで、一人ずつ短く喋ります。お出かけした時のお題は「温泉とは?」。全員が温泉好きだったのですごく楽しい時間でした。

海癒
電話:非公開 住所:高知県土佐清水市大岐の浜2777-12

https://www.kaiyu-in.com

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