京都には深い井戸が幾つもある by 小林禎弘

第8回 野村財閥や松下幸之助…著名人に守られてきた南禅寺界隈庭園群(京都市)

南禅寺庭園群のいわばメイントリート

何度も登場していますが、南禅寺界隈庭園群とは、南禅寺の北西、永観堂の西で、白川通までの一帯に広がる邸宅群のことです。その中の野村別邸(碧雲荘)に、行政の取材で入る機会がありました。野村別邸は野村證券などの野村財閥の創始者野村徳七氏が、昭和3年まで11年間かけて完成させた別荘で、もちろん庭園は小川治兵衛が手掛けています。

取材であっても撮影禁止でしたので、残念ながら写真はありませんが、どこをどう撮影しても絵になると思いました。敷地内から見える外の風景は、一切の人工物が見えませんでした。屋敷の壁面には野村徳七氏が愛した源氏香の図がデザイン的に装飾されていたのが印象的でした。

野村別邸の外観

右に清流亭の桜、左に野村別邸の松を望む、下を疏水の水が流れる

松下幸之助氏が昭和36年に購入し、パナソニックが管理しているのが松下美術苑真々庵です。以前、政界の超有名人と超有名学者の対談場所になり、その撮影で入ったことがあります。庭園は小川治兵衛作の部分を半分残しつつも幸之助氏が改造したので、全く趣の違う庭が対峙しております。

「課長島耕作」に北鎌倉の別荘というのが度々登場しますが、庭や屋敷のディテールが真々庵そっくりに描かれています。弘兼憲史氏が真々庵をモデルにしているかどうか、まあ勝手な思い込みかもしれませんが。

南禅寺に一番近い庭園に大力邸というのがあります。過去、料亭やカフェが入りましたが、現在は北新地の大人気寿司店「さえ㐂」と「草川茶屋」が入っています。庭園のオーナーは某大手ドラッグストアチェーンですが、購入したときは荒れ果てていたそうです。

特に戦後はGHQが摂取していたのですが、双龍庭園と名付けられた名庭を壊してなんとプールにしていたそうです!そこで依頼を受けた11代小川治兵衛氏が新たな「双龍庭園」として蘇らせました。

大力邸の双竜庭園 公開している数少ない庭園の一つ

大力邸の門

実業家の前澤友作さんが南禅寺界隈庭園群の一軒を購入した記事がありましたが、場所の見当はあります。こうやって引き継がれていくのですね?

各庭園を巡る疏水の水

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