京都には深い井戸が幾つもある by 小林禎弘

第7回 琵琶湖疏水の水は巡るよ、どこまでも(京都)

南禅寺界隈庭園群について深堀り考察してみます。

庭園群に欠かせないものに、琵琶湖疏水分線があります。蹴上に到着した疏水の本流は発電のための導水管へ、その手前で別れた分線は北へ向かいます。京都盆地は北高南低で、九条通の東寺の塔のてっぺんと、北大路通の地面が同じ高さと言われています。蹴上到着点から、当時の土木技術の粋を使って疏水分線は、北から南へ流れる他の河川のなか、唯一勾配に逆らって東山沿いを北に向かって流れます。有名な南禅寺境内の水路閣や哲学の道を経て、いくつかの川をクロスして北大路まで流れて西へ向かいます。

哲学の道

水路閣は、個人的には景観破壊の最たるものだと思いますが、当時はそれでもレンガ造りにするなど、かなり景観に考慮されたそうです。ひょっとして、あの上を水が流れているとは知らずに訪れている人もいるかも⁈

南禅寺水路閣

水路閣の上を流れる疏水分線

水路閣の脚部、様々な撮影で使われてきました

水路閣を過ぎたところに、分線から本流へ流れ落ちる扇ダム放水路があり、その周りの庭園には網の目のように疏水の水が巡っています。

扇ダム放水路 

以前京都市水道局による、南禅寺界隈庭園群についての講演会があり、その説明によると、庭園を巡る水はいくつかのグループに分けられていています。

分線からまず1組Aという邸が取水し庭園を巡ったあと1組B邸へ流れ、C邸D邸…とめぐって最後は疏水本流に帰っていくという仕組みだそうです。

水道代のようなものは徴収しないのか質問したところ、疏水使用料という名目のものを、最初に取水する邸にのみ請求するそうです。金額がいくらかは確かめられませんでしたが、大した額ではないそうです。それを各邸と均等割りしたりしなかったりは組によるそうです。

庭園から次の庭園へ水を流すパイプ

疏水使用権とも呼ぶべきものは、今では既得権なので、一度閉栓してしまうと二度と開栓できないそうです。取水の邸が閉栓したら、つながっている邸には全部水が行かなくなってしまいます。何とか守ってもらいたいものです。

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