第46回 那須の自然を活かして土地の恵みを五感で感じる旅へ「星野リゾート リゾナーレ 那須」(栃木県・那須温泉)

「大人のためのファミリーリゾート」がテーマのリゾナーレブランドに、2019年11月1日、新しく「星野リゾート リゾナーレ那須」が仲間入りしました。那須といえば、温泉や美術館、レジャー施設も多く、東京駅から新幹線で約1時間という近さも魅力の観光地です。

那須岳を望む広大な樹林の中に施設が点在しています

「リゾナーレ那須」のコンセプトは、“アグリツーリズモリゾート”。“アグリツーリズモ”とは、イタリア語の農業「アグリクルトゥーラ」と観光「ツーリズモ」を組みわせた造語で、都会を離れ、旅先での農業体験や自然体験、文化交流を楽しむ観光のこと。その土地ならではの生産活動に触れる体験と、リゾートホテルでの食事やアクティビティを組み合わせた、新しいリゾートの形です。さっそく那須らしい滞在を体験しに、多田が家族で伺ってきました。

ゲストが集う「POKO POKO」でアクティビティを楽しもう

栃木県北部の那須岳の山麓に広がる約42,000坪の敷地には、宿泊棟、アクティビティ施設「POKO POKO」、農園「アグリガーデン」、それにメインダイニングの「OTTO SETTE NASU」とビュッフェレストランの「SHAKI SHAKI」の2つのレストランを構えます。滞在中、何か体験をしてみたいとか、お茶がしたいとか、ちょっとした時間を過ごすのに最適なのが「POKO POKO」です。我が家もチェックインを済ませて、まずは向かってみました。

本館エントランスから橋を渡っていくと、円錐形の屋根が並ぶ特徴的な建物が見えてきます。入り口には薪が燃えるファイヤプレイスがあり、火を囲んでソファベットでくつろぐ人の姿も見られます。那須の丘陵をイメージしたという屋根は中に入るとずっと高く見え、木組みのリズミカルなデザインがワクワク感を誘います。
ここにはBooks&Cafeのほかに、高さ6.5mのネット遊具とボールプールからなる「プレイエリア」、託児施設の「ナーサリー」があります。また、季節にあわせてできるアクティビティの基地にもなっており、仕切りを兼ねたシェルフに説明が掲示されています。

ちょうど小腹が空いてきたので、迷わず「焼き芋ミッション」をチョイス。手渡された麻袋いっぱいに枯れ葉を集めてくると、サツマイモと交換してくれるというもの。これをファイヤプレイスで焼いておやつにします。
「POKOPOKO」から宿泊棟別館にかけては蛇行した道が巡らされ、モミジやコナラ、ミズナラの葉がたくさん落ちています。葉の形や色を見ながら集めることは、子供にとっても良い刺激になりそう。

焼き芋の焼き上がりを待つ間、息子はネット遊具へ。高さのあるネット遊具と体を包み込んでしまうほどのボールプールは魅惑のゾーン。息子もサルのように(笑)ネットと戯れていました。
夫と私はコーヒーを飲みながら、「落ち葉の彩りコレクション」に挑戦。庭で色とりどりの落ち葉を拾ってきて、ノリで台紙に貼り付けていきます。普段工作などまるでしないのに、夫婦でこんな時間を過ごせるなんて!互いの作品を褒めあいながら、ゆったりとした時を楽しみました。
30〜40分ほどで焼き芋が完成! 焚き火の香ばしい匂いと、ホクホクの食感で、焼き芋屋さんに負けない美味しさです。

ほかにも毎朝、「朝の森さんぽ」も実施しています。ガイドとともに施設内を散策し、森の豊かさに触れます。我が家も参加しましたが、落葉広葉樹林や澄んだ小川のほとりを歩き、簡単なゲームなどをしながら、植生や森に住まう生きものについて教わります。自然が大好きなうちの息子は大満足のひと時。宿泊棟の前の田んぼでは、冬眠直前のカエルを捕まえたり、カブトムシやクワガタが捕まえられるスポットをチェックしたり。帰る前から夏の再訪を心に誓っていました。

オープンからまだ間がないだけに、アクティビティの数は少なかったですが、ゲストが入れ替わり立ち替わり訪れては上手に施設を利用しており、早くも中心的役割を果たしていました。冬になれば雪遊びができるアクティビティが始まるそうですし、那須の森が緑に包まれ、子どもたちの声が響く夏になれば、きっともっと那須の自然を活かしたアクティビティやサービスが増えるはず。これからがとっても楽しみです。

那須の自然に溶け込むような客室と大浴場

客室は、本館と別館あわせて14タイプ43室があり、いずれの部屋からも四季の移り変わりが楽しめる作りになっています。オープンに際しリノベーションし、デザインはリゾナーレ八ヶ岳と熱海も手がけている「クライン ダイサム アーキテクツ(KDa)」が設計しています。
今回利用したのは、1階がリビング、2階がベッドルームのデラックスメゾネット(62平米、定員4名)。バーテーブルやミニキッチン、バスルームも備えた戸建てのような作りで、別荘気分が味わえます。グリーンを基調とし、大きな窓からは田んぼと森の眺望が開け、奥行きのある景色が見事です。他に、5名以上が泊まれるタイプや犬と一緒に泊まれるタイプなどもあるので、旅の目的に応じて選ぶことができます。

大浴場は本館の1階にあリます。手を伸ばせば木々に触れられそうな外湯と、シックな雰囲気の内湯の2種。しっとりと肌に優しい温泉なので、世代を問わず楽しめます。

野菜の美味しさに出会えるビュッフェレストラン「SHAKI SHAKI」

食事はアグリツーリズモリゾートの一翼を担う重要な要素。2つのレストランそれぞれに、那須野菜を取り入れたイタリア料理を提供しています。私たちが利用したのは、ビュッフェレストランの「SHAKI SHAKI」。日替わりのメインディッシュとともに、イタリアの郷土料理をベースにしたビュッフェ料理が味わえます。

席に着くと供されるのが、那須野菜を交えたロースト野菜。ニンジンやタマネギ、ジャガイモなどをローストしたものに、岩塩・オリーブオイル・ブルーチーズの入ったチーズソースを合わせます。まず、野菜の美味しさをシンプルに味わってほしいという思いを込めた一品とのこと。ゆくゆくは、農園「アグリガーデン」で採れたものも提供していくそうです。ゲスト自らが収穫した野菜が、夕食に並んだら楽しいでしょうね。

続いてメインディッシュのローストビーフ。タマネギをふんだんに使った甘味のあるソースと、クリーム状になった西洋ワサビが添えられています。ローストビーフに目がない息子は、この世の天国のような顔でリピートしまくっておりました…。これだけでも十分なくらいですが、ビュッフェにはサラダや前菜が取り揃えてあります。なかでも美味しさに驚いたのが、シーザーサラダのロメインレタス。歯ごたえがよくみずみずしくて味わいもしっかり。チーズやベーコンが脇役になるなんてびっくりです。野菜の美味しさをしっかりと感じられて、大満足でした。

朝食は、野菜の食感を楽しむサラダや16種ものパン、牧場直送の濃厚な牛乳などが並びます。特にサラダは、切り方や調理法を変えたものが数種あり、生野菜好きの我が家にぴったり。特に私はスライスサラダのズッキーニに恋をしました。くるみのトッピングにレモンドレッシングをかけたら、いくらでも食べ続けられそうな美味しさ。「今日はこれから農作業だから」なんて理由をつけながら、朝から食べ過ぎてしまいました。

農作業スケジュールにのっとって、その日やるべき作業を体験

いよいよ今回の滞在のメインイベントともいうべき「ファーマーズレッスン」の時間です。アグリツーリズモリゾートが目指すのは、農業の本当のおもしろさを知ること。農業体験というと真っ先に思い浮かぶのが収穫体験ですが、農家さん曰く、花形作業のように思われがちな収穫は実は一番つまらないのだそう。むしろ「土作り、種まき、実のなる様子など、日々の作業にこそおもしろみがある」と。農家さんがそう断言するならば、それを体験してもらおうというのが、「ファーマーズレッスン」の醍醐味です。確かに幼稚園や小学校でも芋掘りなどの課外学習があり、子供達も意外と収穫体験はしたことがあるのです。普通じゃできない体験をしてこそ、旅の価値があると言えます。

農園「アグリガーデン」には畑と温室のグリーンハウスがあり、地元農家さんのアドバイスをもとに有機・無農薬農法で、野菜30種とハーブ100種を育てています。将来的には年間80種の野菜生産を目指しており、レストランへの安定供給を目指しています。
さて、本日の私たちの作業は「サラダ春菊の種まき」とのこと。長靴に履き替えて軍手をして、出陣です。支柱を使って畝を作り、そこにパラパラとタネをまき、そっと土をかけます。やってみたらあっという間の作業ではありますが、「数週間後に泊まるゲストのサラダの上にちょこっと乗るかもしれない」と聞くと熱がこもります。誰かが誰かを想って働くことは、農業だけに留まらない大切なことだけに、実に深いなぁとしみじみ。そんな想いも子供が学んでくれたら、親としては嬉しい限りです。

体験の後は試食タイム。一足先に育ったサラダ春菊を食べさせてくれました。苦味が少なく、しかし香りは豊かでみずみずしい。塩胡椒をしてオリーブオイルをかけたら、立派なサラダです。あんまり美味しいので、収穫してすぐにサラダにして食べる「農園サラダランチ」なんて体験があったらいいのに、と妄想。他にも間引いた根菜などをピクルスやスティックサラダにして販売してくれたら、部屋でゆっくり晩酌できるなぁ、なんて夢が広がります。


自分で畑を持つのは難しいけれど、ここで様々な体験を積んでいけば、いずれはファーマーになることができそうです。

向かって左のグリーンハウスはハーブガーデンになっていて、ここでもゆくゆくはオリジナルアロマオイル作りやガーランド作りを開催する予定だと言います。今は自由に「オリジナルハーブティ作り」や「農家の手仕事 ヒンメリ作り」の体験を楽しむことができます。
「オリジナルハーブティ作り」はスペアミント・レモングラス・ハイビスカス・ルイボスの4種を用意。自分でブレンドするとなると、夫も息子も進んでお茶を入れ始め、いつもお茶を入れてばかりの私もゆっくり自分好みのお茶を楽しめました。


フィンランドの伝統装飾である「ヒンメリ作り」にも挑戦してみました。麦わらに糸を通したクリスマスの装飾品で、豊作を祈願するものだそうです。モノを作るのは無心になれて、特に大人には脳の良いリフレッシュに。幾何学的な形がおもしろく、北欧風のスペースに飾られた様子を見ると、とてもおしゃれな雰囲気です。クリスマスに向けて、手作りのお土産ができました。

手作りでなお美味しい!石窯焼きのピッツァ作り体験

あっという間の1泊2日。チェックアウトが12:00なので、施設内でゆっくり遊ぶことができるのも魅力です。
最後のアクティビティは、「POKO POKO」での「ピッツァ作り」。ランチメニューとしても本格的なイタリアンピッツァを提供していますが、予約すれば自分たちで作って食べることができるんです。

作るのは、季節の野菜をトッピングする「オルトラーナ」というピッツァ。生地を伸ばして広げ、色とりどりの野菜とモッツァレラチーズを乗せていきます。焼き上げは、本場で修行してきたスタッフ指導のもと練習を積んだピッツァイオーロ(ピザを焼く人)が焼いてくれるので、失敗知らず。5分ほどで焼きあがるので待ち時間も短く、子連れでもトライしやすいアクティビティです。


何と言っても自分で作れば美味しさは格別。カリフラワーや紅芯大根など、ピザで使うとは思わなかった野菜も、しっかりと生地と馴染み歯ごたえが楽しく、とってもボーノ! 家でもやってみようかなと思いました。

    *****

「リゾナーレ那須」の前身は、別のリゾートホテルでした。それゆえオープン前はその時代からのファンをはじめとした、大人の方の利用が多いと予想していたのだそう。
「それが想定外にファミリーのご利用が多く、びっくりしています。他のリゾナーレ施設をご愛用いただいている方が多く、“ここではどんな体験ができるんですか?”とお尋ねになるお客様も多く、いかにリゾナーレブランドがファミリー層に愛されているかを再認識しました」
と話すのは広報のスタッフ。冬の間の堆肥づくりなどの仕込み期間を経て、来春からはアグリツーリズモのコンテンツも増えて、さらには広大な敷地を活かしたファミリー向けの川や森の遊びの充実がなされていくことでしょう。季節を変えて、成長した「リゾナーレ那須」をまた体験したい! そう思わせてくれる滞在でした。

【星野リゾート リゾナーレ那須】
住  所 〒325-0303栃木県那須郡那須町高久乙道下2301
電  話 0570-073-055(リゾナーレ予約センター)
アクセス 那須塩原駅から送迎バスで約40分、那須I.C.から車で約20分
料  金 1泊2名1室の1名あたり21,000円〜(税別、朝食付)
     チェックイン15:00 チェックアウト12:00
U  R  L  https://risonare.com/nasu/

(取材・文/多田みのり)

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ