第58回 琉球文化に囲まれて“はじめての沖縄”を知る「星のや沖縄」前編(沖縄県・読谷村)

20207月にオープンした「星のや」ブランド8施設目の「星のや沖縄」。「星のや竹富島」とはまた異なる沖縄らしい魅力を放っています。そう、この施設の沖縄らしさは、これまであまり発信されてこなかった文化や伝統に焦点を当てています。太陽と海がギラギラ輝く夏ではなく、冬にこそ訪ねてみたい場所。前編ではデザインやアクティビティでその魅力をご紹介します。

海からの客室棟(星野リゾート提供)

パッキングに失敗した私を待っていたインフィニティ―プール

那覇空港から車で約1時間、沖縄本島中部の読谷村(よみたんそん)、東シナ海に面する美しい西海岸に沿うように立つ「星のや沖縄」。来客者の前に立ちはだかるのはグスクウォールという約1㎞続く壁……。グスクとは聖域や居城のことで、石や石壁で囲った場所を指します。海とグスクウォールに囲まれた敷地を“グスクの居館”とするのがこの施設のランドスケープデザイン。では門をくぐりましょう。

グスクウォールはコンクリート製で高さ4.5mなのですが、威圧感は感じられません。それは壁にあいた小さな穴が伝統的な織物・読谷村花織(ゆんたんざはなうい)の模様になっているから。光が差し込むと模様が浮き出て、特に夜は美しい。

約1㎞続くグスクウォール

グスクウォールをくぐると、グアバやアセロラなどが繁る畑と庭(まだ木は小さいですが)、オーシャンフロントの客室、そして海と繋がるようなインフィニティ―プール&南国感あふれる集いの館! 

ここで愕然とする私。そう、冬とはいえ沖縄に行くことはわかっていたのに、慣れとは恐ろしいものでいつものように取材旅行のパッキングで出かけてきてしまい、水着はもちろん、軽やかなワンピースさえも入っていない。プールは24時間利用でき、冬は加温され、泳がなくても水深10㎝の浅瀬エリアではチェアに腰掛け、足湯のように水と戯れることもできるのに。ああ、デニムの裾を捲るだけではリゾート気分が台無しだ……

集いの館からプールを眺める

暮れなずむころ、幻想的な雰囲気に

伝統工芸品に包まれる客室で時間を忘れる滞在

星野リゾートでは最高基準のコロナ対策宣言をしているだけあり、3密回避で安心して過ごせるのがなにより。チェックインは客室で行ないますが、その前にレセプションで検温チェックなど。このレセプションは深海をイメージ。まぶしい太陽が照り付ける日常から非日常へ誘う空間です。ここから始まる滞在が、穏やかな時間になることを予感させます。

深海をイメージしたレセプション

客室は定員2名~4名の4タイプ。もっともコンパクトな客室でも64㎡の広さがあり、もちろん海は目の前! 窓を開け放てば潮風が吹き抜けます。

フゥシの客室。掘り炬燵式のリビングでまったり

渡された鍵には房指輪をモチーフしたキーホルダーが付いています。房指輪とは琉球王朝時代の金細工の指輪で、婚礼が決まった娘に親が贈るお祝い品。指輪には柘榴や扇、桃、亀など縁起の良い7つのデザインがあしらわれています。

鍵はこの房指輪がモチーフ

ベッドルームには色鮮やかな琉球紅型の壁紙、備品にはやちむん(沖縄の焼き物)や読谷村花織のコースターなど。どれもが沖縄の伝統と文化を感じさせるものばかり。私は読谷村花織がとても気に入り、花織会館でテーブルセンターを購入。こういう出会いって、本当に嬉しい。

目に飛び込む琉球紅型

ショップでも購入できる読谷村花織

もうひとつ、スタッフの制服(モデルは松原未來さん)もとても素敵なのです。琉球王国で礼装の時に着用したドゥジン(胴衣)とカカン(スカートっぽいもの)をデザインしたもので、沖縄感を演出するセンスはさすがです。

 

宿から車で10分ほどで読谷村の歴史や文化にもっと触れることができる場所があります。ぜひ周辺散策をしてみてください。

  • 座間味城跡

「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産に登録されているグスクです。15世紀初頭、築城の名人といわれた護佐丸が築城。開放的な空間に美しい曲線を描く城壁やアーチの石門などが残っています。

  • やちむんの里

ぽってりとした厚みがあり、自然を題材にしたおおらかな絵付けが特徴の沖縄の伝統的な焼き物。19の工房が並び、2つの共同売店があります。きっとお気に入りが見つかることでしょう。

 

  • 花織会館(読谷村花織事業協同組合)

琉球の大交易時代に確立され、約600年の歴史を誇る読谷村花織を復活。ネクタイやテーブルセンター、名刺入れなどの作品の展示、購入ができ、「星のや沖縄」のアクティビティで織物体験ができます。

文化をもっと深堀できる多彩なアクティビティ

チェックインを済ませたら、道場へ行きましょう。15時~1630分、ウェルカムドリンクならぬ、ウェルカム「ぶくぶく茶」(無料)がいただけます。

古くからから沖縄で親しまれているお茶で、大きなテリハボクの木製の鉢と専用の茶筅を使い、煎り米を煮出した湯1に対し、さんぴん茶2を加えて泡立てます。沖縄独特の硬水でないとうまく泡立たないとか。ぶくぶく茶以外では富山ではバタバタ茶、島根ではぼてぼて茶という振り茶があり、仕事の合間に楽しんだお茶らしい。いただき方はまず泡をがぶり、お茶をすすり、そして最後に泡が残らないように上手に飲んでみてください。ジャスミンの香り豊かです。

ブクブク泡立て中(東南アジアではありません笑)

1830分からは集いの館で「宵の座」(無料)。琉球舞踊や音楽を楽しめます。まるで時間が止まったかのような静けさのなかで、独特の音階と節回し、美しく流れる踊りが披露されます。世俗を忘れる心地良いひととき。

集いの館で開催の「宵の座」

さて道場は手習いの場で、琉球舞踊や三線、琉球空手を体験(有料・要予約)することができます。沖縄は空手発祥の地ということで、レジェンドの新庄先生から1時間、学びます。

空手はオリンピックの正式種目になったことから注目を集めていますが、沖縄では小学校の授業でもあるそうで、初心者向けの普及型1と2をみっちり。基本の突き、蹴り、受けを習い、前後左右に動きます。先生と約束組手をさせていただくと、動きのコツがわかってきましたが、すでに汗だく。最後の演武で80点以上が合格といわれましたが、75点という微妙な点数……難しい。これって、けっこう本格的ですよね(笑)。

海に向かって気合を入れる!

もうひとつ、体験したのが「朝凪よんなー乗馬」です。読谷村にはかつて琉球王府の広大な馬場があったということで、目の前の浜辺を乗馬散歩。朝の静かな海を見ながら、馬の背に揺られる優雅なひと時でした。

浜辺の乗馬は初体験

 

沖縄といえば海。もちろん海も最高ですが、知らなかった文化に触れる旅も素敵なものです。

後編では独創的な食の世界と、「星野リゾート バンタカフェ」をご紹介します。

 <星のや沖縄>

沖縄県中頭郡読谷村儀間474

0570-073-066(星のや総合予約)

100室 料1109000円~(1室あたり、税・サービス料別、食事なし)

 

取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)

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