世界のファインダイニング by 江藤詩文

第66回 ついに誕生! 驚き満載の体験型デスティネーションレストラン「Amisfield」(ニュージーランド・クイーンズタウン)

▲セントラル・オタゴを代表するワイナリー「Amisfield」

これまで“美食界のミステリー”なんて言われていたニュージーランド。山と海と湖を持つ島国で、綺麗な水を豊かにたたえたサステナビリティ先進国。オーガニックな食材に恵まれ、居心地がいいレストランやカフェ、ファストフード、アイスクリームショップと、それぞれの街ごとにおいしい飲食店がひしめいています。それなのになかったのです。世界の最先端できらめく“キャラの濃い”ファインダイニングが。

▲ニュージーランド南島の海の生態系を表現した料理はまるでモダンアート

そんな穏やかでのんびりしたニュージーランドのフードシーンに、ついに時代を変えるスターが誕生しました。それが「Amisfield(アミスフィールド)」。南島クイーンズランドの中心から車で15分、ヘイズ湖のほとりに佇む石造りのレストランです。

1988年に創業した同名のワイナリーの付属施設だったレストランを変えたのが、2012年からチームを率いるエグゼクティブシェフのVaughan Mabee(ヴォーン・マビー)さん。地元セントラル・オタゴの出身で、世界で知見を深めるためにサンセバスチャンの「Martin Berasategui」やコペンハーゲンの「noma」などヨーロッパで研鑽を積みました。

▲右下がヴォーン・マビーさん(とわたし)。
レストランでこの画面を見せると「大ウェルカム」してもらえる…かも!?

グローバル化のなか、世界最高峰のシェフたちの視点にならってセントラル・オタゴを俯瞰してみると、そこは食材の宝庫だったそう。土地の気候風土や食文化を解釈するのにもっとも影響を受けたひとりが、あの”ペルーの生態系の多様性を高度で表現する”料理で世界をあっと言わせた「Central」のVirgilio Martinezさんとか。うんうん、ヴォーンさんの料理を見るとそれがよくわかるよ…(そんなVirgilio Martinezさんの国外唯一の支店「MAZ」はこちらをどうぞ *リンクお願いします https://www.tabikoi.com/eto40/)。

中央のアンモナイト風が可食部。
自然を見る目がない都会者のわたしは自力で見つけることができませんでした(涙)

ヴォーンさん自身が地元をくまなく歩き狩猟・採集、その食材が発する、ひと筋縄ではいかなそうな野性味。それを郊外ならではのスペイシーな空間を生かして、ゲストを移動させながら洗練された極上の体験に高めていくプレゼンテーション。エンタテインメント性のある劇場型ファインダイニングとしてはニュージーランドいち、というかオセアニアのトップだとわたしは思う。

お箸が出たり、植木鉢ごと運ばれてきたり、暗くなったテラスで薪火調理を眺めたり。
3時間半の演出はとにかく楽しい

2025年6月に開催された「世界のベストレストラン50」では99位に初登場。それに先立って2024年11月に発表されたシェフの国際的ランキング「The Best Chef 2024」では「アミスフィールド」がダイニング・エクスペリエンス賞を、ヴォーンさんは最高ランクの3ナイフに輝きました。

ワイルドとエレガントが共存しているのがヴォーンさんの個性。
ネタバレですがこれは角の部分がデザートになっています

イケイケなテンションはチームにも満ちていて、ノっている勢いを感じる今の「アミスフィールド」。おまけに親日家が多いニュージーランド人の中でも、来日経験のあるヴォーンさんはかなり日本好き。日本人ゲストは「大ウェルカム」だそうです。

日本からニュージーランド航空の直行便が飛んでいるにも関わらず、世界を食べ歩いているのにニュージーランドはまだというフーディーのみなさん、お待たせしました。今がまさに行きどき!です。

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