世界のファインダイニング by 江藤詩文

第57回 都会で表現する進化系ローカルガストロノミー「Marsan – Hélène Darroze マルサン -エレーヌ・ダローズ」(フランス・パリ)


▲ランド県で育てられたダックのフォアグラは自慢のひと皿

「おすすめのレストランはどこ?」

私の経験上もっとも多くそう問われる世界3大都市は東京・香港そしてパリ。お気持ちわかります…。ファインダイニングに限っても、パリにはフレンチだけでなく世界各国の料理を楽しめる素敵なレストランがひしめいていますから。

       ▲この日の私のベストディッシュは羊のチーズのアニョロッティ

そんなパリで今回目指したのが「Marsan - Hélène Darroze マルサン -エレーヌ・ダローズ」。オーナーシェフのHélène Darroze エレーヌ・ダローズさんが手がける、カントリーサイドのエッセンスを感じる軽やかなフレンチのファインダイニングで、現在「ミシュランガイド」の二つ星。エレーヌさんはロンドンの老舗ホテル「The Connaught ザ・コノート」内のダイニング「エレーヌ・ダローズ at ザ・コノート」もプロデュースしていて、こちらは「ミシュランガイド」の三つ星。2015年の「The World’s 50 Best Restaurants」では世界最優秀女性シェフ賞に選出されています。

         ▲料理もデザートも主役となる食材のおいしさが伝わりやすい

女性が活躍しにくいと言われるレストラン業界で、早くから自身の名前で仕事をして高い評価を受けてきたエレーヌさん。彼女はまた、今トレンドになった「自身のルーツに立ち返り地方の魅力を発見する」というムーブメントにいち早く取り組んだ料理人のひとりでもあります。パリで既に成功していた彼女が2019年に新たに店名に冠した「マルサン」は、フランス南西部ランド県にある彼女が生まれ育った街のこと。

          ▲ダイニングのほかシェフズテーブルもあります

「マルサンで続く料理人の家の4代目として生まれた私にとってマルサンの食はDNAの一部。フランス南西部にはすばらしい食材がたくさんあります。世界中からパリを訪れるゲストはそんな食材との出会いを喜んでくださいます。一方、地方の魅力をパリから広く発信することで地元の生産者を応援することもできると思っています」とエレーヌさん。

         ▲ハーブをその場で切るなどライブ感のあるプレゼンテーションも魅力

くつろげる空間づくりをコンセプトに、インテリアやカトラリーからスタッフのコスチュームまで選んだだけあって、洗練されていてスタイリッシュなのに、風通しがよく自然を感じられるリラックスしたダイニング体験。私が見たところ、満席のゲストのほとんどは都会の人でした。

       ▲白身魚のメルルーサとアーティチョークにアンチョビのソースを合わせて

人々の嗜好が自然へと回帰する今、パリの人たちもダイニングにヒーリング効果を求めているのでしょうか。はぁ〜、癒された…。いつかマルサンを旅してみたい。今まで知らなかった土地にそんな憧れを抱いたのは、もしかしてエレーヌさんの魔法にかかったのかもしれません。

Marsan - Hélène Darroze
https://www.marsanhelenedarroze.com/

*公式サイトから予約できます
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ