世界のファインダイニング by 江藤詩文

第30回  料理って芸術だ!世界のプロが彼の次なる作品に注目する 「La Cime(ラ シーム)」(大阪)

大阪に行ったら粉モノやストリートフード。京都では日本料理。もちろんそれも外せないけれど、それだけじゃもったいない。今月は、関西行きが決まったら真っ先に予約を入れたい、とっておきの2軒をご案内します。

サラダ菜のローストとソース。サラダ菜ってこんなにおいしいものでしたっけ

高田裕介さん率いる「La Cime(ラ シーム)」。この連載を読んでくださっているフーディーズのみなさんならもうご存じの、日本を代表する名店です。※関連記事はこちら

なんばねぎの豪快な一本揚げ。大胆な皿から繊細な皿まで緩急の振り幅がすごい

オーナーシェフの高田さんは、「玄人好み」とも言われる天才型の料理人。たとえば、いま流行の郷土料理や伝統料理をベースに現代的に再構築したり、世界的に有名な皿へのオマージュだったりはほとんどなし。セオリーを飛び越えた料理は独創的で、同じフランス料理を習得した料理人でも、その味がなぜ生まれてどう構成されたのかわからないとか。まるで孤高の芸術家のようなその創作活動は、同業のプロから憧れと尊敬を集めていて、2020年には「アジアのベストレストラン50」の部門賞で、アジアで活躍するトッププロのシェフだけが投票できる「シェフズ・チョイス賞」を受賞しています。

名物のブータンドッグをはじめ、これだけ手をかけたものをこのスピードで出せるなんて

発想だけに頼らず技術に卓越しているから、脳内で組み立てた味を、料理に落とし込むまでが早い。たとえば怒涛のように登場する7品の前菜は、味はもちろん温度も湿度も香りも、舌触りも五味の重なりも、すべて異なるのにすべてエッジが立った完璧なバランスの上に成り立っています。

メインはうさぎ肉。普通はメインを一品完成させるだけでも時間と労力がかかるのに、高田さんは3品を創り上げ、うさぎ肉の魅力を多面的に表現

長く食いしんぼ活動をしていると、3〜5年に一度くらい「この人、自分でもほとばしる才能を抑えきれないんじゃ」という料理人さんに出会う奇跡が起こるのですが、高田さんがまさにそう。今はお客さんのお腹具合も考えて、13皿のコースに収まっていますが、時間や金額といった制約をすべてなくせば、西太后もびっくりの満漢全席を超えるレパートリーを簡単につくれそう。

デザートやプティフールも素敵。唯一無二のこの色彩感覚は、やっぱりアーティストのものだと思う

大阪に行ったらここで食べなきゃもったいない、どころの話じゃない。フーディーズのみなさんは、La Cimeの予約が取れたらただちに大阪へ行ってください。

 La Cime(ラ シーム)

公式サイトから予約できます

※料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます

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