世界のファインダイニング by 江藤詩文

第13回 イタリア料理の技法で引き出す沖縄食材の新しい魅力 ザ・リッツ・カールトン沖縄・琉球イタリアン「ちゅらぬうじ」(沖縄県・名護市)

イタリア料理と沖縄の食材って、こんなに相性がよかったんだ…。

私の旅の最大の楽しみは、いつだっておいしい食事。食いしんぼうな旅好きなら、きっと同意してくれますよね。そこでしか味わえない本場の料理は、その土地の魅力を鮮やかに伝えてくれます。地元に根付いたローカルフードも大好きですが、それを超越した新鮮な一面を切り取って見せてくれるのがファインダイニングです。


 有名な琉球ガラス作家の稲嶺盛吉さんをはじめ、
地元のアーティストによる作品が飾られたダイニングはアート鑑賞も楽しい

新しい味を発見したのは、昨年(2020年)12月にメニューを一新してリニューアルオープンした「ちゅらぬうじ」。新料理長に宍倉宏生さんが就任し、総料理長のアルベルト・クツィットさんとともに、クリエイティブなメニューを生み出しています。アルベルトさんは、イタリア北部のヴェネト州トレヴィーゾ出身(みなさんおなじみブルガリのルカさんと同郷なんです)で、イタリアと世界各地でキャリアを積み重ねてきました。宍倉さんは、20年近くイタリア料理を手がけています。


「ちゅらぬうじ」料理長の宍倉宏生さんと、
ザ・リッツ・カールトン沖縄総料理長のアルベルト・クツィットさん

そんなふたりが目指すのは、沖縄の食材を大切にした本格的なイタリアン。「イタリア料理は、その土地の恵みを大切に、食材に手をかけ過ぎず、食材に合った調理法で持ち味をまっすぐに引き出したシンプルなものが多いのです」と宍倉さん。

 沖縄で水揚げされる高級魚アカジンミーバイ(スジアラ)は
62℃の低温で30分ゆっくりと加熱する時間と手間を惜しまない丁寧な調理が施されています

トップの写真は、宍倉さんの現在のシグネチャーディッシュ。沖縄のセーイカ(ソデイカ)という希少な大型のイカの身を、甘味とうま味が活性化するギリギリの半生状態に火入れしています。セーイカのおいしさを余さず味わってもらおうと、イカスミを練り込んだパスタまで手打ちしているというからすごい。


沖縄の食文化には欠かせない豚肉が主役のひと皿。
彩りも鮮やかなソースは、
沖縄産の金美にんじんのピュレとスターフルーツのコンフィチュール

流通量があまり多くないヨーロッパ野菜をつくる農家さんに足を運び、信頼関係を築くなど、沖縄食材の開拓にも熱心な宍倉さん。沖縄で採れる金美にんじんやクレソンは、風味が強く、イタリアの野菜に似たところもあるとか。
これからどんな料理が生み出されるのか。次の新メニューが早くも楽しみです。


ラグジュアリーホテルのダイニングらしく、
ワインはイタリアとフランスを中心に200種類以上をラインナップ。プレミアムワインをグラスでも楽しめます

<データ>
ザ・リッツ・カールトン沖縄
https://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/japan/okinawa
※掲載したメニューはすべて取材時のもの

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