第42回 温泉・音楽・ワイン・・・と松本の魅力を詰め込んだ「星野リゾート 界 松本」に滞在(長野県・松本市)

北アルプスの山々を背景に国宝松本城を擁する城下町・松本。その奥座敷、浅間温泉にある「星野リゾート 界 松本」を訪ねました。総支配人にお話を伺うと、ここ2~3年、女性のひとり旅が四季を問わず増えてきているそう。それもそのはず、「界 松本」には女子のハートをくすぐるさまざまな魅力で溢れていました。

まずは温泉。浅間温泉は7世紀の飛鳥時代、日本書紀に登場する束間(つかま)の湯だろうと言われるほど歴史が古く、効能豊かな湯が湧き続けています。そして、音楽の街としても知られている松本。ヴァイオリン教育の「スズキ・メソード」が有名なうえ、夏には「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」が開催されることから「楽都」と呼ばれるほど。また古くから民芸家具が発展した土地柄でもあり、今も工芸が盛ん。松本市内には手作りの作家さんの作品を扱うギャラリーやカフェなどが点在しており、5月には「クラフトフェアまつもと」も開催されます。さらにワインです。長野ワイン発祥の地でメルローの一大産地、大小さまざまなワイナリーがある「桔梗ヶ原ワインバレー」に隣接し、個性豊かなワインを楽しむことができるのです。
これらの多彩な楽しみを「界 松本」でどこまで満喫できるか、ワクワクしながら滞在をスタートしました。

 

伝統工芸が光るモダンな和風旅館

          

数多くの和風モダン建築を手掛ける建築家・羽深隆雄(はぶかたかお)氏による建物で、さながら室内楽のホールのようなロビーが出迎えてくれます。壁の意匠はピアノの鍵盤をイメージしたものだとか。ここは夜になるとロビーコンサートが催される場所で、天井が高いことから音もよく響きます。

天井には和紙などに貝殻をすりつぶした顔料を使った雲母(きら)刷りという襖紙の伝統手法が使われており、やわらかな光でロビーを包みます。

檜を用いた繊細な組子障子や、天然の土壁にワラなどを練りこみ青海波模様を浮き出させたアートなど、館内の随所に伝統工芸の技が散りばめられています。ほかにもいろいろあるので滞在中に館内を探してみるのも面白いかも。

 

「クラフト×音楽」で松本の魅力を表現したご当地部屋


まずは今夜滞在するお部屋に案内していただきました。全26室のうち、1室しかないご当地部屋です。星野リゾートの温泉旅館ブランドである「界」では、それぞれの土地の魅力に触れられるご当地部屋がありますが、ここ松本で用意されていたのは「オーディオクラフトルーム」です。地元の木工作家の手によるスピーカーが設置されるほか、フルートをモチーフにしたアート作品が飾られ、ものづくりと音楽の街・松本を体感できる趣向となっています。

ピアノ、ベース、ドラム、テナーサックスのプレイヤーのオブジェが納められた「JAZZ QUARTET」という名のスピーカーは、見た目のかわいさだけでなく、音質も秀逸。私も滞在中はずっと部屋に置かれた小澤征爾氏のCDで音楽のある空間に浸り、リラックスすることができました。また、自分の持ってきた音楽をブルートゥースをつないで楽しむこともできます。

本物のフルートが入った「バッハ パルティータ イ短調」という作品も飾られています。

 

2階に位置する客室ですが、お庭もあり、ゆったりとした空間にくつろぎます。ひとり旅でこのような空間に身を置くと、本当に贅沢な気分になりますね。

またお庭を眺める露天風呂も備わり、温泉を楽しむことができます。26室のうち15室は露天風呂付き客室とのことです。

 

湯守りの指南で八種十三通りの湯浴みを満喫


男女入れ替わりで2つの大浴場があり、合わせて「八種十三通り」の湯浴みが楽しめる「界 松本」。浮力に身をまかせる「寝湯」や香りを楽しむ「檜おがくず風呂」などのように風呂ごとにテーマがあるほか、「立ち湯」や寝椅子の上で岩盤浴気分が味わえる「ラディアントバス」といった珍しい体験もでき、何度入っても飽きることがありません。

               

湯は、pH8.7のアルカリ性単純温泉。無色透明のなめらかな湯で、入ると肌にヴェールのようにしっとりとまとわり、すべすべの効果を実感できます。大浴場の入口にはペットボトルの水も置いてあり、入浴中に水分補給できるのも嬉しい心遣いです。


また「界」では、日本の文化である湯治を現代のライフスタイルに合わせた「うるはし現代湯治」を展開しており、正しい入浴法や呼吸方法、温泉の知識などを、大浴場の展示パネルや客室に置くファイルなどで紹介しています。「界 松本」ではその一環として15:30~16:00の間、湯守りのスタッフが温泉の入り方などを大浴場の前でレクチャーしてくれます。興味のある方はこの時間を狙って入ってくださいね。

 

桔梗ヶ原のワインに迫る「NAGANO WINE紀行」


温泉でリラックスした後はワインです。わいんギャラリーでは「NAGANO WINE紀行」というアクティビティ(予約制、1,000円)が16:30~と18:30~の2回開催されます。長野のワインづくりの風土や歴史の説明を聞いたり、また醸造家たちのワインづくりへの思いをまとめたビデオを見たり、ワインのテイスティングを楽しんだり。アクティビティを通して少し長野ワインについて詳しくなった気分がしました。


特にビデオで紹介された3つのワイナリーのワインを飲み比べたのですが、同じメルローを使って醸造しているのにそれぞれ個性があり、味わいが異なることに驚きを覚えました。ご夫婦ふたりだけでオーガニックのワインを造る「VOTANO WINE」の「メルローV」は渋みや甘みが順々にやってきて奥深い味わいを感じました。樽の並ぶ地下のセラーでクラシック音楽を流す「信濃ワイン」の「信濃桔梗ヶ原メルロー」は渋みと酸味がほどよく、それを樽の香りが包みこむようです。またワインを造って100年という老舗の「五一わいん」の「五一わいん ゴイチ 桔梗ヶ原メルロー」は果実味を感じる上品な味わいでした。お料理と合わせていただくのももちろん美味しいのですが、このように比べながらワインと向き合うのも新しい発見があるかもしれません。おすすめの体験です。

 

和会席と長野ワインのマリアージュを楽しむ夕食


「界 松本」では桔梗ヶ原のワインを中心に50種のワインが取り揃えられています。好きなワインを選んで味わうのもよいですが、今回は料理に合わせて4つのグラスワインが楽しめる「桔梗ヶ原ワインコース」(3,800円)を体験しました(ワインはお料理や季節によって変わります)。


夕食は、先付けに始まり、お椀、八寸、お造り、揚げ物、食事などなど、季節や時の食材を用いた多彩なお料理が楽しめる和会席です。食事処はすべて個室となっていますので、ひとり旅の方も気兼ねなく自分のペースで楽しむことができます。
季節によって提供されるものは異なりますが、この夜の先付けは「界 松本」オリジナルの鯛切りそばがき。信州らしくそばを使った一品には、五一わいんのケルナーを合わせます。やさしい甘さのある軽い口あたりのワインが食事のスタートにぴったりときます。八寸の宝楽盛り(写真)は、松本の伝統工芸品「松本てまり」をモチーフにした三段重ねの器に、色とりどりのお料理が! 目でも楽しめる一品となっています。合わせた果実味豊かで爽快感のある五一わいんのソーヴィニョン・ブランはどんなお料理ともマッチします。珍しいトマトの揚げだしには、サントリー塩尻ワイナリーの塩尻メルロー ロゼ。酸味やタンニンがきいた辛口のワインが、トマトの酸味によく合います。


10月からはじまる特別会席のメインは、信州和牛の「ワインすき鍋」です。ここまででかなりお腹いっぱいになっているのに、ジュージューと肉を焼く音や香ばしい匂いに再び食欲が湧いてきます。割り下に濃縮した赤ワインを使っているので香り豊かなうえ、アルコール分がお肉を柔らかくする効果もあるそう。ワインはサントリー塩尻ワイナリーの塩尻メルロー。果実味やハーブの香りを感じる力強い味わいの赤ワインが、肉の濃厚な旨みに負けず、互いに引き立てていました。
ワインと和会席のマリアージュ、組み合わせ次第で味わいの幅も広がります。ぜひお試しください。

 

ロビーコンサートでくつろぎの一夜を


食事が終わるのに合わせて、20:30~と21:15~の2回、ロビーコンサート(無料)が開催されます。クラシックやジャズを中心に、毎晩異なる演奏者が登場。楽器もヴァイオリン、ピアノ、フルート、ファゴット、サックスなどさまざまだそうです。

私が滞在した夜は、ピアノの連弾でした。バッヘレベルのカノン、リストの愛の夢などのクラシックに始まり、映画音楽、ジャズのメドレー、そして最後はカーペンターズと盛りだくさんでとても楽しいひとときでした。2人の奏者が同じピアノを弾く連弾は、低音から高音まで一度に奏でられる音域が広くなるので、音に厚みがでるというか、奥行きを感じます。2人の息のあった演奏にとても感動しました。
コンサートの時間に合わせてロビーではワインバーもオープン。ワインと音楽に酔いしれることもできます。

歴史と文化に彩られ、おしゃれなショップやカフェなど街歩きも楽しい城下町・松本。そんな松本の魅力を凝縮した「界 松本」での滞在はいかがでしょうか。女性のひとり旅にもぴったりなお宿です。

 

 

星野リゾート 界 松本

長野県松本市浅間温泉1-31-1

TEL0570-073-011(界予約センター)

料金:32,000円~(2名1室利用時1名あたり、サービス料込・税別、夕朝食付)

 

取材・文 山本 厚子

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