あなたも「近代化遺産」萌え! by 関屋淳子

第49回 今も現役、古典主義建築の最高傑作「明治生命館」の講堂に潜入! (東京・千代田区)

かつて一丁倫敦(ロンドン)と呼ばれた東京・丸の内。明治から大正にかけて英国人建築家のジョサイア・コンドルが煉瓦造りの近代建築を設計、建築。その名残である三菱一号館は現在美術館として生まれ変わっています。皇居馬場先門に立つ明治生命館は三菱二号館を取り壊し、建築家・岡田信一郎が建設。竣工は1934(昭和9)年、設計から建築に至るまで日本人が担った最新鋭の近代ビルであり、昭和の建造物として初めて重要文化財に指定された建物で、1階の営業室では業務も行なわれています。

 岡田信一郎は鳩山一郎邸(現・鳩山会館)や、戦前の歌舞伎座(第3期)の建築、ニコライ堂の修復などで知られます。コンペで勝ち取った明治生命館の設計、その特徴は5階分のコリント式列柱。体が弱かった岡田は一度も外洋したことがなかったのですが、ギリシャ神殿のような外観を造り出し、古典主義様式の真骨頂と評価されています。

優雅なアカンサスの装飾が柱頭を飾る

明治生命館は2001年、隣接して高層の明治安田生命ビルを建築することで、全面保存が決定、2階部分は無料で一般公開されています。館内には随所にギリシャ建築の装飾モチーフで用いられるアカンサスがあり、執務室や応接室、食堂などを見て回ることができます。戦後はアメリカ極東空軍司令部として接収され、会議室はマッカーサー総司令官も利用していたとのこと。スマートフォンを使った無料の音声ガイドがあり、建物のストーリーがよくわかります。

左上から時計回りに、吹き抜けを彩るアカンサスの天井、応接室、家具のデザインは梶田恵。アールデコ前期の趣。マッカーサーも席について会議室

メールシュート。左:郵便物を各階から投函することができた。右:郵便物は1階の郵便函へ

 

今回は、東京建築祭の特別公開で来館。東京建築祭は「建物からひとを感じ、まちを知る」という年に一度の祭典で、都内の様々な建物の特別公開などを行なっています。

明治生命館では、普段は非公開の7階講堂を見学することができました。7階・8階が吹き抜けになっており、ホワイエも現存の木製手すりを用いて可能な限り保存・改修しています。講堂の入り口はまるで海外の劇場のような雰囲気で、そのなかも重厚な劇場の佇まい。客席も復元され、天井には石膏の正円レリーフと楕円レリーフの照明もお洒落です。昭和の大建築の魅力に圧倒されました。

重厚な入口

講堂内

窓もお洒落

 

明治生命館といえば、1階には静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)が2022年にオープン。そのホワイエでもこの建物の美しさを感じることができます。

アート好きには、旅恋アンバサダー塩見有紀子の記事をぜひご参考ください。

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ