マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第38回世界遺産員会と富岡製糸場の登録について

毎年6〜7月に開催されている世界遺産委員会。
今年も6月に第38回世界遺産員会がカタールで開催されました。
日本でも国内18番目の世界遺産となる「富岡製糸場と絹産業遺産群」が登録され、世界遺産誕生のニュースは大きく報道されたので、ご存じの方も多いと思います。
今回は世界遺産委員会と富岡製糸場のご紹介です。

20140803tomioka5.JPG115年もの長期にわたり操業を続けた富岡製糸場の東繭倉庫(画像提供 富岡市・富岡製糸場)

ドーハで開催された
38回世界遺産委員会

2014年6月15日からカタールのドーハで開催されました。
そこで文化遺産21件、自然遺産4件、複合遺産1件の新たな世界遺産が誕生。世界遺産の総数はとうとう1000件を超え、1007件となりました。今後、いくつまで増えるのかも気になりますね。

文化遺産21件のうち、2件は"道"の世界遺産でした。1つはアルゼンチン・ボリビア・チリ・コロンビア・エクアドル・ペルーの6ヶ国が共同で申請した「カパック・ニャン:アンデスの道路網」で、インカ帝国が支配した海岸砂漠地帯からアンデス高山地帯までつなぐ道路網のこと。
もう1つは中国・カザフスタン・キルギスによる「シルクロード : 長安-天山回廊の交易路網」です。こちらは今まで登録されてなかったことが不思議なくらい有名な道ですね。

また、「ピュー族の古代都市群」というミャンマー初の世界遺産が誕生しました。仏教を篤く信仰していたピュー族が造った巨大仏塔が残っている場所だそうです。
今回、ミャンマーに世界遺産が誕生したことで、世界遺産条約を締結している191ヶ国のうち、世界遺産を持たない国は30ヶ国になりました。

パレスチナ2つ目の世界遺産となった「オリーブとワインの地パレスチナ - エルサレム地方南部バティルの文化的景観」は、2012年に登録された最初の世界遺産「イエスの生誕地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」と同様に、緊急登録された物件です。と同時に、危機遺産リストにも登録されました。
ICOMOSの事前調査では、緊急性が低いとして世界遺産リストへの「不記載」が勧告されていましたが、逆転登録されました。
前回のベツレヘム登録の際にはアメリカやイスラエルが反発し、ユネスコへの拠出金を停止しました。
イスラエルとガザ地区のハマスの対立が激化するなど、パレスチナを巡る今後の動向が気になります。


国内18番目の世界遺産が誕生!
富岡製糸場と絹産業遺産群


今回、日本でも18番目の世界遺産となる「富岡製糸場と絹産業遺産群」が登録されました。

富岡製糸場は、明治5(1872)年、明治政府によって設立された官営の模範器械製糸場です。フランスの技術を導入し、生糸の品質向上と増産を目指して建てられました。蚕糸業の発展に大きな影響を与え、日本の近代化を牽引しました。

20140803tomioka9.JPG複数の繭から糸をより合わせ生糸を作る繰糸場。
トラス式構造の屋根が特徴的(画像提供 富岡市・富岡製糸場)
20140803tomioka14.JPG木造で組んだ骨組みにレンガを積み上げて造られた東西の繭倉庫。
上記写真は長さ約105mの西繭倉庫(画像提供 富岡市・富岡製糸場)

20140803tomioka11.JPGフランス人指導者ポール・ブリュナとその家族が
暮らしたブリュナ館(画像提供 富岡市・富岡製糸場)

富岡製糸場のほか、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴の4つの構成資産から成っています。

田島弥平旧宅は、蚕の飼育法「清涼育」を大成させた田島弥平の住居兼蚕室。文久3(1863)年に建てられたもので、温室度を調整する屋根上の「やぐら」が特徴となっています。

高山社跡は、通風と温度管理を調和させた近代養蚕法「清温育」を確立した高山長五郎の生家で、養蚕教育施設「高山社」が設立された場所です。

荒船風穴は、岩のすき間から吹き出す自然の冷風を利用した国内最大規模の蚕種(蚕の卵)貯蔵施設。ふ化の時期を調整し、当時年1回だった養蚕を複数回可能にしました。

それぞれの構成資産の場所は離れているので、訪ねる時は計画的にお出かけください。

(DATA)
富岡製糸場
所在地:群馬県富岡市富岡1-1
問合せ:0274-64-0005
見学料:大人500円
休館日:12月29〜31日、臨時休業あり

田島弥平旧宅
所在地:群馬県伊勢崎市境島村甲2243
問合せ:0270-61-5924(田島弥平旧宅案内所)
見学:個人宅のため外観のみ
   田島弥平旧宅案内所にて展示や解説あり

高山社跡
所在地:群馬県藤岡市高山237
問合せ:0274-23-5997(藤岡市教育委員会文化財保護課)
開館:9:00〜16:00
休館:12月28日〜1月4日
見学料:無料

荒船風穴
所在地:群馬県甘楽郡下仁田町南野牧甲10690-1外
問合せ:0274-82-5345(下仁田町ふるさとセンター)
見学:9:30〜16:00は解説員による案内あり
休館:12〜3月は冬期閉鎖

(文・山本 厚子)

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