ニホンノカタチ 旅恋ver. by yOU(河崎夕子)

第45回 大人になったらクラシックホテルへ。アクセスも抜群の奈良ホテル(奈良県・奈良市)

旅の計画で宿決めは大きなポイント。ホテル、民宿、一棟貸しにコテージ、そしてグランピングや民泊....など宿のスタイルもさまざま。アクティビティを楽しめたり、新しくて便利な宿もいいけれど、今回ご紹介するのは1909年に開業した「関西の迎賓館」、創業115年の老舗ホテルの代表格「奈良ホテル」。

旅館が主流だった時期に西洋文化を取り入れた先駆けとなったこのホテルは、奈良駅からも近く、東大寺や興福寺、鹿が散歩する奈良公園などの観光スポットにアクセス抜群のロケーションです。

「桃山御殿風檜づくり」の建物と新館の客室 

建築家・辰野金吾によって設計された建物は「桃山御殿風檜づくり」。日本のお城のようでもあって、瓦屋根に木柱と漆喰の白壁が、華やかな時代の風格を醸していました。

そして一歩足を踏み入れれば赤い絨毯。そうそう、富士屋ホテルや日光金谷ホテルなどクラッシックホテルの中には、赤い絨毯が敷き詰められていますよね。ちょっと話は逸れますが、気になって調べてみたところ、この赤色は日本の伝統色で「深緋(こきあけ)」というそうで、かつては位の高い人しか身に着けることができない色だったそうですよ。

館内は和洋折衷の独特な雰囲気が漂っていて木造建築の温もりが感じられて、所狭しと美術品が並び、まるで美術館のようでもありました。アールデコ風の曇りガラスや天井から下がる照明器具、ダイヤル式公衆電話、そして部屋に設置されたマントルピース(暖炉)...と各所のディテールにもしっかり心を掴まれてしまいました。

奈良ホテルの佇まいは明治以降ほとんど変わっていないそうで、100年前にタイムスリップしたような気分になれました。

迎賓館として開業しただけあって、各国の皇族や首相など、またヘレンケラーも宿泊したそうです。歴史的な著名人と同じ空間にいると思うと心が踊りました。中でも驚いたのは、ティーラウンジに設置されたピアノにまつわる逸話。なんとこのピアノは、かの物理学者アインシュタインが1922年にホテルを訪れた際に弾いたというものだとか。1900年代のアメリカのハリントン社製のアップライト型のピアノは、趣ある空間に特別な存在感を放っていました。

年齢を重ねるごとに宿の条件も変わっていく中で、その歴史的背景の奥行きと風格を楽しめるクラッシックホテルの魅力を、随所に感じられる美しき宿でした。

奈良ホテル 奈良県奈良市高畑町1096
0742-26-3300 https://www.narahotel.co.jp/

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