山口宇部空港から車で1時間半、長門湯本温泉郷は歴史が古く県内でも最古の温泉。
およそ600年前、大寧寺の定庵禅師が住吉大明神からのお告げによって発見したと伝えられています。町の中央を流れる音信川(おとずれがわ)を挟んで川沿いに温泉宿や店が並び、川のせせらぎを聴きながら涼やかに過ごす夏の川床、桜並木を見上げてそぞろ歩き、川を見下ろして雪見酒...季節ごとの里山の風景を楽しめる人気の観光地でもあります。
この長門湯本温泉の泉源の真上に建てられたのが「恩湯(おんとう)」と呼ばれる立ち寄り湯。大寧寺の所領であるこの場所は、昔ながらの公共浴場でしたが、2020年に地域の若者たちによってリニューアルオープン、ガラス張りの館内は清潔感に溢れています。明るい脱衣所、シャワースペースの先に壁を隔てるとトーンが一変、浴室は少し暗くなっていて正に神秘的な空間でした。
鎮座する住吉大明神像を中央に、右が男湯、左が女湯。浴槽との結界には長門国一宮住吉神社から授かったしめ縄がかかり、とても浴室とは思えない神々しさ。そして岩の割れ目からお湯が湧き出る様子を眺めながらの入浴は、他では絶対にできない体験です。
湯の温度は36~38度程度。ほのかに硫黄の香りがするトロットロの湯はまるで化粧水のよう。人肌の温度なのでゆっくりと浸かることができます。そして驚いたのが浴槽の深さ。なんと1メートルもありました。この深さの秘密はなんと浴槽の底にも泉源があるからなんだとか。
これは「足元湧出泉」と呼ばれ、空気に触れない新鮮な湯が浴槽の底で脈々と湧き出ているのです。驚きですね。
また恩湯に伝わる「神授の湯」伝説に関わる大寧護国禅寺(長門湯本)と長門国一宮 住吉神社(下関)との縁が深いことで、両者の御朱印を受けることができる御朱印紙も用意されていました。
恩湯だけの特別な御朱印紙
恩湯は神からの授かり物として、町の人たちに長きにわたって守られ、尊敬と感謝の気持ちが受け継がれています。そんな人々の気持ちがシンクロしてか、他では味わえない神秘的な入浴体験を終えると、体の芯まで温まるだけでなく、ありがたさを感じて心の中まで洗われた気分でした。
長門湯本温泉 恩湯
〒759-4103 山口県長門市深川湯本2265 0837-25-4100
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