台湾/台南〜嘉義・東石「食い倒れツアー」 Vol.4

美食の王国・台湾。この台湾の南西部にある町・台南(タイナン)&嘉義(ジアイー)を訪れ、3日間朝から晩まで食べまくる「食い倒れツアー」なるものに参加してきました。台湾グルメの発祥地をはじめ、牡蠣料理の名店やマンゴーの里まで、あらゆる場所であらゆるメニューを味わい尽くす至福の旅。そんな満腹度120%の旅のなかで食べた品々を、4回にわたって紹介します。

 

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日に日に桜前線が北上し、ゴールデンウィークも目前! ようやく春本番となってきましたね。日本が麗らかな季節を迎えるのと同じ頃、台湾では半年にわたるマンゴーシーズンが幕を開けます。マンゴーは、台湾で最もポピュラーなフルーツ。なかでも台南市郊外にある玉井(ユィジン)産のものは評判が高く、台湾人もいち目置くほどの品質を誇ります。最終回となる今回は、台湾屈指の大産地・玉井にあるスポットを巡り、台湾マンゴーの魅力に触れていきましょう。


 


●台湾フルーツの代名詞マンゴーの里へ

 

玉井へは、台南市内からバスに揺られて1時間あまり。町の周囲には緑豊かな山々が連なり、中心部を間近にした沿道には見渡す限りのマンゴー畑が広がっています。でも、ここでこんな光景が見られるようになったのは、ほんの半世紀ほど前のこと。もともと玉井はまったくの不毛な土地だったそうですが、1954年にアメリカ・フロリダから取り寄せた「愛文(アイウェン/アップルマンゴー)」というマンゴーの栽培に成功したことで町の景観が一変したそう。今や、玉井は台湾人の誰もが知るマンゴーの里。町中にはマンゴーの専門市場やフレッシュマンゴーをたっぷりのせたかき氷の店なども点在しており、まさにマンゴー一色に染まっています。大産地ならではの醍醐味をたっぷり満喫できますよ!

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台湾マンゴーは海外由来の改良品種が中心で、愛文もそのひとつ。
マンゴーのなかでも最高級品種として珍重されるが、
玉井はこの愛文の生産で特に有名で生産量は国内トップ


 


 


 


台南中のバラエティ豊かなマンゴーが勢揃い


<玉井区青果集貨場 ユィジンチゥチングオジーフオチャン>


 



玉井区青果集貨場」は、台南中のマンゴーが一堂に介する卸売市場。シーズンを迎える49月頃ともなれば、場内には色、大きさ、形ともにさまざまなマンゴーが並び壮観です。その種類は、おもなものだけで20種ほど。加えて、新しい品種も続々と誕生しているため、ここではシーズンを通すと40種以上が取引されています。それだけに市内には出回らないレアな品種や新品種にいち早く出合えることもあり、眺めて歩くだけでもマンゴー大国のスケールの大きさを実感できるのです。


 


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南国名物・スコール対策も万全な屋根付き市場。早朝4時から夕方5時頃まで開いているが、
生産者が自由な時間に持ち寄って売る方式で、コアタイムは1015時頃


 


 


ここでは、日本で1個数千円もするマンゴーが1kgたったの数十元(1元=約3.5元)。目を疑うほどリーズナブルなうえ、業者、一般客を問わず誰でも購入できるのです。販売は基本的に大きなバスケット単位なので、旅行者ならグループ買いをするのがベストですが、ひとり旅の場合は交渉してみるのも手。売り手によっては12個ならバラで分けてくれることもあり、実際、私も食べ比べを楽しもうと思って、10種類ほどひとつずつ買い込んだことがあります(笑)。


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籠盛りのマンゴーの価格は重さで決まる。単位は斤=600g、公斤=1kgをあらわし、
代表品種の愛文なら125個前後入っている。なかには、1籠分の価格を表示してあることも


 


 


〜台湾人に絶大な人気を誇る2大マンゴー〜


マンゴーは、マンゴスチン、チェリモヤと並び、世界3大フルーツのひとつといわれるフルーツ。みなさんはどんなマンゴーを知っていますか? 場内に並んでいる品種は実に多彩で、色だけ見ても赤、黄、緑、紫とひじょうにカラフル。なかには、「これもマンゴーなの!?」と言いたくなるものも少なくありません。そこで、今回見つけた品種のなかから特徴的なものをいくつかピックアップしてみましょう。

 


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色彩豊かに並ぶマンゴー。最盛期の67月は最も種類が出揃い、
価格もダウンする。ちなみに、主要品種のひとつ
愛文の昨年7月の平均価格は1kg29.6元。激安!


 


 


まず知っておきたいのは、台湾で最もメジャーなふたつの品種。そのうちでも国内で断トツのシェアを誇る「愛文(アイウェン)」は、「マンゴーの王様」と称される最高級品種です。日本ではアップルマンゴーの名でおなじみですが、濃厚な甘みのなかにほんのり酸味が効いて、そのバランスが秀逸。特に「玉井産」という肩書きはトップクオリティの代名詞となっており、町中の有名かき氷店のほとんどがこの玉井産の愛文を使うことにこだわりをもっているほどです。たっぷり果汁を含んだ果肉はトロ〜ッとして口あたりも滑らか。市場のおじさんたちも、「イチオシだよ!」と称賛するマンゴーです。


 


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愛文はマンゴーの国産量の約40%を占める台湾の代表品種。
糖度は1215度とメロン並みで、台南では57月頃が旬。
果皮にハリや艶があり、蜜があふれ出してきたら食べ頃


 


 



一方、1950年代に愛文がアメリカから導入される前は、台湾でマンゴーと言えば、「土芒果(トゥーマングオ/ワイルドマンゴー)」を指していたそう。愛文導入の約400年も前にジャワ島から伝わり、それが野生化して繁殖したため、「土(=在来、土着の意)」の名を冠しているのです。今や愛文全盛ですが、土芒果は清の皇帝へも献上された由緒ある品種なんですよ。


 



皮は緑色ですが、カットすると鮮やかな黄色い果肉があらわれます。大きさはちょうどライムほどと愛文の34分の1程度しかないものの、甘さは勝るとも劣らず。少々繊維質ではあるものの、ネットリとした果肉は味わい深く、今でも台湾ではこちらの方を好む人は多いのです。


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土芒果の最盛期は47月頃。幼果を砂糖漬けにした情人果はリンゴに似た食感で、
酸味が効いた爽やかな風味。暑さ凌ぎの定番おやつで、「芒果青(マングオチン)」ともいう


 




〜台湾のオリジナル品種3選&注目株はこれ!〜

 

手のひらサイズの土芒果がある一方、「金煌(ジンフアン)」は両手で抱えるほどのメガサイズ。最大で2kgほどにもなり、例えるならアメフトのボールをひと回り小さくしたような大きさです。一方、果肉の色は淡めのレモンイエローで、甘みは強いものの適度な酸味もあり、意外にあっさりとした後味。見ためほどのインパクトはないものの、繊維が少なく、クリーミーな舌触りで食べやすいのが特徴です。旬は47月頃。


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他品種と比べても別格の大きさだが、価格は愛文の6割程度。
マンゴーとモモの味は近いものがあるが、モモはブランド品種でも
糖度13度が目安なのに対し、金煌は17.4度 ※緑の果実はアボカド


 


 


また、この金煌は台南の隣県・高雄で誕生した台湾のオリジナル品種。そして、これに愛文をかけあわせた「玉文六号(ユィウェンリウハオ)」も、台湾のマンゴー博士こと郭文忠(グオウェンヂョン)さんが手がけた玉井生まれの品種です。金煌由来とあって、平均果重は約650g1kgと比較的大きめ。糖度は15.1度と、愛文以上に甘いのに酸味はほとんどなく、「とにかく甘さ重視」「マンゴーを気が済むまでたらふく食べてみたい!」という人に打ってつけです。
 


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玉文六号には、「紅金煌(ホンジンフアン)」の別名も。旬は67月頃。生みの親・郭さんは玉井で
農園を営み、今までに約30種の改良品種を誕生させてきたマンゴー界の重鎮


 


 



そして、個人的に絶賛おすすめ中なのが、同じく台湾ブランドの「台農一号(タイノンイーハオ)」です。「蜜芒果(ミーマングオ)」の呼び名もある甘〜い甘〜いマンゴーで、何と平均糖度は玉文六号の上を行く1622度! レモンを一段大きくしたくらいの小ぶりな品種ながら、中にはおいしさがギュウ〜ッと凝縮されているのです。ちなみに、昨年『ギネス世界記録』に世界一甘いモモとして登録された「まさひめ」の糖度が22.2度。つまり、台農一号はそれに匹敵するワールドクラスの味わいというわけです。


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果皮は黄金色から淡紅色。数ある品種のなかでも特に香りが華やかで、「香水(シアンシュイ)」の名も。
旬は47月頃。右の写真は手前から愛文、台農一号、次に説明する黒香

 


 


このほか、最近の注目株に、「幻のマンゴー」と謳われる「黒香(ヘイシアン)」があります。このマンゴーは日本統治時代にインドから試験導入されたのですが、台湾の気候になじまず、100年以上も細々としか生産されてこなかった品種。ところが、これが近年になってジワジワとファンを増やしており、特に「龍眼(ロンイエン)」というフルーツを彷彿とさせる個性的な香りが脚光を浴びているのです。


 


龍眼と言えば、燻したような独特の薫香があり、一説によるとアールグレイ紅茶を発案するきっかけにもなった果実。黒香の香りはこれに似てどこか神秘的で、100年ぶりに復活を遂げたというストーリーにピッタリです。最盛期は6月中旬〜7月頃。

 


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愛文よりひと回り大きく、先端が勾玉のようにやや曲がった形状。果肉は糖度15.6度の甘さをもち、
味わい豊か。別名、龍眼芒果。右の写真は龍眼、ライチのように小粒だが香りが印象的


 


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黒香以外に、黄色くて細長い「バナナマンゴー(香蕉芒果/シアンジアオマングオ)」や
赤くて真丸い「リンゴピアーズマンゴー(蘋果芒果/ピングオマングオ)」も形が特徴的


 



さあ、ここまでマスターしたら、あとはマンゴー探索へ向かうのみ。これだけ安ければ、あの高級マンゴーを丸かぶりしたり、毎食後のデザートにしたりするなんていうリッチな経験も夢ではありません。ただし、一般的に台湾から日本へ生鮮品を持ち込むのはNG。夢の時間は現地オンリーなので、台南滞在中に思う存分味わってくださいね。


 



また、市場で生産者の人たちに聞いたところ、おすすめは1位:愛文(マンゴーの王様)、2位:台農1号(世界レベルの甘さ)、3位:玉文6号(玉井発!マンゴー博士渾身の作)だそう。いずれにしても、購入する際は、品質を保証する農會のシールがきちんと貼ってあるかを要チェック。バラ買いをしたいなら、籠にラップがかかっていなくて取り出しやすそうなものが狙い目ですよ!


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場内での会話は南部の田舎町らしく台湾語がメインだが、中国語も通じる。
どちらも苦手な人は、漢字を並べるだけでもある程度は意思疎通が図れるので筆談でトライ!


 


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入口付近では愛文や土芒果のドライマンゴーを販売。袋詰めの商品があるほか、量り売りもOKで、
売れ筋は自然の風味を生かした砂糖未使用の品。地元産のフルーツも一部揃う


 


 


●市場見物の後は、フレッシュマンゴーのかき氷を!


 


市場で無数に並ぶマンゴーを目にしたら、「食べたい!」と思うのが心情ですよね。でも、もしバラで買えなかったら? 心配しなくても大丈夫。市場の周辺には、新鮮なマンゴーを使ったかき氷の店がいくつもあります。なかでも、「く〜っ!」と唸るほどのおいしいお店を紹介しましょう。

 



玉井産の新鮮マンゴーを厳選!


有間氷舗 ヨウジエンビンプー)>


 



玉井にあるかき氷店のなかでも、「有間氷舗」の看板メニュー「芒果無雙(マングオウーシュアン)」は国家優良商品の金賞に輝いたこともある逸品。厳選マンゴーをたっぷりのせたかき氷を、町中の有名店の半額以下で味わえるというから嬉しい限りです。


 

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市場の裏手、徒歩約5分の場所にあり、家族連れなどが引っ切りなしに訪れる。
店内の壁や天井は、来店客のサインやメッセージでビッシリ。評判の高さを物語っている


 


 



芒果無雙に使う氷は、マンゴーの天然果汁を凍らせて削ったもの。スーッと口どけのいい氷の上には、ザックリと大胆サイズにカットした果肉がテンコ盛りになっており、マンゴーの瑞々しく、とろけるような舌触りには思わず顔がほころんでしまいます。さらにマンゴーアイスや特製マンゴーソースのトッピングもプラスされ、これでもかというほどのマンゴー尽くし。完熟マンゴーの濃厚な風味を余すところなく堪能でき、散らした情人果(土芒果の砂糖漬け)の甘酸っぱさが果肉の甘みを一層引き立ててくれます。


 


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芒果無雙。写真手前の小(100元)でも十分なボリュームだが、大盛りの大(150元)、
34人前ほどある特大(180元、写真奥)などポーションは3タイプから選べる


 


 



この店で使うマンゴーは、新鮮な玉井産の素材が中心。春先は玉井よりひと足早くシーズンが始まる屏東(ピンドン)産のものを使うことがあるものの、基本的には地元産の品種から厳選しているそう。「愛文じゃないかもしれないの?」と思った人もいるかもしれませんが、考えてみて、この店があるのはマンゴー市場のお膝元。品質が高く、種類豊富な素材が簡単に手に入るため、むしろ、その日の状況を見て素材を選りすぐった方が思いもよらないおいしいものに出合えるのです。


 


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次から次へと入る注文に、かき氷機はフル回転。大きな氷のブロックは、100%マンゴーの
無添加果汁を固めたもので、これを削って作るため氷自体もほんのりマンゴー味


 


 



例えば、今回の訪問時にのせてあったのは、「水蜜桃(シュイミータオ)」というマンゴー。比較的新しい品種のため、まだ生産量は少ないのですが、実は平均糖度が17.3度、酸味とのバランスをあらわす糖酸比は130(愛文で57)という極甘マンゴーなのです。口に運ぶと、名前の通りモモのようにジューシー。ややしっかりめの果肉には心地いい歯触りがあり、まるで蜜に潜らせたかのようなコックリとした甘さです。愛文の数倍の値が付くこともある評価の高い品種ですが、そんな貴重な味に出合えるなんて、やっぱりこの道のプロの目利きはさすがです♪


 


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マンゴーの種類は当日のお楽しみ。この店でかき氷を味わい、トッピング
されていた品種が気に入ったら市場に見つけに行くという方法も


 


 



台湾屈指のマンゴーの里、玉井。紹介した内容以外にも、市場の付近にはマンゴーの博物館やアレンジ料理を味わえるレストランがあり、例年7月頃には玉井区各所を舞台にマンゴーフェスティバルが開催されます。会場ではマンゴーの展示販売をはじめ、マンゴーデザート作りやカービング(フルーツ彫刻)などのDIY体験、創作スイーツコンテストほか、マンゴー三昧のイベントが目白押しです。そして前回までに紹介したように、周辺には台南市内や嘉義といった名物グルメの宝庫もあります。ぜひ、あわせて"食い倒れの旅"を満喫してみてくださいね。


 


 


Information


<台北から台南&●へのアクセス>


台南:高鉄「台北」駅から台湾高速鉄道(台湾新幹線)で約1時間45分〜2時間、高鉄「台南」駅へ。市中心部へはタクシーなどで約30


玉井区青果集貨場:台鉄台南駅(北駅)から大台南公車(興南客運)の緑幹線「玉井」行きで約1時間10分、終点下車、徒歩約1分。119元、1530分に1


 


<玉井区青果集貨場>


台南市玉井区中正路27号(玉井区公所)付近(中正路と民権路の交差点脇)


06574-5572


 


<有間氷舗>


台南市玉井区中正路152


06574-7130574-2869


 


(取材・文/田喜知 久美、取材協力/GOURMET TAIWAN台湾美食、経済部商業司、財団法人中衛発展中心

 

 

 

 

 


 


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