マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

世界遺産への旅Vol.11-2 琉球王国のグスク及び関連遺産群(後編)

前編では「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の5つのグスク(城)をご紹介しました。後編では、残り4つの構成資産へとご案内します。内2つは御獄(うたき)と呼ばれる聖地で、国に係わる宗教的行事が執り行われてきました。残りは国王一族の陵墓と別邸で、いずれも首里城に連なる関連遺産となっています。

 

●園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)

 

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首里城の守礼門をくぐると左手にある国王の拝所で、国王が場外に出る際に道中の安泰を祈願しました。御嶽(うたき)とは、琉球の信仰の中で生まれた聖地のことで、多くは森の空間や泉、川などで、その中に岩や小さな祠などが目印として置かれています。この園比屋武御嶽にも石門のほかには何もなく、石門の後方に聖地となる森が広がっているのみです。

(DATA)
那覇市首里真和志1-7 付近 首里城公園内
098-917-3501
見学自由

●玉陵(たまうどぅん)

 

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前編でご紹介した通り、尚巴志(しょうはし)によって統一された琉球王国は、幕末まで約450年間続きましたが、実は尚巴志の孫が亡くなるとクーデターが起こり、第一尚氏王朝は7代63年で滅んでしまいます。その後を継いだ尚円(しょうえん)以降を第二尚氏王朝と呼びます。この第二尚氏王朝の第3代尚真(しょうしん)王が父である開祖・尚円を葬るため、1501年、首里城の西に造営したのがこの玉陵です。

板葺き屋根の宮殿を模した石造建造物で、東室、中室、西室と3つの墓室があります。向かって左側にある東室には、歴代の王と王妃が、右側の西室には王の家族が葬られています。そして中室は遺骸を安置する部屋となっています。

管理事務所には、玉陵の解説や内部の写真、沖縄独自の葬送の仕方などが展示・解説されているので、立ち寄ってみましょう。

(DATA)
那覇市首里金城町1-3
098-885-2861(玉陵管理事務所)
観覧時間/9:00〜18:00(入場は〜17:30)
料金/大人300円
交通/首里城・守礼門から徒歩3分

●識名園(しきなえん)

 

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首里城の南、約2kmにある琉球王家の別邸で、18世紀末に建てられました。中国皇帝の使者である冊封使(さっぽうし)をもてなす迎賓館のような役割も兼ねていました。

 

20150330ryukyu004.JPG庭園の中心に心字池が配され、池の周りを散策できる廻遊式庭園となっています。造園形式は日本風ですが、池の中に浮かぶ東屋の六角堂は中国風であったり、池に架かるアーチ状の石橋には琉球石灰岩を使ったりと、さまざまな文化・様式が融合しています。

20150330ryukyu005.JPG庭園内にあるデイゴやガジュマル、フクギ、アコウなどの木々が南国を強く感じさせます。
池を見渡す場所に、冊封使を迎えた「御殿(うどぅん)」があるのですが、訪れた2015年2月は屋根の修復工事中でその姿を見ることは叶いませんでした。

(DATA)
那覇市真地421-7
098-855-5936(識名園管理事務所)
入園時間/9:00〜17:30(10〜3月は〜17:00)
休園日/水曜(祝日、慰霊の日の場合は翌日休)
観覧料金/400円
交通/(モノレール)ゆいレール首里駅からタクシーで約15分、(バス)市内線(2、3、5、14番)、ゆいゆい号で「識名園前」下車すぐ、(車)那覇空港から約11km

●斎場御嶽(せーふぁうたき)

 琉球王国の時代より最高の霊地と崇められてきた神聖な場所。琉球王国の最高位にあたる神女「聞得大君(きこえおおきみ)」には、国王の姉妹など王族の女性がその職に就いてきましたが、その就任の儀式「御新下り(おあらおり)」が行われました。

まずは南城市地域物産館でチケットを購入してから、御嶽に向かいます。入口にある「緑の館・セーファ」で斎場御嶽を紹介したVTRを見てから御嶽内へ。「御門口(うじょうぐち)」から参道へと進みます。

 

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石畳の道を上っていくと、御新下りの儀式が行われた「大庫理(うふぐーい)」があります。
さらに進むと道が二手に分かれ、左側には巨岩がせり出した「寄満(ゆいんち)」が、右側には久高島を望む「三庫理(さんぐーい)」があります。

 

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斎場御嶽といえば、2つの巨石が寄りかかってできた三角形の通路の景色で知られているのではないでしょうか。自然の造り出した造形に神秘的なものを感じます。

 

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このトンネルを抜けると左手に海と久高島を望みます。久高島は、神話によると琉球創成の神アマミキヨが最初につくったとされる島で、古くから神の島と呼ばれています。御新下りの儀式の際には、久高島から白い砂をわざわざ運んできて、御嶽一面に敷き詰めたそうです。

(DATA)
南城市知念字久手堅270-1
098-949-1899(緑の館・セーファ)
開館時間/9:00〜18:00(最終入場17:30)
休息日/2015年は6月16〜18日、11月12〜14日
料金/大人200円
交通/(バス)那覇バスターミナル(旭橋駅)から東陽バス志喜屋線(38番)で約1時間、「斎場御嶽前」下車、(車)南風原北ICから約30分
※入場チケット売場
・駐車場とも南城市地域物産館(南城市知念字久手堅539)にあるので、まずはそちらへ。

 

●沖縄の世界遺産はすべて本島にありますので、レンタカーなら最低2日間で回れるでしょう。しかし、じっくり見るなら3日間は確保したいものです。
●グスクの石垣や歩道など琉球石灰岩が多く使われているので、歩きやすい靴で出かけましょう。
●グスク内や御獄など、今も祈りの場として拝んでいらっしゃる方を見かけます。祈りの邪魔をしないように、マナーを守って見学しましょう。

■日本・2000年登録・文化遺産
■琉球王国のグスク及び関連遺産群
Gusuku Sites and Related Properties of the Kingdom of Ryukyu

 

(文・山本 厚子)

 

 

 

 

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