今日も古墳日和 by 多田みのり

第26回 北陸で古墳文化がどう広がっていったのかを考える手掛かりとなる杉谷古墳群(富山県・富山市)

【古墳プロフィール】
名  称:杉谷古墳群
古墳の形:四隅突出型墳丘墓、前方後方墳、方墳、円墳など
時  代:3世紀前半~4世紀
整備状況:「杉谷古墳の道」が整備
URL:https://www.city.toyama.toyama.jp/etc/maibun/center/topics/stkf/stkf.htm

今回は北陸へと飛び、富山県の古墳をご紹介しましょう。

県を東西に二分する呉羽山丘陵には多くの古墳が築かれており、南西端にある杉谷丘陵には11基からなる杉谷古墳群があります。丘陵上には富山大学の杉谷キャンパスがあり、それらの建物を取り囲むように繁る樹林帯の中に古墳が眠っています。

北東側の入口には「杉谷古墳の道」の案内看板が建てられています。


周濠を含めると148mにもなる四隅突出型墳丘墓の4号墓

なぜこの古墳群を訪ねたのかというと、北陸地方における古墳出現過程を知るうえで重要とされているからです。もっとも早くに築造された4号墓は、弥生時代の終わりの3世紀前半に位置づけられる四隅突出型墳丘墓で、山陰地方以外では最初の発見例として全国的な知名度を誇ります。

四隅突出型墳丘墓とは、方墳の四隅が舌を延ばしたように突出した形をしており、弥生時代中期に出雲地域(島根県と鳥取県を中心とした山陰地方)で発達した墳墓です。山陰と北陸でのみ発見されていて、北陸では福井県6基、石川県2基、富山県10基が現在確認されています。

最新の発掘成果が記載された案内看板が建てられています

11基の古墳は丘陵部北東から南西にかけて点在し、その形にも様々なバリエーションがあります。四隅突出型墳丘墓(4号墳)や前方後方墳(1番塚古墳)をはじめ、円墳(3番塚古墳)、長方墳(6号墳、9号墳)、方墳(2番塚古墳、5号墳、8号墳、10号墳)に、墳形不明2基(7号墳、11号墳)と、まるで古墳のデパートのよう! 「杉谷古墳の道」に沿って森の中を歩くと、次から次へと古墳が現れます。

1番塚古墳は前方後方墳(左手)で、3世紀後半~4世紀頃の築造とされています

8号墳の中央を突っ切るように設置された「杉谷古墳の道」。古墳の中を歩くのは不思議な気分です

9号墳付近にはベンチが置かれ、休憩やお弁当を食べたりもできます

いずれの古墳も富山市教育委員会や富山大学により調査が行われており、出土遺物などから3世紀前半から4世紀にかけての古墳出現期に造られたことがわかっています。出雲と密接な関係を持ちながら、この地で独自の社会構造と文化形成がどのように進んでいったかを伺う貴重な古墳群です。

参考:富山市杉谷6号墳現地説明会資料
杉谷1番塚古墳-第1次調査報告書-
杉谷6号墳-第1次調査報告書-

★古墳日和ポイント★
富山駅からは富山大学附属病院行きのバスを利用すればアクセス良好です。そのままハイキングついでに、富山市ファミリーパークや富山ガラス工房へも足を延ばせます。

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