石垣島の未来へ思いを馳せ、サステナブルに美しい石垣島へ旅をする(沖縄県・石垣島)

「石垣島」と聞いて何が浮かびますか? 青い空、白砂のビーチ、どこまでも透明な海。そう、私もこんなイメージを持っていました。実は、石垣島は5年後、10年後、その先の未来を見据えた地球にやさしい活動を取り入れた「サステナ観光」の取り組みに力を入れています。
3月中旬、石垣市が主催する3泊4日のサステナブルな観光モデルツアー「サステナ島旅ISHIGAKIJIMA」に参加してきましたので、その様子をご紹介します。

往きの飛行機「ANA Green Jet」より。南の海らしい光景

1.通常の観光客は目にしないビーチの現実。ビーチクリーンとアップサイクル
2.地球にやさしい国内初のSAF燃料のフライトで石垣島へ
3.リネン類交換不要でサービス券をもらえる、港近くの「ホテルミヤヒラ」
4.地産地消の食事と民謡ライブを堪能「舟蔵の里」
5.循環型農業にも取り組む泡盛の老舗醸造所「請福酒造」


1.通常の観光客は目にしないビーチの現実。ビーチクリーンとアップサイクル

「八重山諸島全体で年間約500トンもの海洋プラスチックゴミが漂着している」。

こんな衝撃的なことを耳にしました。管理されないビーチには毎日膨大な量の海洋ゴミが漂着し、それらは行く当てもなく、ただ島に埋め立てられています。この現実、知らないですよね。私も驚きました。この問題を知るため、ビーチクリーン体験をしてきました。

●ビーチクリーン
ビーチクリーンをアテンドしてくださったのは、石垣島が拠点の団体「縄文企画」さん。代表の田中秀典さんは、もずく漁師を経て石垣島にもずく専門店を開くため、岐阜県か
ら石垣島に移住された異色の方。
しかし、海面水温の上昇や地球温暖化に目が向くようになり、「何かできることはないか」と考えた時にビーチクリーンをやってみようと思い立ったそう。レジ袋が有料化となった2020年7月からビーチクリーンをたった一人で始めます。今では賛同する仲間も増え、学校行事として行うことも多くなったとか。そして、私がビーチクリーンを体験した「990日目」へ今も続いています。

「ビーチクリーンを多くの方に体験してもらうことで、漂着ゴミを“隠す”のではなく、オープンにし、地域の問題、地球の問題として捉えていただきたい。ビーチクリーンではなく、アースクリーン。そしてサステナブルな行動に参加すること自体に、評価を得られるようにしたいですね」と、真っ黒に日焼けした姿で田中さんは笑顔を浮かべながら話します。

2人1組でビーチクリーンをすると、たった30分であっという間に漂着ゴミが積みあがっていきます。発泡スチロール、漁具やブイ、ガラスの破片。一番多いのがペットボトルとキャップ。これらは海流に乗ってやってくる海外からの漂着物がほとんど。その一方、日本から出る海洋ゴミは、遠いハワイまで流され、ハワイの海岸で日本のゴミが大量に見つかっているそうです。

パッと見ると美しいビーチも、拾い始めると次々にゴミが集まる。私も参加(右下)

軽いゴミは浮かびながら漂着するため回収できますが、ガラスなどの重いものは海底に沈み回収することはかなり難しく、近年大きな問題となっている微細なマイクロプラスチックゴミの回収は現在はまず無理だとも言われます。
まさに地域の問題ではなくなり、地球全体の問題なのです。それをまざまざと突き付けられたビーチクリーン体験となりました。

ゴミを集めた後は分別する。圧倒的に多いのはペットボトルとプラスチックだった

●アップサイクルワークショップ
今回特別に、縄文企画で開催されるアップサイクル(廃棄物や不用品を新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること)のワークショップにも参加。

ビーチクリーンで回収されたペットボトルの大量のキャップを、色分けして粉砕し、射出成型機(インジェクションマシン)で高温で溶かして固め、さまざまなグッズを作る体験です。コースターや、ペンダントトップやキーホルダーにもなるフィッシュフックなどなど。コースター一枚作るのに、約20個のキャップが使われます。


漂着ゴミのキャップで作ったとは思えないほどステキなキーホルダー(右下)に

どんなカラーリングのものが完成するかはその時次第。世界でひとつだけのグッズが作れるわくわくする体験でした! ゴミ問題をぜひ自分ゴトとして捉えるためにも、ぜひ体験してみてください。

縄文企画 https://jomontours.com/

2.地球にやさしい国内初のSAF燃料のフライトで石垣島へ

今回のツアーでは羽田→石垣島の直行便には全日空の「ANA Green Jet」を利用。今回、国内で初めてツアー参加者の航空移動で発生するCO2を、バイオマスや廃食油等から製造される“持続可能な航空燃料”「SAF(サフ)」により実質ゼロとする取り組みも実施されました。
また、「ANA Green Jet」の機体表面の一部には飛行中の空気摩擦抵抗を低減する“サメ肌”のような特殊加工が施され、これもCO2排出量低減につながります。

ANA Green Jet

SAFはまだ、供給量やコスト面など様々な課題をクリアする必要があるそうですが、いつかすべての航空便で地球にやさしいフライトが現実になるよう願うばかりです。
感想として加えると、座席の快適性やフライトの安定感、飛行時間など含め、当然ですがまったく通常の飛行機とかわらないのでご安心を(笑)
ANA Green Jet https://www.ana.co.jp/ja/jp/brand/ana-future-promise/ana-green-jet/

また、石垣島の島内移動には、石垣市に生産拠点を持つユーグレナ社の次世代バイオディーゼル燃料を使用した、かびら観光交通のバスをチャーター。この次世代バイオディーゼル燃料は、使用済み食用油や微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)から抽出した油などのバイオマスから作られています。移動する際もサステナブルな取り組みを行っています。

3.リネン類交換不要でサービス券をもらえる、港近くの「ホテルミヤヒラ」

南ぬ島石垣空港からの直行バスや八重山の離島への船が発着する離島ターミナルの目の前、そして石垣島の繁華街にほど近い「ホテルミヤヒラ」が今回の宿泊地でした。観光するのにとても便利な上に、こちらのホテルも様々なサステナブルな取り組みを行っています。

近年、環境保護の面で連泊の場合は清掃を省略するホテルが増えていますが、ホテルミヤヒラではクリーニングサービスが不要の場合、ホテル内の飲食店で利用できるサービス券をもらえます。

屋根の上にシーサー!

他にも、“ゴミになるものは持ち込まずに持ち帰る”ことや、手付かずの自然を体験することで自然を守る意識を観光客に持ってもらうため、無人島「カヤマ島」ツアーも行っています。
また、地産地消の取り組みも。滞在中の毎朝の楽しみが、八重山諸島で採れた食材をたっぷり使った朝食ビュッフェでした。沖縄の和牛の牛丼、島豆腐やゆし豆腐、ジーマミー豆腐、八重山そばやチャンプルー、サーターアンダギーやブルーシールアイスなど、食べ過ぎ注意!なほどバラエティ豊富。八重山の旬を心おきなく堪能できます。
加えて、疲れた体を湯船でゆったりと癒せる大浴場があるのもうれしいポイント。便利で美味しいホテルに滞在することが、結果的に石垣島を守り、地球にやさしくすることにつながる。これもサステナブルな島旅ならではです。

ホテルミヤヒラ https://www.miyahira.co.jp/

4.地産地消の食事と民謡ライブを堪能「舟蔵の里」

2日目の夕食は、約3千坪の敷地に大小さまざまな古民家を移築した食事処「舟蔵の里」でいただきました。地元産の食材をふんだんに使用した八重山の伝統郷土料理や、パイナップルの搾りかすを飼料にした希少なアグー豚の陶板焼きなどの美食を堪能。このアグー豚は、地元の「やえやまファーム」が提供したもの。やえやまファームでは、飼育されたアグー豚の糞尿を肥料化し、その肥料で農作物を育てる地産地消型の循環型農業を行っています。
夕暮れ時、舟蔵の里裏手のビーチ「星見ヶ浜」で見る、沈みゆく夕日には言葉が出ないほど感動しました。また、美味しい食事のお供は、石垣島在住の唄者・金城弘美さんによる民謡ライブ。三線、太鼓、笛、そして歌声に魅了された一夜となりました。

舟蔵の里 https://www.funakuranosato.com/

5.循環型農業にも取り組む泡盛の老舗醸造所「請福酒造」

伝統的な「直火釜蒸留法」を守りながら、最新技術を取り入れてさまざまな新しい酒造りに取り組む、1949年創業の泡盛の老舗醸造所「請福酒造」への見学も。

請福酒造を代表する泡盛「請福」、石垣島限定販売の「古酒いしがき」、蒸留酒泡盛と蒸留残留液で醸造した純米酢「しまのす」などのさまざまな製品を、工場見学とともに直売店で購入できます。製品はヨーロッパやアメリカへの輸出もかなり多くなっているとか。

そして、約20年前から請福酒造が取り組んでいるのが、泡盛製造時のもろみ(搾りかす)を牛や豚の飼料として土に還元し、サツマイモやサトウキビなどを育て、これらを原料に地酒を造る循環型農業。県産の芋と県産の黒糖を用いて三次仕込みで造られた芋酒「IMUGE.(イムゲー)」などの製品開発にもつながっています。
さらには、請福酒造では輪作や休耕地の利用、原料を余らせず且つ売り上げにもなる石垣島紅芋を使った芋けんぴなどの菓子類を製造予定です。現在では県内5社の醸造所を巻き込んでより広く農業への取り組みを行っているとのこと。小さな石垣島から誕生した新しい取り組みや開発力が、世界へと羽ばたく姿に心が躍ります。

泡盛を試飲後に直売店で購入できる

請福酒造 https://www.seifuku.co.jp/


「サステナブル」と聞くと、ちょっとかたくるしく感じてしまうかもしれません。でも、タオル交換をスキップすること、自分が訪れる場所をきれいにすること、地域で採れる食材をおいしく残さずいただくこと、こんなちょっとした行動が地球にやさしいことにつながります。
今回の「サステナ島旅 ISHIGAKIJIMA」ツアーの催行は終了していますが、「石垣島にはこんな面もあるのか!」と、少し意識を持って訪れるだけで、一般的な観光旅行だけでは触れられなかった、今まで気づかなかった豊かな一面を持つ石垣島の姿を見られるでしょう。美しい石垣島を未来へ永遠に残すため、サステナブルな旅を考えてみてはいかがでしょう。そして一度訪れれば、石垣島の魅力にはまって何度も訪れたくなるはずですよ。

サステナ島旅 ISHIGAKIJIMA  https://sasutenashimatabi.com/

取材・文:塩見有紀子

石垣島で体験したアクティビティの紹介記事はこちら
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