
新潟県出身のタレント、俳優、農業ジャーナリスト、新潟食糧農業大学の客員教授をしている大桃美代子です。IFAJ(The International Federation of Agricultural Journalists)国際ジャーナリスト会議のケニア大会に参加してきました。そのリポートを3回にわたり、ご紹介します。第1回はこちら。第2回はこちら。
ケニアの農業の取材です。ケニアと聞いて思い出すのは何でしょうか?コーヒー?実はケニアのコーヒーは減少傾向にあり、増えているのが「紅茶」なんです。
紅茶文化が根付くイギリスの植民地だったこともあり、お茶を栽培し、紅茶の輸出を行っています。ナイロビのホテルを出発して高山地帯まで約3時間のバス移動。舗装されていない山道は雨季になるとドロドロになり、お茶を運ぶのが大変だそうです。とは言いつつ、ケニアのお茶の生産量は世界第3位。紅茶がメインですが、ウーロン茶も生産しています。同じ茶葉から作る緑茶も少しありますが、試飲したら日本茶のようなコクはなく、緑色の薄いお湯のような味。改良の伸び代を感じたお茶の味でした。
お茶は標高1500~2700mの高地で栽培されています。舗装されていない山道が続く場所では、上下左右の揺れに乗り物酔いに。流通はさぞかし大変であろうと、推測。
その先に現れた、KAGWE Tea Factoryが取材先です。1981年設立。8300人の小規模農家が集まり株主となり、栽培、加工の工場となっています。


お茶畑も近くにあり、朝露の乾く10時過ぎ、葉が陽を受けて輝き緑の絨毯が広がっていました。なだらかな山ごと農場です。

日本のお茶畑のように丸く剪定されておらず、高さを揃えて植えられ、細い道を作業する人が分け入って茶摘みをするスタイル。
カゴを額にかけて首で支え、つんだ茶葉を上から入れていきます。日本の茶摘みはカゴを背負っているイメージですが、ケニアバージョンは額と首で支える。実際お借りして茶摘みをしてみると…首の荷重圧がすごい。

お茶の木の高さが、腰くらいで揃えられているので、カゴを高めに設定しないと木にぶつかってしまいます。そのため、額で支えカゴが上に来るようにして作業をしているようです。
カゴいっぱいになると、生葉は20kgの重さになるそうです。早朝から作業を始めて、炎天下での茶摘み。茶摘みの女性たちは、日焼け防止対策は一切無く、肌が強いとは言え気にならないのか?と女性として気になりました。作業者はほぼ若い女性で、子育て中の女性は子供を近くに置きながら作業(児童労働禁止なので子供は作業をしない)。託児所の不足も課題となっています。

摘んだ茶葉は、二人乗りのスクーターで集配場に運ばれ(この時男性登場)、その日のうちに質、量が検査され、電子決済で入金。このスピード感はがすごい。ケニアは「M-pesa」という電子マネーでのやり取りが盛んで、即座に携帯で確認できるようになっています。
女性がお茶摘みをして、男性の携帯電話にお金が入る。ジェンダーギャプがケニアの課題でもありますが、農村には貧富の格差、男女の収入格差が大きく存在しています。

企業も農民へのマネーリテラシー教育、中学教育のための奨学金制度など、格差解消の活動をしているとのことでした。ケニアの高品質な紅茶は、女性たちが素手で太陽を浴びながら仕事をした産物。ケニアのお茶を入れるたび、ターバンをまいて作業する女性たちが浮かびます。
ジェンダーギャップが安価な労働力に繋がって、日本のティータイムを彩っている…。アフリカで栽培され、多くの方の手を経て、我が手に届いたケニアティー。一杯の紅茶の中に感じた、グローバル、ジェンダー、国際関係など、大きな解決策はできませんが、フェアトレードで作られた製品を購入するという、購買活動で意思を示していきたいと感じた、ケニアの紅茶畑でした。
取材・文/大桃美代子







