日本遺産認定の「石見神楽」を巡る島根の旅!(前編)(島根県・大田〜有福温泉)

赤い石州瓦の石見銀山・大森の町並み

島根県西部の石見(いわみ)地方を美味しい海の幸や、まだ知られていない魅力の発見とともに、旅をします。石見銀山エリアがある大田市、有福温泉街の江津市、石見神楽の聖地である浜田市の伝統工房や神秘的な石見畳ヶ浦まで巡った旅を、前編・後編でお伝えします。

世界遺産登録の石見銀山地域を散策

大田市は、島根県のほぼ中央に位置します。ここには、かつて世界的に有名な銀山で栄えた世界遺産「石見銀山遺跡とその文化景観」があります。

かつて銀を採掘した間歩(まぶ)と呼ばれる坑道跡で最大級の「大久保間歩」がある銀山エリアのほか、町並みエリア、温泉津エリアがあります。

レトロな町並みエリアは、旅先の散策にぴったり。電動自転車もあるレンタサイクルもあるので、足を延ばして鉱山遺跡の間歩を訪れて往復することもできます。

江戸時代の代官所や武家・町屋などが並ぶ通りには、龍の天井画がある城上神社、国の重要文化財である商家の熊谷家住宅、武家屋敷を復元した旧河島家などの見どころがあります。高台に建つ観世音寺の石段を上ると、赤い石州瓦の大森の町並みを一望できます。

歴史的な町並みに溶け込むように、センスの良いモダンな店がいくつもあります。「石見銀山 群言堂 本店」は、アートギャラリーを持ち、オリジナルブランドを中心にファッションや雑貨を揃え、中庭に面したカフェがあります。地元の素材を用いたスイーツは大人気です。

 

「群言堂」島根県産りんごを使ったタルトタタン。限定メニューは旬で変わる

「ベッカライ・コンディトライ・ヒダカ」は、ドイツ国家公認マイスターである店主が本格的なドイツパンや美味しい焼き菓子を作っています。

「ベッカライ・コンディトライ・ヒダカ」の大山生クリームスコーン

食べる薔薇! 「奥出雲薔薇園」

現在の三瓶山である佐比売山(さひめやま)がご縁を繋いだ出雲の国引き神話にちなんで、「さ姫」という神秘的で香り豊かな食用ブランド薔薇を開発したのが、ここ「奥出雲薔薇園」です。

農薬を一切使わず、オーガニック認証を受けている「奥出雲薔薇園」の薔薇は、自然の中で食用薔薇を育てています。観賞用の薔薇園ではありませんが、5~7月頃の最盛期は最高の美しさを見せ、毎朝摘み取って出荷をする繁忙期です。

一般的に観賞用の薔薇は美しいが、「食べる薔薇」という薔薇の新しい価値観を広めることを使命としています。食用薔薇の機能性に注目し、さまざまな加工の材料として提供しているのは、全国でも稀少な活動です。

「奥出雲薔薇園」の薔薇は、ホテルリゾート、パティシェのスイーツ、シェフの料理など、飾り付けではない食べる目的で提供されています。その需要は、県外や海外にも広がっています。

食べる薔薇の加工品

その他、さまざまなオリジナル製品を開発しています。自社の薔薇を用いたジュースやロースソルト、化粧品メーカーと開発協力したスキンケアの化粧品なども出しています。島根県は、お茶も有名な地。地元の農家とタッグを組んで、出雲や松江の生産者のお茶とブレンドしたハーブ紅茶を都心のセレクトショップや百貨店、カフェなどに出しています。

名酒「石見銀山」を世に出した「一宮酒造」

 島根県は、日本酒の発祥の地とも言われています。石見銀山が世界遺産に登録される以前から、「石見銀山」という名前の日本酒を出していた、老舗の「一宮酒造」。石見銀山のおひざもとの大田市に酒蔵を構え、120年以上の歴史を持ちます。人気の「石見銀山 特別純米」は、栽培が難しく姿を消した幻の酒米「改良八反流(かいりょうはったんながれ)」を地元で復活させ、逸品に仕上げた純米酒です。

時代に合った新商品の酒造りを続ける、杜氏の浅野理可さん。先代から受け継ぎ、地元出身のご主人と結婚し、夫婦でともにお酒造りをしています。

島根県産米を使用し、目指すのは食卓を明るく楽しくするお酒。先代に学んだ仕込みの方法を守りながら、麹の作り方などを変え、アナゴのような地元の名物料理とも合うような味わいを目指して、進化を続けてきました。その結果、日本酒の品評会でも受賞するまでになりました。新たな主力は、自分の名前をそのまま酒名に名付けた「理可(りか)」です。


先ほどの「奥出雲薔薇園」の食用薔薇「さ姫」を使用した「薔薇姫」や、低アルコール日本酒の「雪香(ゆきか)」も開発。日本酒に馴染みのない方にも広く飲んで欲しいという願いが込められた発泡清酒「雪香」は、シャンパン製法の瓶内二次発酵で、日本酒酵母の力で作る独自の発酵技術を用いています。変わらないものはそのまま大事に受け継ぎ、ここでしか作れない日本酒を目指しています。

大田の名物、アナゴのランチ! 「日本料理 はたの」

島根県の大田市で水揚げされるアナゴは体長50㎝を超える大きくて立派な体格のものが多く、「大田市の大アナゴ」と呼ばれます。身が厚くて脂がのっていて、ふわっとした肉厚な食感が優しい味わいです。煮る、焼く、揚げる、干す、炊くなど、大田市ではそれぞれの料理店でアナゴ料理の数々が提供されています。

会席料理膳の数々。上品なアナゴの蒸し物など

 「日本料理 はたの」では、アナゴの皮を焼いて酢味噌で和えたもの、長芋と合わせた蒸し物、素焼きの天ぷらなどが味わえます。「一日漁」と呼ばれる日帰りの伝統の漁業で水揚げされる大田の天然アナゴは、鮮度がいい状態で市場に出回るので、新鮮です。

有福温泉街の温泉リゾート「アウルリゾート有福温泉」

有福温泉街

江津市にある有福温泉街は、歴史あるレトロな建築の御前湯ほか外湯(公衆浴場)があり、周辺に美味しい食事やモダンな宿泊温泉施設ができているエリアです。有福温泉の湯は柔らかく、湯上がりの肌はすべすべに。1万年前の太古の天水(雨水)がちょうどよい温度で湧き出る奇跡の湯は、「美肌の湯」とも言われています。

宿泊は、大田市から有福温泉エリアにある新しくオープンした「アウルリゾート有福温泉」へ。プライベート半露天風呂で部屋に引いた温泉を楽しみ、美味しい県産オリジナルメニュの食事やお酒がいただけます。エントランスには、地酒のテイスティングができるコーナーもあります。

「アウルリゾート有福温泉」

エントランスの日本酒テイスティング

島根の特産品をふんだんに使ったアウルリゾートダイニングの「アウル御前」には、アウル特製 海鮮鍋、奥出雲ポークヒレカツ、島根和牛、のどぐろ、出雲そば、アウル名物 サラダタワーなどが並びます。前菜は、瀬戸内天然鯛や島根名物の「赤天」などを用い、目にも鮮やかです。朝食にも、地元の鯖など県産食材が並びます。

ダイニング「アウル御前」、右下は朝食 

アウルリゾート有福温泉 https://owlresort.jp

後編は、いよいよ石見神楽を鑑賞。海の幸を堪能しながら、浜田市で神楽を支える伝統工芸を巡ります。続きは、後編をお楽しみに!

取材・文/マドモアゼル安原

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