スイス・ロマンチック紀行 クリスマス一色のバーゼルとインターラーケンを訪ねる (スイス・バーゼル、インターラーケン)

ヨーロッパの冬の風物詩といえばクリスマスマーケットです。ドイツやオーストリアが起源とされ、11月下旬からのアドベント(降臨節)に開催。長い冬を華やかに彩り、誰もがうきうきとクリスマスの準備に取り掛かります。寒い冬だからこそ特別でロマンチックな体験ができるというもの。スイスのふたつの街のクリスマスシーズンをご紹介します。

中世の面影を残すバーゼルを歩く

 スイス北西部、ライン川沿いに位置するバーゼルはチューリヒ、ジュネーブに次ぐスイス第3の都市です。バーゼルはドイツ語圏ですが、フランス・ドイツとの国境がある街なので、フランス語もちらほら聞こえてきます。近代的な建物がある一方、旧市街は中世の面影を色濃く残し、新旧がうまくミックスされる魅力的な街です。

ではさっそく街中を歩いてみましょう。

まず目指すのは街のシンボル、ふたつの塔があるバーゼル大聖堂。ロマネスクとゴシックの混在する建築物で、美しいステンドグラスやロマネスク様式の回廊、さらにここから眺めるバーゼルの街並みも見どころです。

正面奥がバーゼル大聖堂

バーゼル大聖堂の内部

次に外せないのが14世紀からの歴史を誇るバーゼル市庁舎。現在のゴシック様式の建物は16世紀に建て替えられ、17世紀初頭と19世紀末に改修されました。壁面のフレスコ画が美しく、クリスマスシーズンは中庭にクリスマスツリーが飾られます。

 

旧市街は中世の世界に迷い込んでしまったような雰囲気が味わえます。あちこちで目にするのはバーゼル州のフラッグ(州旗)。左向きの黒い「バーゼルの杖」で、バーゼル大司教の杖に由来するそうです。街歩きの際にはちょっと気にして歩いてみてください。

また、クリスマスらしい、こんなものも見つけましたよ。願い事を書くウイッシュ・ツリー。日本の七夕のようですね。Love & Peaceが世界中に届きますように!

旧市街は歩くのにちょうどいい大きさ。なかでもぜひ散策してほしいのがシュパーレンベルク通りです。ここには一年中クリスマスオーナメントを販売する有名店「ヨハン・ヴァンナー(Johann Wanner Weihnachtshaus)」や250種類ほどのチーズを扱う「グラウジ(glausi's)」などがあります。

さらにクリスマスシーズンにだけ特別に現れるのがマジカル・コートヤード(魔法の中庭)です。ちょっとした路地や敷地がクリスマスらしい空間に早変わり! なかにはグリューワイン(ホットワイン)やコーヒーなどを楽しめるスペースになっているところもあります。夜はライトアップもされ、クリスマスマーケットで疲れた体を休めることもできます。

また、バーゼルは美術館の多いアートの街としても知られています。なかでもおすすめはティンゲリー美術館。ティンゲリーはスイスの現代美術・画家・彫刻家で、廃材を使いキネティック・アート(動く美術作品)を生み出すことで知られています。バーゼル市立劇場の前庭には「謝肉祭の噴水」という機械式の彫刻があり様々な水遊びを表現しています。

ティンゲリー美術館には多種多様な作品が並び、とにかく楽しい! 童心に帰ったり深く考えさせられたりと、時間を忘れてしまいます。美術館の前には妻で芸術家のニキ・ド・サンファルの作品があり、館内に展示される資料からも仲の良い夫婦だったことがわかります。

 

老若男女が集うバーゼルのクリスマスマーケット

 バーゼルのクリスマスマーケット(2025年は1127日~1223日開催)はスイス最大規模といわれ、2つのメイン会場があります。ひとつはバーゼル大聖堂のあるミュンスター広場、もうひとつはトラムが行き交うバールフュッサー広場です。どちらも多くの屋台が並び、クリスマス用のデコレーショングッズや雑貨、グリューワイン、グリルしたソーセージなどなど、目も舌も楽しめます。夜になるにつけ、会社帰りの友人が集まり、家族が繰り出しと、誰もが思い思いの時間を過ごしています。これぞ本場のクリスマスマーケット! 

ただしクリスマスマーケットのような人ごみはすりなどが多く注意が必要です。スイスはほかのヨーロッパの国に比べると治安がいいのですが、やはり用心は必要です。

ミュンスター広場のクリスマスマーケット

バールフュッサー広場のクリスマス・ピラミッド

 

インターラーケンでのんびり冬時間

 インターラーケンはスイス中央部の高山地帯、ユングフラウ地方の玄関口で、ヨーロッパの最高地点の鉄道駅・ユングフラウヨッホへ向かう交通の起点です(ユングフラウヨッホの記事はこちら)。 12世紀に建てられた修道院とともに造られた街は、1819世紀にかけてのアルピニズム・山岳観光ブームから鉄道が敷設され、国際的な山岳リゾート地として発展。バイロンやゲーテなどの文人、メンデルスゾーンやブラームスなどの音楽家、そして王侯貴族たちも訪れました。

名峰に囲まれるインターラーケンの街

街は2つの湖は挟まれ、インターラーケン東駅とインターラーケン西駅の間に広がります。両駅を結ぶメインストリートにはスイスの高級時計のブランドをはじめ多数のショップ、レストランやホテルが並び、世界中からの観光客で賑わいます。そのなかでぜひ立ち寄っていただきたいのが「トップ オブ ヨーロッパ フラッグシップストア」。スイスを代表するチョコレートブランドのリンツ、カジュアル腕時計のスウォッチ、アーミーナイフのビクトリノックス、木彫りの牛やカウベルなど定番のスイス土産なども入手できます。

インターラーケンの街なかでは観光用の馬車が走り、リゾート地としての優美な時間が流れます。そんな雰囲気を象徴するのがメインストリートの中間あたりにある「ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル&スパ」です。19世紀の創業、クリスマスのデコレーションが素敵なので、館内のゴージャス感も味わってみてください。

このホテルの近くには宮殿を思わせるコングレス・クアサール・インターラーケンがあり、かつての社交場の面影を留めながら、現在もこの地方最大のコングレスセンターとして会議やイベント会場としての役割を担っています。毎冬、この前庭でクリスマスマーケットが開かれます(2025年は1219日~31日)。

こじんまりとしたクリスマスマーケットは、それだけでフレンドリー。子どもたちが喜ぶプレイスペースがあり、屋台の方とも話が弾み、私はチーズとジンジャーの蒸留酒を購入。さらにグリューワインで体を温めました。

さて、スイス訪問の際には便利でお得なスイストラベルパスがおすすめです。スイス国内の主な鉄道、バス、湖船、都市交通が乗り放題で利用でき、主な山岳交通路線も半額で購入できるなど特典がたっぷりです。

スイスの冬は長く寒い。だからこそ味わえるハートウォーミングなひととき。誰もが笑顔でクリスマスの到来を心待ちにしています。そんなヨーロッパの素敵な文化を体験しに、出かけてみてはいかがでしょうか。

 

取材協力

スイス政府観光局バーゼル観光局インターラーケン観光局ユングフラウ鉄道グループ

 

 取材・文/関屋淳子 写真/竹崎恵子

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