2025年の夏は殊更に暑く、まだしばらく暑さが続きそうです。迫力のある景観が楽しめる、心地よい渓谷歩道をご案内いたします。
栃木県日光市、鬼怒川の上流部に位置する龍王峡。鬼怒川温泉と川治温泉の間、約3㎞にわたり、深く切り立った谷を青白い水が流れる、美しい景観が魅力です。約2200万年前に海底火山の活動で噴出した火山岩が、鬼怒川の流れで浸食されてできた峡谷と言われています。この景観を龍の姿に見立て、龍王峡という名前がつけられました。
峡谷の景観を楽しめるように、龍王峡自然研究路が整備されています。高低差はあまりないですが、山道を歩く箇所もありますのでトレッキングシューズなど歩きやすい靴でお出かけください。気温の高い時期はヤマビルが出没します。肌が露出しない服装で、市販のヤマビル忌避剤を用意するといいでしょう。
遊歩道から対岸の岩壁を流れ落ちる滝が眺められる
龍王峡駅をスタートし、食堂や土産物屋が並ぶ商店街の前を進んで龍王峡自然研究路の入口へ。階段をまじえた舗装路を下り切ると自然研究路にたどり着きます。川の右岸、左岸両方に散策路が設けられています。どちらを歩いてもよいですが、虹見橋を渡って右岸(下流から見て左側)の道を進むと、ところどころで岩壁を流れ落ちる滝を見ることができます。
木道が敷かれるなど整備された遊歩道ですが、道が分かりづらかったり、歩きにくい箇所があるので、注意深く進みましょう。駅から歩き始めて30分ほどで、むささび橋へ。龍王峡随一の絶景スポットです。露出した岩壁と、谷底を流れる青白い渓流、木々の緑と青空が広がるすばらしい景観が広がっています。橋のたもとにはむささび茶屋があり、店前のベンチで一息ついていくのもよいでしょう。
むささび橋から下流方向の眺め、岩壁と清流のコントラストが美しい
むささび橋からは平坦で歩きやすい道になり、進行方向左側に峡谷を眺めながら歩きます。地質や岩石が好きな人には見どころの多い区間です。ところどころに景観や地質、川の浸食によってできた奇岩怪石などの解説板があるので、読んでいきましょう。
散策路のすぐ脇、見事な柱状節理が見られる
散策路から峡谷を眺めていくと、岩の色が場所によって異なっているのに気がつきます。火山で噴出した岩石の違いによるもの。流紋岩の白龍峡、凝灰岩の青龍峡、安山岩の紫流峡と、別名がつけられています。
細い廊下状になっている「兎はね」。このあたりは凝灰岩の青龍峡
遊歩道を進み、白岩半島へ。川が大きく屈曲しており、鬱蒼とした樹林が広がっています。散策路から少し寄り道して河原に下り立ってみましょう。
白岩半島付近では河原に下りることができる
白岩半島を出てしばらく進むと舗装路に出ますので、「川治温泉駅」方面に進んでいきます。いくつか小さいトンネルを抜け、さらに進むと川治温泉駅に到着します。川治温泉駅そばに小網ダムがあり、山々に囲まれたダム湖を眺めることができます。
小網ダムの上流は青々とした水をたたえたダム湖
川治温泉の温泉街は、川治温泉駅のひとつ先、川治湯元駅にあります。ダム湖右岸(下流から見て左側)の遊歩道を歩いて、川治湯元駅まで足を延ばしてもよいでしょう。歩きやすい散策路を30分ほど進むと黄金橋へ。鬼怒川と男鹿川が橋の付近で合流するのが眺められます。ここから川治湯元駅までは5分ほどの道のりです。
川治温泉の温泉街は、駅からさらに5分ほど歩いたところにあります。江戸時代に開湯し、会津西街道を歩く旅人や、地元の人々に愛されてきた温泉です。温泉宿に泊まって山のいで湯の雰囲気を楽しんでいきたいものです。日帰りなら、黄金橋の近くの日帰り温泉「薬師の湯」に立ち寄っていくのもよいでしょう。
風情あるたたずまいの日帰り温泉「薬師の湯」
【西沢渓谷:山歩きデータ】
アクセス:野岩鉄道会津鬼怒川線龍王峡駅下車
コース:龍王峡駅…むささび橋…白岩半島…小網ダム…黄金橋…川治湯元駅
歩行時間:約3時間10分
体力度★★☆ 技術度★☆☆