「やさしい温泉」人、動物、地球にも! by 西村理恵

第9回 肉も魚がなくても感動のオーガニック料理!温泉ゲストハウス「yuzaka」(秋田県・大湯温泉)前編

まるでお皿に花が開いたような前菜。すべてオーガニックな食材です

長い歴史を持つ南部藩の保養温泉地、大湯をご存知でしょうか。

岩手と青森に県境を接する秋田県鹿角市の真ん中あたりに位置し、近くには縄文時代の祭礼地「大湯環状列石」や、数々の出土品が発掘されている謎の山「黒又山」など、パワースポットが点在しています。

とは言え、大湯は、一見するとどこにでもありそうな小さな町。十和田湖へと通じる国道103号に沿うように4ヵ所の共同浴場と7軒の宿がありますが、温泉街らしき街並みはなく、車で通っていると、「あれ、どこが大湯?」と思ってしまうかもしれません。

バス通りから横道へと入った静かな場所。すぐ前は共同湯「下ノ湯」

そんな大湯の一角に、2019年8月、誕生したのが今回紹介する温泉ゲストハウス「yuzaka」です。「ひと目会った時から」通じるものがあったと言う諏訪さんご夫婦が作りあげたこちらの宿、開業すぐから注目を集め、オープン初年には、台湾やタイ、欧米などからのゲストが数多く訪れたのだそうです。その理由の一つが食事。動物性の食材や調味料を使わず、近隣の農園や自家菜園で栽培しているオーガニックな野菜や豆、雑穀などを調理し提供してくれるのです。

食感といい味わいといいきびとは思えないハンバーグ。繋ぎは南部地粉など

甘味が深い塩麹のポトフ

取材日の夕食は、新玉ねぎと根菜の塩麹ポトフ、もちきびとたかきびで作るハンバーグ、発芽玄米のゴハンなどなど。最初に出てきた前菜は、キクイモとフキノトウの揚げ物に人参ラペなど8品の野菜料理を、絵を描くように美しく盛り付けていて、ひと口ひと口、大事に食べたくなる美味しいひと皿でした。きびのハンバーグも、コリコリっとしたナッツの食感が心地良く、トマトソースとも味がよくなじみ、たいへんおいしゅうございました。最後まで食べるとお腹がいっぱいになりますが、もたれる感じはありません。お肉や魚がないと物足りないのでは?と心配する人にこそ、食べてほしいお料理です。

客室に使い捨て歯ブラシはありません。
宿内にあるショップで、プラスティック未使用のバンブー歯ブラシを買って
試してみるのもオススメです

もちろん、こちらはベジタリアンのためだけのゲストハウスではありません。基本は素泊まりなので、自炊のできるキッチンもありますし、外のお店で食べることもできます。夜はバーになり、日本や世界の自然派ワインを楽しむことができます。お昼の時間帯には、近隣で人気カフェを営んでいたKotoriusagiさんが、古民家カフェとしてシェア営業をしています。満月と新月の朝にはヨガの体験も行われるほか、サステナブルイベントの会場になることもあります。フロントの奥には、オーガニックな洗剤sonettの量り売りや、バンブー歯ブラシ、バンブーストローなど環境にやさしい商品を販売するゼロ・ウェイストショップも設けられています。

昼間のカフェは曜日限定営業。隠れ家カフェとして地元ッ子に人気です。
夕食や朝食もこちらでいただきます

昼も夜もこの場所に、地元や近隣の人たちが集まり、そこに宿泊者も加わって、ステキな雰囲気が醸し出されているのです。その中心にいるのが諏訪さんご夫婦。大湯での暮らしを無理なく楽しんでいる姿を見ていると、「こんな生活もいいなぁ」と思えてきます。「Nature&Sustainable」をベースにしたステキな小宿を、間口を広くして運営している様子は、温泉宿の新しい可能性を示しているように思えました。

yuzaka ~natural & sustainable inn~

電話:0186-22-4825 住所:秋田県鹿角市十和田大湯下ノ湯19

https://www.yuzaka.info

5月アップ予定の後編に続きます

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