塩原を代表する露天の一つ。元泉館の男女別露天
栃木県北部・塩原温泉の山の奥、元湯地区には3軒の宿があり、それぞれ特徴のある温泉が湧いています。そのうち元泉館は最も規模が大きい宿。三階建てで客室は和洋室と和室とがあり、全室にシャワートイレが付いています。秘湯ですが普通に気持ちよく泊まれます。
自然湧出している濃厚な硫黄のにごり湯に惹かれて訪れる人が多い宿で、私も何度も訪れています。ある日、社長の君島さんが玄関前でキツネと一緒にいるところをお見かけしました。「怪我をしたキツネを預かっているんですよ」とのこと。その数年後に訪ねた時には、ムササビの赤ちゃんと君島さんがフロントにいて驚いた記憶があります。
社長の君島弘晃さん。保護猫レオくんと記念撮影
お話をうかがったところ、君島さんは2013年より、栃木県の傷病野生鳥獣救護ボランティアとして活動をしているのだそうです。今までカワセミ、ツバメ、キツネ、タヌキ、ムササビ、オオルリを預かり、自然へと帰すお手伝いをしてきました。2時間おきにご飯をあげたり、赤ちゃん動物はお尻をトントンと叩いて排便をうながしたりと時間がかかる活動です。飛べなくなったツバメを預かった時には、寿命が尽きるまで4年間を一緒に過ごしたのだそうです。以前に玄関前で見かけたキツネは、1年後、元気になって森へと帰って行き、雪の多い冬を乗り切ったあと、宿近くにやって来て、懐かしそうに近寄ってきたのだそうです。(ひと月ほど周囲をウロウロしてからまた森へと帰っていったのだそうですよ)
キツネ、タヌキ、ムササビ、オオルリなど
君島さんが親代わりになって育てた動物たち
心やさしい動物好きの君島さんが運営する「元泉館」では、その後、ペットと一緒に泊まれる客室を2室設け、観光客や地元の人たちのペットを預かるペットホテル事業も始めました。そんな時、1匹の弱った猫が玄関先をうろうろしているのを見つけ、たまらず保護、元泉館はじまりの猫・七三くんです。七三くんとの出会いをきっかけに外猫たちへの関心が深まり、塩原の近隣で保護した猫7匹を引き取ることとなりました。現在は、ロビーの一角に猫と触れ合えるスペースを設けています。
子猫の小春ちゃんと銀次くん
猫たちは看板猫として活躍する一方、ここで働いているスタッフさんたちの癒やしにもなっています。経営者である君島さんのキャラクターゆえか、皆さんのびのびと働いていて、ほんわかした気分になります。今どきのオシャレなムードではありませんが、極上の温泉に入れて、かわいい猫たちと触れ合える、好きな人にはたまらない山の中にある楽園です。
そしてこちらのお宿、2食付だけでなく、夕食のみ、朝食のみ、素泊まりでの宿泊もできるし、繁忙期などをのぞき一人泊も大丈夫。日帰り入浴も8時〜20時(OUT)までOKで、土・日曜には温泉粥や釜飯などのランチもスタート。ペットも、小型犬だけでなく、大型犬や猫、鳥やウサギなどの小動物まで受け入れています。ペットが泊まれる宿は増えてきましたが、大型犬や猫の受け入れはまだまだ数が少ないのが現状。人にも動物にも懐深く対応してくれる秘湯宿です。
秘湯の宿 元泉館
電話:0287-32-3155 https://gensenkan.com/