京都には深い井戸が幾つもある by 小林禎弘

第56回 世界遺産の中で花見する(京都市)

以前、琵琶湖疏水について記事を書かせていただきましたが、その頃と比べ疏水は大きく変わりました。といっても形状など物理的には何も変わっていません。ご存じの方も多いかと思いますが、国宝に認定されました!2025827日に正式に国宝・重要文化財に指定されたのですが、疏水のすべてではありません。

国宝は南禅寺水路閣・蹴上インクライン・第一隧道・第二隧道・第三隧道の5か所、重要文化財は24か所で全部書ききれません。国宝の三つの隧道(トンネル)は大津から蹴上までの通称山科疏水にあり、以前の記事で写真も掲載いたしました。隧道の出入口の造形がノスタルジックで、そこに埋め込まれた扁額の揮ごうを歴史の教科書に出てくる明治の政治家が記しています。

琵琶湖疏水第三隧道

今回は琵琶湖疏水の国宝2か所の桜をご紹介します。まずインクラインです。それは何所や?簡単に言うと荷物と人を乗せた船のためのケーブルカーです。琵琶湖から流れてきた疏水は、蹴上の山上に隧道を抜けて出ますが、京都盆地との落差が大きいのでインクラインを使うというわけです。その落差を利用して日本初の発電をしたり、京都では唯一の南から北への河川である疏水分線を流したりしています。インクラインは言わずと知れた桜の名所です。

残された4本のレールの両側に並んだ90本のソメイヨシノの巨木が被さり花のアーチを作ります。ポートレイトを撮ると、背景が全部桜になるような写真ができます。

インクラインをまたぐ橋の上から見下ろす風景は撮影ポイントです。

三十石舟を乗せた台車が残されており、VRポイントが設けてあります。QRコードにスマホをかざすと、往時の風景と共にインクラインが動き出す動画が流れます。

左:スマホで当時の運行の様子の動画が見られる。
中央:下にある台座 右:上にある台座で、船着き場に着いた船を積み込む

多くの花見客に混じって着物姿の外国人が目立ちますが、今年はどうでしょうか?

インクラインの山側に三条通と南禅寺方面を結ぶ「ねじりまんぽ」と呼ばれるレンガ造りのトンネルがあります。特徴は内部が螺旋状にレンガが積まれて渦を巻いたようになっていることです。上を通るインクラインのために強度が必要だったのでしょうか。これも国宝です!

ねじりまんぽの三条通側の出入り口。内部のレンガはこのようにねじれている

南禅寺方面に抜けると南禅寺中門そばに出るのですが、途中に南陽院、金地院、真乗院などの塔頭が並んでいます。また一筋西に行くと、疏水の水を引き込んだ回遊式庭園がある對龍(たいりゅう)山荘です。建築は島田藤吉、庭園は七代目小川治兵衛が手掛け、国の重要文化財に指定されています。これまで非公開でしたが、近年ニトリHDが所有し、一般公開が開始されました。

次に南禅寺水路閣ですが、周りに桜はありません。ただし南禅寺境内に見事な桜を見ることができます。歌舞伎で石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」の名セリフで有名な三門あたりの桜は素晴らしいです。ちなみに三門が再建されたのは五右衛門が亡くなって30年以上経っているので五右衛門は門に登っていません。今では急な階段を登った上から境内の桜風景や市内の絶景を眺められます。三門内にはずらりと仏像が安置されています。

奥へ進むと法堂です。正面には枝ぶりの良いソメイヨシノ、南側にある八重桜が火灯窓にかかる様子が撮影ポイントです。

左:南禅寺三門前の桜、中央:三門をくぐり振り返る、右:法堂の火灯窓と八重桜

右手に南禅院の石段の前をズバッと通る水路閣が現れます。今では景観破壊の最たるものじゃないかと思われますが、当時でも疏水設計者の田辺朔朗は景観には大変配慮し、自ら設計デザインを行ったそうです。

水路閣全景。これだけ人がいないのは珍しい

とにかく国の文化審議会が高い評価を示したのですが、明治時代のしかも都市基盤施設が国宝になるとは、京都市民にとっては驚きと嬉しさが混じっています。

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